
昭和初期、高知土佐にあった西日本の料亭陽暉楼で
女衒の勝造を父親をもつNo.1芸妓桃若と
その女衒、の愛人で桃若に対抗心を燃やし
遊郭のNo.1女郎になった珠子を中心とした人間関係と
大阪の稲宗組が陽暉楼を手中に収めるため勝造の命を狙うというもの

濡れ場を撮らせてなんぼの五社英雄監督なので(笑)
主演交渉した女優に次々断られ、最終的に決まったのが池上季実子だそうです
しかし五社は池上以外の出演女優にも
「結局は全員、裸になってもらいます」と女優たちを怖がらせたそうです
勝造が幼い少女を値付けするときのシーンでは
まさかの幼い女の子のヌードまであったのはびっくり
さらにオリジナル版では少女の乳首と
着物をはだけ割れ目をチェックするカットまであったとか
さすがにそこはカットされていました

芸奴の呂鶴(おつる=池上季実子2役)は追っ手の手にかかり殺されてしまい
勝造はふたりの間に生まれた房子が12歳になると
陽暉楼の女将お袖(倍賞美津子)に預けます
お袖もかって芸奴で呂鶴と張り合い、勝造とも恋仲でしたが
房子を「100年に1人あるかないかの芸者」だと
昭和8年、桃若(池上季実子)が20歳になった時には高知一の芸奴に仕上げます

陽暉楼は表向きは料亭ですが、事実上は遊郭と同じ
芸奴たちがいかに早く借金を返し、将来の安定を図るかは
有力者の「旦那」(準夫婦関係を結んだ客)を掴み
いかに金銭的支援を受けるかが大事なんですね
だけど桃若はプライドが高く、たとえ金持ちでも醜男に媚びを売れない
そしてそれが彼女自身の悩みでもありました

だけど本当は桃若の乳母で勝造の後妻お峯(園佳也子)に生活費を渡したり
盲者の弟を可愛がり弟が欲しがっていたハーモニカやサングラスを
プレゼントするような情の深いところもあります
金払いのいい造船会社の社長の橋本(中村錦司)から使命を受け
お袖から「旦那」になってもらえるよう命じられた桃若ですが
橋本からお袖に「冷たい女」だとクレームが来てしまいます

ねえさんの胡遊(二宮さよ子)に「好きな人はいる?」と相談すると
胡遊には「旦那」が3人もいると言います
ひとりは優しい金持ちでうんとおじいさん
ひとりは決して言われん、内緒(たぶん大物ということ)
いちばん燃えるのは、まっこと好きな人
これが世渡り上手というものね
恋もしながら引退後のことまで、たぶんちゃんと考えてる

胡遊のアドバイスもあってか桃若は
- 年配ながら不器用な桃若を不憫に思い、いつも気を使ってくれる
- 桃若も「ほー様」と慕う銀行協会の会長
- 堀川(曽我廼家明蝶)に身体を預け旦那になってもらうことにします
- そんな時、高学歴のエリートで南海銀行の御曹司
- 佐賀野井守宏(田村連)が宴に現れ
- 桃若とはお互い一目見たときから好意を抱きます
-

- そしてもうひとりのヒロイン
- 勝造が大阪に囲っている娘同様に若い愛人、珠子(浅野温子)
- 珠子の過去は描かれませんが、勝造のことを「おとうちゃん」と慕っています
- 勝造も珠子も原作にはない脚本の高田宏治が作り上げたもの
- その背景(珠子がファザコンになる)には理由があったと思うのですが
- 大胆な見せ場を優先して、細かい心理を描くことを後手にしてしまうのが
- 五社の欠点かなと思います
-
とはいえおんちゃん(当時21歳)のなんてキュートなこと
- 池上季実子も、二宮さよ子も、倍賞美津子もめっちゃ美人ですが
- おんちゃんの美貌はオールタイム
- 令和になっても全く古くささを感じません
- 着物に帽子とか、大正モダン風なスタイルも似合っていて
- 竹久夢二の世界から現代にタイムスリップして出てきたよう
- カメラは森田富士郎、大映京都撮影所撮影部に戦後第一号入所
- 宮川一夫や杉山公平 の撮影助手を多数務めたということを知り納得
-
大胆不敵に健康的な乳房と脚を露わにすると
- 自分は勝造が愛した呂鶴や娘の桃若の身代わりだと
- 陽暉楼に入って芸妓になり呂鶴と桃若を見返したいと言い出します
- だけどお袖から芸奴は借金のあるような娘じゃないと勤まらない
まして気まぐれな女などと断られてしまいます
珠子が追い出され帰ろうとしたその時
大勢の芸妓を率いた桃若が、珠子の前を横切っていく
(エロ以外の 笑)見せ場のひとつですね

