ユリシーズ(1954)

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原題は「ULISSE」( 英題Ulysses

トロイの木馬」の後日譜

原作はホメロス叙事詩オデュッセイア

ギリシャ語がラテン語を経由し英語で「ユリシーズ」と呼ばれるようになり

イギリスの作家チャールズ・ラムの子ども向けの再話

ユリシーズの冒険」(1808)によって

ユリシーズはイギリスの男の子たちの英雄になるのです

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トロイの戦いで勝利を確信したイタカの国王

ユリシーズカーク・ダグラス)は調子に乗ってしまい

ポセイドンの神殿を破壊してしまいます

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海神の怒りによって暴風雨に会い、船の沈没を避けるため

トロイで奪ったすべての財宝も食料も海に捨てます

しかもやっとたどり着いた島は人間を喰う一つ目巨人島でした

 

確かに一つ目巨人(ポセイドンの息子)との戦いは

子ども向けの紙芝居みたいでしたが(笑)

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冷静に考えるとトロイでの虐殺も酷い話だし

人魚の歌声(聞いたら死ぬ)に自ら惑わされたり

魔女と浮気して優秀な部下を全員死なせる

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フェアーチ人の島で王女ナウシカア(ロッサナ・ポデスタ)と結婚式当日

宮崎駿の「風の谷のナウシカ」のモデル)

私には妻がいたのを思い出したとバイバイ

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乞食に化け、后ペネロペ(シルヴァーナ・マンガーノ)に会いに行き

10年待たせておいて、妻に求婚した男は全員皆殺し

指揮官としても、男としても、これってどうよ?(笑)

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ユリシーズその場所が悪霊に祟られぬよう火を放つよう命令

一応血で汚れた手はさっと洗い(笑)

アテナの神の画に「昔のあの人をお返しください」と祈るペネロペ

「これからは共に穏やかな日々を送ろう」と微笑む

 

「騙せ」「殺せ」「壊せ」「盗め」「食料を奪え」「女をモノにしろ」

命だけでなく尊厳も、信仰も、思想や知識、全て破壊し焼き払ってしまう

ユリシーズ」(オデュッセイア )は戦争や侵略や革命の

全てが詰まってる最初の文学、というよりテキスト

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しかも何事もなかったように、いきなりハッピーエンド(笑)

自分の国の利益と俺様の家族だけが大事

虐殺と略奪が正しいと、それが「愛のため」だと信じている

 

冒険ファンタジーとしては

カーク・ダグラスが強そうに見えず顔も暑苦しい(笑)

ストーリーの焦点も定まっていないB級ですが


こういう英雄に持ち上げられた人間の持つ内面の矛盾を

ドゥニ・ヴィルヌーヴの新解釈で現代版にリメイクしたら

面白いような気がします



 

【解説】KINENOTEより

ホーマーの叙事詩『オディッセイ』の色彩映画化である。脚色にはフランコ・ブルザーティ、マリオ・カメリーニ、エンニオ・デ・コンチーニ、ヒュー・グレイ、ベン・ヘクト、イーヴオ・ペリッリ、アーウィン・ショーの七人が当り、ヴェテラン、マリオ・カメリーニが監督に当った。製作はカルロ・ポンティディノ・デ・ラウレンティス、一九五四年度作品である。撮影は「オズの魔法使」のハロルド・ロッスン、音楽は「陽気なドン・カミロ」のアレッサンドロ・チコニーニ。「アンナ」のシルヴァーナ・マンガーノと「死の砂塵」のカーク・ダグラスが主演し、「指紋なき男」のアンソニー・クイン、新進女優ロッサナ・ポデスタ(貴女は若すぎる)、ジャック・デュメニル、ダニエル・イヴェルネル、シルヴィ、フランコインテルレンギ、エレナ・ザレスキ、リュドミラ・ドゥダロヴァなどが共演する。