原題も「Suspiria」（ささやき、嘆き 、ため息）
冒頭の15分がとにかく最高
ドイツのバレエの名門校にニューヨークから留学しにきたスージー
空港について外に出るとスカーフが風で首を絞めるかのように巻きつく
雨の中なかなかタクシーが拾えない
学院に到着すると、女生徒パットが怯えながらやってきて
「青いアイリスを回して ドアに秘密が」と言い残して消える
（友人の家に逃げたパットは毛むくじゃらの腕にナイフで刺され殺される）
校門には鍵がかかり、インターホンで呼び出しても誰も出てこない
翌日出直しすと、校長代理のマダム・ブランク
厳格な主任教師ミス・タナーが
盲目のピアニストのダニエル
マダムの甥で9歳になるアルバート少年らが迎えてくれますが
突然体調がおかしくなり倒れてしまうスージー
長旅の疲労による貧血だと
食事のたびに赤ワイン（睡魔に襲われる）を飲むよう校医から勧められます
そこにイタリアのプログレッシブロック、ゴブリンの
亡霊のうめき声のような不穏な音楽をガンガンかぶせてくる（笑）
筋書きはめちゃくちゃで（笑）
殺戮が問答無用で迫ってくるだけ
理解しようと思っても無駄
天井からのウジムシも、気持ち悪いだけでストーリーにはあまり関係ない
光の三原色（赤、青、黄）が印象的なポップでビビットな映像は
ディズニー・アニメ「白雪姫」（1937） にインスパイアされているそうです
さらに（低感度でほとんど使われなくなった）コダックの
「スリーバック」というフィルムを中国から取り寄せ撮影し
現像の段階で色を抜いたり、強調するという
とんでもなく面倒な作業を繰り返し
アート・フィルムのごとき色彩とレトロな影像を作り上げることに成功
決して手抜きなB級ホラーではないのです（笑）
サラという女生徒と仲良くなったスージー
ウジムシの大量発生で、生徒たちはホールで寝起きするようになりますが
眠れないスージーとサラは、仕切りのためのカーテンの向こうから
不気味なうめき声をききます
さらに夜ごとミス・タナーの靴音が響いては消える
好奇心を掻き立てられるスージーとサラ
ダニエルはミス・タナーによって解雇されてしまいました
しかもそのダニエルも盲導犬に噛み殺されてしまいます
ダニエルが死んだのと同じ夜、サラは靴音を追って廊下に出ました
次の夜サラはスージーにパットから受け取ったという謎のメモを残すと
何者かに追われ屋根裏部屋から工具室に落下
針金にからまれナイフで喉を掻き切られてしまいます
このチープだけどエグくて凝った殺しかたの上手さでは
ダリオ・アルジェントの右にでる監督はいません
（左には市川崑がいる 笑）
血糊の嘘っぽさや、殺人犬がいかにも作り物には笑ってしまうけど
翌朝サラが荷物をまとめて出て行ったと聞かされたスージーは
サラの友人で精神科医のフランクに会いに行き
サラから受け取ったメモと、学院での不可解な出来事を相談すると
フランクは学院には魔女の歴史の噂があると
魔女の研究の権威であるミリウス教授を紹介します
教授によると、1901年「エレナ・マルコス」と名乗る
ギリシャからの亡命者によって、バレエと神秘学の学校が創設
「エレナ・マルコス」は「溜息の母」という魔女でないかと疑われていたが
1905年「エレナ・マルコス」が火事で亡くなると
教え子たちがバレエ学校として引き継いだということ
また魔女たちは長老となる者を中心に集まり、長老から力を発揮され
長老が死んだ場合、魔女たちも一緒に死ぬのだと教えられます
スージーが学院に戻ると、もぬけの殻で
皆はボリショイ・バレエ団の公演を見に出かけていました
ホールから夜中に聞こえた靴音の数だけ廊下を進むとそこは校長室でした
校長室にはパットから聞いた、アイリスの飾りのある青いドアがありました
ドアを開け奥の部屋を覗くと、なんと教師たちがスージーを呪う儀式をしている
スージーは長老「エレナ・マルコス」に捧げる生贄だったのです
スージーが逃げ込んだ部屋のカーテン越しに
「エレナ・マルコス」の声がしました
でもカーテンを開けると誰もいない
「エレナ・マルコス」が笑うと工具室のサラの死体が蘇り
スージーを殺すため襲いかかってきました
そのとき稲妻が光り「エレナ・マルコス」の身体を浮かび上がると
スージーがガラス制の孔雀の羽で「エレナ・マルコス」の喉をひと突き
「エレナ・マルコス」が死ぬとサラの姿は消え、学院は崩壊し始めます
外に逃げ出したスージーは、雨の中炎に包まれた学院を見つめ
魔女たちの叫びを聞くのでした
（笑っているのはスージーがシン長老になったということ？）
ダリオ・アルジェントの意に叶っているかどうかはわかりませんが
これぞ4Kレストア版で見る価値のある映画
出ている女の子たちは少女漫画のように可愛いですし
99分という短尺なので、ホラーが得意でない方でも見やすいと思います
【解説】映画.COMより
イタリアの鬼才ダリオ・アルジェントが1977年に発表したゴシックホラーの金字塔。後に製作された「インフェルノ」（80）、「サスペリア・テルザ 最後の魔女」（2007）とあわせた「魔女3部作」の1作目とされる。バレリーナを目指すスージーはアメリカからドイツのバレエ学校に留学するが、到着早々、奇妙な出来事が次々と起こる。さらに、天井から大量のうじ虫が落ちてきたり、盲目のピアニストが盲導犬に噛み殺されたりと不可解な事件が続発。やがて、この学校に隠された恐ろしい秘密が明らかになり……。主演は「ファントム・オブ・パラダイス」のジェシカ・ハーパー。17年に製作40周年を記念し、本国イタリアで35ミリオリジナルネガからの4Kデジタルレストア版を制作。日本では19年6月に4Kレストア版を上映。
1977年製作／99分／R15+／イタリア
原題：Suspiria
配給：是空、ハピネット
日本初公開：1977年6月25日
