現金(げんなま)に体を張れ(1956)

「昔太陽の正体を見極めようとした男が 太陽を見つづけ目をつぶした」

 

原題は「The Killing」(殺し)

スタンリー・キューブリック長編映画および

ハリウッドデビュー作

原作はライオネル・ホワイトの「見事な結末」(Clean Break

邦題はジャン・ギャバンの「現金に手を出すな(1954)

ならって付けたのでしょうね(笑)

ラストも「地下室のメロディー」を彷彿とさせますが

あちらは1963年製作のなので、たぶんこちらが元ネタ

 

個性派俳優ばかりを集め、無駄なドラマは一切カット

要点だけをぎゅっと詰め込んだ88

興行は振るわなかったそうですが

これも「後に再評価」された作品のひとつ

出所したばかりのジョニー・クレイ(スターリング・ヘイドン)は

彼を待ち続けていてくれた、恋人フェイと結婚する資金をつくるため

ダービーの日に、競馬場の売上金を強盗する計画を立てます

その金額、約200万ドル

集められたのは

ジョニーが泊まっている宿の帳簿係マービン・アンガージェイ・C・フリッペン

汚職警官ランティー・ケナン (テッド・デ・コルシア)

競馬場に勤めるバーテンダー、マイク・オライリー(ジョー・ソーヤー)

窓口の出納係ジョージ・ピーティ(エリシャ・クック・ジュニア)

狙撃手のニッキ-・アーケイン(ティモシー・ケアリー)

レスラーのモーリス・オボウコフ(コーラ・クワリアニ)

しかし出納係のピーティが、妻のシェリーが自分から離れて行かないよう

近いうち大金が入ると計画を打ち明けてしまいます

 

そのことをシェリーが若い愛人ヴァル・キャノン教えると

ヴァルは旦那からだけでなく、奪った金すべていただこうと提案します

ジョニーの宿で盗み聞きをしていたシェリーが見つかり

計画をばらしたことを疑われたピーティは、仲間を抜けようとしますが

シェリーが許すはずもありません

結局シェリーの誘惑に負けてしまうピーティ

フィルム・ノワールの名わき役、エリシャ・クック・ジュニアと

フィルム・ノワールファム・ファタールといったらこの人の

マリー・ウィンザーが主役を完全に食ってるインパクト(笑)

そして、それぞれが決して根っからの悪人ではなく

それぞれの事情を抱えているんですね

警官のケナン はギャングに借りた金を返せず困っている

オライリーは病気の妻を良い病院で治療させてあげたい

そしてついにダービーの日

レスラーがバーテンダーにケチをつけ、喧嘩になると

(ただの喧嘩なので逮捕されてもすぐ出所できるという計算)

乱闘を阻止するため、競馬場の警備員たちが集まってきます

警備が手薄になると、ジョニーが出納係のピーティの案内で

金の保管してある部屋に裏口から侵入、金の入った袋を窓から投げ

市民の通報も無視しやって来たケナンが受け取ります

ケナンがモーテルに金を隠し、それをジョニーが受け取り集合場所に運ぶ

ダービーの本命馬を撃ち、会場をパニくらせようとした狙撃手は

戦争で足を負傷したと嘘をつき、駐車場に通してもらいます

しかし同じ帰還兵だと思った駐在人が何かと彼を気にかけたため

「失せろニグロ」と追い払い、本命馬の狙撃に成功

しかし駐在人に撃ち殺されてしまいます

ケナンらが金を受け取るため、集合場所に集まっていると

ヴァルと仲間が金を横取りするためにやってきて、相撃ちとなり

ただひとり生き残ったピーティは、ヴァルを待つシェリーのもとに向かい

シェリーを撃ち自らも倒れます

死ぬ間際までピーティに悪態をつき続けるシェリ

遅れて集合場所に到着したジョニーは

仲間との「何かあったとき」の約束通り、海外に脱出し金を隠すことにします

スーツケースを購入し札束を詰め込み鍵をかける

フェイとともに飛行機の搭乗手続きに向かうと

スーツケースが大きすぎて機内にもちこめないといわれます

しぶしぶ従うしかないジョニー

飛行機を待間、滑走路を見つめるジョニーとフェイ

そこにスーツケースを積んだカートが現れると

老夫人の抱いていた犬が滑走路に飛び出してしまいます

カートの運転手が急ハンドルを切ると荷物が滑走路に落下

ジョニーのスーツケースが開き、紙幣が吹き飛ばされていく

フェイと逃げようとするジョニー

しかし、なかなかタクシーをつかまえられず

その間、2人の警官が近づいてくるのでした

地下室のメロディー」では、金の入ったバックの

鍵を締め忘れるという痛恨のミス

 

こちらは200万ドルも盗んで

なんでそんなボロくて、ちゃっちいスーツケースを買う?

という失敗(笑)

ラスト、「何が違うんだ?」と呟くジョニー

それはね、バカほど犯罪は犯すけれど

バカほど犯罪は犯してはいけないという教訓

 

ましてや愛する人がいるのなら、真面目に働け

キャビアよりフォアグラより、案外牛丼のほうが美味しいものよ(笑)



 

【解説】映画.COMより

ライオネル・ホワイトの処女小説「見事な結末」を原作にした犯罪活劇。前科者のジョニーは競馬場から200万ドルの強盗を企てる。競馬場の会計担当やバーテンといった内通者の協力で綿密な計画を立て、金を奪うことに成功。しかし仲間の妻の画策によりアジトが襲撃される。50年代の人気ハリウッドスター、スターリング・ヘイドンが追いつめられていく主人公を熱演。

1956年製作/85分/アメリ
原題:The Killing