原題は「ULISSE」( 英題Ulysses )
「トロイの木馬」の後日譜
ギリシャ語がラテン語を経由し英語で「ユリシーズ」と呼ばれるようになり
イギリスの作家チャールズ・ラムの子ども向けの再話
「ユリシーズの冒険」(1808)によって
ユリシーズはイギリスの男の子たちの英雄になるのです
トロイの戦いで勝利を確信したイタカの国王
ポセイドンの神殿を破壊してしまいます
海神の怒りによって暴風雨に会い、船の沈没を避けるため
トロイで奪ったすべての財宝も食料も海に捨てます
しかもやっとたどり着いた島は人間を喰う一つ目巨人島でした
確かに一つ目巨人(ポセイドンの息子)との戦いは
子ども向けの紙芝居みたいでしたが(笑)
冷静に考えるとトロイでの虐殺も酷い話だし
人魚の歌声(聞いたら死ぬ)に自ら惑わされたり
魔女と浮気して優秀な部下を全員死なせる
フェアーチ人の島で王女ナウシカア(ロッサナ・ポデスタ)と結婚式当日
私には妻がいたのを思い出したとバイバイ
乞食に化け、后ペネロペ(シルヴァーナ・マンガーノ)に会いに行き
10年待たせておいて、妻に求婚した男は全員皆殺し
指揮官としても、男としても、これってどうよ?(笑)
ユリシーズはその場所が悪霊に祟られぬよう、火を放つよう命令し
一応血で汚れた手はさっと洗い(笑)
アテナの神の画に「昔のあの人をお返しください」と祈るペネロペに
「これからは共に穏やかな日々を送ろう」と微笑む
「騙せ」「殺せ」「壊せ」「盗め」「食料を奪え」「女をモノにしろ」
命だけでなく尊厳も、信仰も、思想や知識、全て破壊し焼き払ってしまう
全てが詰まってる最初の文学、というよりテキスト
しかも何事もなかったように、いきなりハッピーエンド(笑)
自分の国の利益と俺様の家族だけが大事
虐殺と略奪が正しいと、それが「愛のため」だと信じている
冒険ファンタジーとしては
カーク・ダグラスが強そうに見えず顔も暑苦しい(笑)
ストーリーの焦点も定まっていないB級ですが
こういう英雄に持ち上げられた人間の持つ内面の矛盾を
ドゥニ・ヴィルヌーヴの新解釈で現代版にリメイクしたら
面白いような気がします
【解説】KINENOTEより
ホーマーの叙事詩『オディッセイ』の色彩映画化である。脚色にはフランコ・ブルザーティ、マリオ・カメリーニ、エンニオ・デ・コンチーニ、ヒュー・グレイ、ベン・ヘクト、イーヴオ・ペリッリ、アーウィン・ショーの七人が当り、ヴェテラン、マリオ・カメリーニが監督に当った。製作はカルロ・ポンティとディノ・デ・ラウレンティス、一九五四年度作品である。撮影は「オズの魔法使」のハロルド・ロッスン、音楽は「陽気なドン・カミロ」のアレッサンドロ・チコニーニ。「アンナ」のシルヴァーナ・マンガーノと「死の砂塵」のカーク・ダグラスが主演し、「指紋なき男」のアンソニー・クイン、新進女優ロッサナ・ポデスタ(貴女は若すぎる)、ジャック・デュメニル、ダニエル・イヴェルネル、シルヴィ、フランコ・インテルレンギ、エレナ・ザレスキ、リュドミラ・ドゥダロヴァなどが共演する。