カモン カモン(2021)

原題は「C'mon C'mon 」(がんばれ、がんばれ)

 

監督のマイク・ミルズは、自身の息子ホッパーとの関係をもとに

この作品を撮ったそうです

伯父と甥という関係にしたのは、たとえ血がつながっていなくても

誰だって父親のようになれることを表現したかったということ

結婚も子育ても経験のない人間が

ひょんなことから子どもを預かることになり

絆を築いていくという映画は

「三人の名付親」「勇気ある追跡 」「センチメンタル・アドベンチャー

「ぺーパー・ムーン」「都会のアリス」「スリーメン&ベビー」

赤ちゃんはトップレディがお好き」など

パッと思いつくだけでも多数ありますが

最近は大人も子どもも複雑

偏屈な男が偏屈な子どもを預かることになり

問題の解決策はネットの情報を元に探るんですね

母親でさえ、子どものことは愛しているけれど

なんで自分だけが苦労しなきゃいけないのと

我が子の人生の全責任を負わなきゃいけないという理不尽

私もちょっと身につまされるものがありました(笑)

ラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)は

ラジオ局の仕事で「自分の世界と未来について」テーマで

どもたちへインタビューをするため各地を回っていました

 

子どもたちのセルフがどこまで生なのか

脚本によるものなのかはわかりませんが、素晴らしい

政治家よりよっぽど社会を見る目がしっかりしています(笑)

デトロイトで仕事中のジョニーに

ロサンゼルスに住む妹のヴィヴ(ギャビー・ホフマン) から突然電話が来ます

双極性障害で音楽家ポールがオークランドへの単身赴任で

精神的にまいっているので様子を見に行きたいのだけど

9歳になる息子のジェシー(ウディ・ノーマン) を

預かってくれる人が見つからず困っているというものでした

認知症で亡くなった母親の介護問題で対立し

ヴィヴとしばらく疎遠になっていたジョニーは

ジェシーを預かることを承諾します

しかしこのジェシー君、手強い(笑)

「どうして結婚しないの?」「普通って何?」

難しい質問をしてきてジェシーを困惑させます

でもジェシーの「音を録音する」という仕事は気に入ったようで

出かけるときにはジェシーのマイクとヘッドフォンを

いつも身につけるようになります

ラジオ局からニューヨークでの仕事の依頼が入り
ジョニーはヴィヴに電話をかけ

ジェシーをニューヨークに連れて行ってもいいかと尋ねます

ヴィヴは仕事の間ジェシーをどうするのかと反対しますが

ジェシーはニューヨークに行きたいと言います

ジョニーの仕事仲間は親切で、ジョニーの仕事中

ジェシーの面倒をよく見てくれます

ジェシーは基本いい子なのだけど(孤児ごっこが趣味)

スーパーで突然いなくなってジョニーを困らせたりもする

(子どもはかくれんぼのつもりの遊びでも、大人にとっては心臓が止まる思い)

その理由のひとつが、父親の病気のせいで母親からかまってもらえない

(母親は誰より我が子を愛しているにもかかわらず)

愛してもらえていないと感じているからなんだと思います

 

そんなとき、なにより効果的なのが「読み聞かせ」であること

たとえアナログからデジタルの時代になっても

子どもは絵本や紙芝居が大好き

ジョニーも不安で寝れないジェシーに、絵本を読み聞かせをしてあげます

それが「アンパンマン」みたいに楽しい話ではなく(笑)

 

アンジェラ・ホロウェイ 著「双極熊の家族」

(The Bipolar Bear Family: When a Parent Has Bipolar Disorder)

双極性障害の親を持つ子どもたちが抱えるさまざまな問題(質問)に

答えてくれるという児童向けノウハウ本

 

クレア・A・ニヴォラ著「星の子供」(star child

ジョニーの仕事仲間のファーンが、ジェシーに読んであげるがこの本

宇宙の彼方から地球をながめている星の子どもが
なんて美しい星なんだ、あの星に行きたい!と星の長老に問いかけると
長老はこの星はいつも静かで平和な場所だが、地球は

「きみは走る、手を使う、言葉を覚え、色彩、感覚、音が押し寄せるだろう」
「植物や動物などたくさんの生きものに出会うだろう

「楽しみや恐れ、喜びや失望、悲しみや驚きなど、学ぶべきことがさんある」

「やがて成長し、旅をし、仕事をし、自分の子どもを持つかもしれない」

と答えるのでした

 

