動く標的(1966)

 

 
「お古いのね。女は家に居ろってタイプね」  

「・・私の家は困る」
 
 
ポール・ニューマンの数ある出演作の中でもこれは好きな作品。
なんといっても素晴らしいオープニング、即座に気持を持っていかれます。
 
二日酔いの朝、ゴミ箱に捨てたコーヒー豆でコーヒーを淹れる・・
ガムを噛みながら部屋を出る。
ボロで錆の出ているポルシェ356スピードスター。
 
ちょっとくたびれた、口だけ達者な中年男(撮影当時41歳)の私立探偵。
だけどメチャクチャ雰囲気あります、カッコイイ。
 
ハーパー(ニューマン)は弁護士アルバートの紹介で
シンプソン夫人から行方不明になった夫を探してくれとの依頼をうけます。
富豪の足取りを追うハーパーを次々と襲う危険。
やがて身代金目的の誘拐事件へと発展していきます。
 
正直ハードボイルドとして特別面白いストリー展開なわけではないのですが
とにかくキャラが立っています。
しかも超豪華なキャストですね。
 
夫が誘拐されても動揺せずほくそ笑む夫人(ローレン・バコール)。
その義理の娘ミランダ(パメラ・ティフィン)。
ミランダが惚れているパイロットのアラン(ロバート・ワグナー)。
一方若いミランダに夢中なアルバート(アーサー・ヒル)。
 
それでも見所はいくつもあります。
今は落ちぶれてしまった元人気女優のフェイ(シェリー・ウィンターズ)に
大ファンのふりをして近づき、口説くハーパーが上手い。
フェイの家で旦那と鉢合わせになっても、最後まで態度を貫いたのは偉い。笑
 
離婚を迫られている妻のもとに押し掛ける場面も印象的。
翌朝かいがいしく朝食を作るスーザン(ジャネット・リー)。
急に態度を変えたハーパーに、彼女は目玉焼きをフォークで潰します。
やっぱり騙されたと、女性の悔しい心情がよく出ています。
 
途中で犯人が予想できてしまうのは、ちょっと残念ですが
それでも大のお気に入りの作品。
 
「強くなければ・・やさしくなければ・・・」のマーロウも素敵だけど
強くもなければ、やさしくもない・・
自分勝手で口先だけのダメ男なハーパーにも
また惹かれてしまうのです。
 

 
【解説】allcinemaより
ロス・マクドナルド原作の私立探偵ルー・アーチャー(映画ではルー・ハーパー)ものの同名小説を、P・ニューマン主演で映画化したハードボイルド映画の佳作。失踪した大富豪の行方を追う内に、欲に目の眩んだ関係者たちの愛憎劇に巻き込まれていくハーパーの活躍を描く。とにかくニューマンのしがない私立探偵ぶりが最高で、登場する豪華キャストと共に、本筋の弱さを補ってなお余るものがある。「ハーパー探偵シリーズ/新・動く標的」に続く。
 私立探偵のハーパーはある日、友人の弁護士アルバートの紹介で、失踪した大富豪サンプスンの捜索を請け負った。ハーパーは、サンプスンの周囲を調べていくうち、この事件には欲に目の眩んだ犯罪組織が暗躍していると推測。そんな時、サンプスン夫人のもとに大金を迫る脅迫状が届く。そして、ハーパーは差出人が指定した金の受け渡し場所へ向かうが、金を持って消えていった者の正体は分からずじまい。だが、ハーパーがこれまでのいきさつを検証したところ、犯罪組織の身元が判明。また関係者の情報から、サンプスンの居場所を掴むのだが…。