ワイルド・アット・ハート(1990)

 

原題も「Wild at Heart」(真の野生)

原作はバリー・ギフォードの「ワイルド・アット・ハート: セーラーとルーラの物語」

リンチはこの映画のテーマのひとつは「地獄で愛を見つける」ことで

結末は「幸せな」と述べたそうですが

最初の脚本は、セイラーがルーラを棄ててしまうという

原作通りの暗い結末だったそうです

それを読んだリンチの当時の恋人、イザベラ・ロッセリーニ

「こんな悲惨な映画には出演したくない」と激怒(笑)

再考した結果「オズの魔法使い(1939)の要素にたどりついたとか

 

長年連れ添った恋人の元を去ろうとする男の前に

「良い魔女」が現れ「愛に背いてはいけません」と告げると

男は妻になる女性にしか歌わないと誓っていた「ラブ・ミー・テンダー」 を歌います

真の純愛が奇跡を起こすという物語

無事、イザベラ・ロッセリーニは出演(笑)

カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞

原作者のギフォードは有名になり、リンチを絶賛

ロスト・ハイウェイ」ではリンチとともに脚本を手がけました

 

と、私のレビューは肯定的ですが

リンチなので、まともな奴はひとりも出てきません(笑)

癖強キャラと、エログロのオンパレードなのでご注意を

刑期を終えたセイラー(ニコラス・ケイジ)を

恋人のルーラ(ローラ・ダーン)が迎えに行きます

22ヶ月と18日前、セイラーとルーラの交際を許さない

ルーラの母マリエッタ(ダイアン・ラッド)がセイラー殺しに雇った黒人を

セイラーが撲殺してしまったのです

 

セイラーがルーラが持ってきたヘビ皮のジャケットを着ると

ふたりはホテルへ直行し愛し合います

マリエッタは、私立探偵で恋人のジョニー(ハリー・ディーン・スタントン)に

2人を別れさせるよう頼みます

マリエッタはセイラーに言い寄り、拒絶されたことを今でも根に持っていました

 

さらにサントス(J・E・フリーマン)という殺し屋も雇い

マリエッタに惚れているサントスはセイラーと一緒にジョニーも殺そうと企みます

元締めに頼み、元海軍兵でかなりやばい危険人物

ボニー・ペルー(ウィレム・デフォー)を雇います

マリエッタは娘のルーラに異常な執着心を持っていて

ルーラはそのことに苦しんでいましたが

ルーラも母親と同じようにセイラーに依存しています

 

さらにルーラの父親は、セイラーと出会う1年前に焼身自殺していて

それからルーラは「悪い魔女」の幻覚に悩まされていました

 

母娘を演じたローラ・ダーンダイアン・ラッド

実際にも本当の母娘

よく演じましたよね(笑)

セイラーとルーラはライブハウスで踊り狂い

セイラーはその場でエルビス・プレスリーの「ラブ・ミー」を演奏

1番のお気に入りの「ラブ・ミー・テンダー」は

妻になる女性だけに捧げると決めています(ルーラにも歌っていない)

 

マリエッタが送った刺客から逃げるため

仮釈放中にもかかわらずカリフォルニアへ向かうふたり

ニューオリンズまで来ると、ホテルでいつものように愛し合う

そこでルーラは「宇宙人が来る」という強迫観念を持ち

行方不明になった従弟のデル(クリスピン・グローヴァー)の話をします

同じころ、ジョニーがサントスに殺されることを心配した

マリエッタニューオリンズにやってきます

ジョニーとレストランで食事をしますが

ジョニーはマリエッタをホテルの部屋まで送ったあと

何者かに拉致され、女に頭を撃ち抜かれて殺されます

 

再びカリフォルニアへ向かうセイラーとルーラ

ルーラが父親の死を語ると、かってサントスの運転手だったセイラーは

火事のあった晩、サントスをルーラの家までったことを白状します

セイラーは家の中で何があったかは知らないと言いましたが

ショックを受けたルーラは、悪い魔女を見ます

 

まもなくして、事故現場に遭遇するふたり

頭から血を流した女性がフラフラと現れ

セイラーが病院に連れて行こうとすると、女性は混乱し

そのまま倒れて死んでしまいました

途中、セイラーの希望でビッグ・ツナという街に寄り

セイラーはルーラをモーテルに残し

ジョニーを殺した女の娘で、サントスの部下でもある

ペルディータイザベラ・ロッセリーニ) と会います

ペルディータは「ルーラーのママとサントスが、彼女のパパを殺した」と教え

サントスがセイラーを狙っていることは知らないと言います

 