ジャクリーン・ローズ著 「母親たち」
(Jacqueline Rose “Mothers: An Essay on Love and Cruelty)

これはジョニーが妹ヴィヴの部屋で見つけた本

世の中のあらゆる問題の解決は 「当然に」母親の仕事だというもの

なぜ全ての物事を明るく無邪気で安全なものにすることが

母親だけに課されなければならないのだろうか

 

カーステン・ジョンソンというドキュメンタリー映画監督の

「カメラパーソン」という自伝的映画より

「撮影者が可能にすることの不完全なリスト」

Kristen Johnson “An Incomplete List of What The Cameraperson Enables

カメラマンと撮影される側、それぞれが有効と考えるリスト

そこにはやはりそれぞれの感情的なものがあり

完璧のようで、決して完璧ではないんですね

 

ジョニーが泣いていることに気づくジェシー

「泣いてるの?」
そのとおり 忘れてしまう みんな忘れてしまうんだ」
「ぼくは忘れないよ」
「きみはほとんど忘れてしまうよ この旅の思い出のほとんどを」

ジョニーの次の仕事がニューオーリンズに決まりますが

ヴィヴ夫の病状が悪いにもかかわらず、夫は入院を拒否

もうしばらくジェシーを預かってくれないかと頼みます

それを知ったジェシーはひとりバスに乗ってロサンゼルスに帰ろうとする

ジョニーはなんとかジェシーを捕まえニューオーリンズへ向かいますが

今度はお腹が痛いとダイナーのトイレを借りに行くジェシー

それも仮病だとわかり、ジョニーも我慢の限界キレてしまうのですが

ジェシーはただママが恋しかっただけ

ニューオーリンズで子どもたちにインタビューし終えたジョニーは

その夜ジェシーと仲直りします

そしてヴィヴにも母親の介護のことや、ヴィヴと夫のポールの関係について

何も理解していなかったと電話で謝罪するのでした

ジョニージェシーを連れてお祭りに出かけることにしますが

過労で倒れてしまいます

(母親が仕事と育児を両立させるが、どれだけ大変かわかったか! 笑)

ヴィヴから夫の状態が安定したので家に帰れるという知らせが入ると

今度はジョニーとの別れが辛くて逃げ出してしまジェシー

ジョニーはジェシーに大声を出すようアドバイスします

ふたりでとことん叫んで、最後には大笑い

ニューオーリンズまでジェシーを迎えに来てくれたヴィヴ

ジェシー見送ったジョニーが、インタビューを確認していると

「ぼくらは忘れないよ」というジェシーのメッセージが録音されていたのでした

 

【解説】映画.COMより

20センチュリー・ウーマン」「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が、ホアキン・フェニックスを主演に、突然始まった共同生活に戸惑いながらも歩み寄っていく主人公と甥っ子の日々を、美しいモノクロームの映像とともに描いたヒューマンドラマ。ニューヨークでひとり暮らしをしていたラジオジャーナリストのジョニーは、妹から頼まれて9歳の甥ジェシーの面倒を数日間みることになり、ロサンゼルスの妹の家で甥っ子との共同生活が始まる。好奇心旺盛なジェシーは、疑問に思うことを次々とストレートに投げかけてきてジョニーを困らせるが、その一方でジョニーの仕事や録音機材にも興味を示してくる。それをきっかけに次第に距離を縮めていく2人。仕事のためニューヨークに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが……。「ジョーカー」での怪演でアカデミー主演男優賞を受賞したフェニックスが、一転して子どもに振り回される役どころを軽やかに演じた。ジェシー役は新星ウッディ・ノーマン。

2021年製作/108分/G/アメリ
原題または英題:C'mon C'mon
配給:ハピネットファントム・スタジオ