セイラーがモーテルに戻ると、ルーラが嘔吐していました

彼女が「妊娠した」と打ち明けると、「問題ない」とセイラー

 

翌日セイラーが出ていくと

ボニーがトイレを借りたいとやって来て、出ていきます

恐怖に怯えるルーラ(あの歯茎だしな 笑)

さらにボビーはセイラーを飲みに誘い、銀行強盗を持ちかけます

いったんは断るセイラーでしたが、彼女が妊娠して金が必要だろうと言われ

引き受けてしまいます(妊娠を知っている時点で不信に思えよ 笑)

 

その夜セイラーの態度がおかしいことに気づいたルーラは

彼を問い詰めますが、はぐらかして寝てしまうセイラー

翌朝、セイラーが出ていくとルーラは泣いていました

ルーラはかって父親の友人にレイプされ、妊娠し

中絶した時のことを思い出したのです

 

そのことを知ったマリエッタにより

男は崖から車ごと転落死しました

 

なぜいつもルーラが馬鹿みたいにはしゃぎ、明るいのか

母親から逃げたいのか

それは辛い過去を忘れるためだったのです

だけど時々見せる不安な表情

過去は消えないし、母親は男も父親も殺し

さらにセイラーまで殺されるかも知れない

 

セイラーがボビーとの待ち合わせ場所に行くと

運転手はペルディータがでした

ふたりはサントスから事故に見せかけてセイラーを殺すよう

命令されていたのです

「誰も傷つけない」という約束で、銀行強盗に向かうセイラー

(ストッキングの覆面役立ってねえし 笑)

が、ボビーが従業員に発砲

ペルディータは警察から職務質問を受け

銃声を聞くと車を急発進させて逃げてしまいます

外へ出たボビーは警察に撃たれ、セイラーは逮捕されてしまいました

 

ルーラはマリエッタとサントスによって家に連れ戻され

再び刑務所収監されたセイラーに手紙を書きます

「赤ちゃんを産むことにします

 

それから5年10ヶ月と21日、セイラーが出所する日

母親の反対を押し切り、成長した息子を連れて迎えに行くルーラ

 

初めて見る息子

セイラーはルーラが運転する車に乗ったものの、ふたりの幸せを思い

「俺のような関わらない方がいい」と車を降りてしまいます

ルーラ「セイラー戻ってきて!」と泣き叫んでも

振り向きもせず立ち去って行きます

しばらく歩くと、不良たちに絡まれボコボコにされ

気を失ったセイラーの目の前に現れたのが、なんと「良い魔女」(シェリル・リー)

「良い魔女」は「ルーラはあなたを愛している」

「ワイルドな心を持っているなら戦いなさい 愛に背いてはいけません」と

セイラーに告げるのでした

 

目を覚ましたセイラーは不良少年たちに「ありがとう」と礼を言い(笑)

ルーラの車を追います

ルーラの車は渋滞に巻き込まれ停車していました

ご都合主義と言ってはいけない(笑)

「良い魔女」の魔法だと思いましょう

 

セイラーはルーラー車までり、彼女と抱き合うと

ボンネットの上で「ラブ・ミー・テンダー」を歌うのでした

♪Love me tender, love me sweet(優しく愛して、甘く愛して)

♪Never let me go(離さないで)

♪You my life completeあなたは私の人生を完璧にしてくれた

♪And I love you so(そしてあなたを愛してる)

 

セイラーの歌声に陶酔するルーラー

同時に「悪い魔女」も消えいきました

苦しいときは靴のかかとを「カチッ、カチッ、カチッ」と3回鳴らそう

「良い魔女」に助けてもらうために

ただし、「良い魔女」の出番はいつでも遅い(笑)

 

セイラーを待ち続けたルーラーの愛が勝ったのです

 

 

【解説】映画.COMより

鬼才デビッド・リンチ監督がニコラス・ケイジ主演で放つバイオレンスなラブストーリー。ある日、恋人ルーラの目の前で襲いかかってきた男を返り討ちにし、殺してしまったセイラー。その男は、娘に異常なほどの愛情を持つルーラの母マリエッタが送り込んだ刺客だった。2年間の刑期を終え出所したセイラーは、ルーラを連れてカリフォルニアへと旅に出る。マリエッタは再び彼らの元に2人の男を送るが……。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。

1990年製作/125分/アメリ
原題:Wild at Heart
劇場公開日:1991年1月