勝ち誇った顔の芸妓たちに「なんやこれが陽暉楼の芸妓かいな、しょーもな」
どうにか芸妓たちを見返してやろうと対抗心むき出しの珠子は
勝造に遊廓の玉水明日楼に「高く」身を売ってくれと頼みます
明日楼のおかあさんは珠子のことを(高額でも)引き受けますが
勝造は念のため舎弟の秀次(風間杜夫)にも珠子の世話を頼むのでした
案の定初日に逃げ出してしまう珠子
雨の中珠子を見つけた秀次は、ここが分かれ道、今なら逃げれると教えます
その言葉を聞いたことで珠子は意を決する
自分には負けられない意地があることを再確認するのです

舞台は四国一のダンスホール
商工会々頭の前田(丹波哲郎)や佐賀野井らとやってきた陽暉楼の芸奴たちですが
高級な場所に遊廓の女郎たちが(珠子の上客のおかげ)のさばっている
しかも茶良助(熊谷真実)が佐賀野井との慣れないダンスに疲れ果てたところに
珠子が現れて見事なチャールストンを披露
-
今の流行りは「努力すればどうにかなる」
「頑張れば夢は叶う」というような根性論ではなく「ゆるストイック」
努力する姿を見せるより、結果を出すということが大切という考え方
その代表が大谷翔平選手や、井上尚弥選手、藤井総太将士なのだそうですが
どんな時も明るくサバサバしているように見えるおんちゃんも
「ゆるストイック」タイプなのかもしれません(笑)

そこからクライマックス
桃若は珠子と踊っていた佐賀野井を奪い返しに行きます
佐賀野井は桃若にバーで待っていると言うと去り
後輩(仙道敦子)とトイレに行った桃若に、珠子が因縁をつけにやってくる
この15分にも及ぶ長回しの喧嘩シーンに脚本はなく
全て池上とおんちゃんふたりのアドリブによるものということ

かつらをもぎ取られずぶ濡れになった着物で佐賀野井に会いに行く桃若
「うち、決闘してきたんよ」
「失望したでしょ?」
そのときバーテンダーはどこかに身を隠し
佐賀野井は桃若をカウンターの上で強く抱いたのでした
桃若は芸奴たちの婦人科検診で医師から妊娠していることを告げられます
しかし佐賀野井はあっさり桃若を捨て海外に転勤してしまいます

大阪の稲宗組の親分稲村(小池朝雄)は
関西一の料亭となった陽暉楼を買い取ることを計画
かって教師の夫(木村四郎)と、勝造からお金を騙し取った丸子(佳那晃子)は
夫が死ぬと稲村の愛人になり、
稲村から陽暉楼の主人、山岡(北村和夫)を誘惑しスパイするよう命じます
また稲村はお袖に影響力をもつ勝造を消すため刺客を送り込みます

勝造は駅で撃たれますが、ポケットの金時計のおかげで一命をとりとめ
病院に見舞いに来たお袖から桃若が妊娠したこと
相手はパトロンの堀川でなく別の男だと知らされます
さらに勝造がいなくなったことで陽暉楼が稲宗組に狙われ
夫の山岡が博打で借金を作りピンチだと相談します
お袖は道後温泉に遊ぶに行った山岡と丸子のもとに行き
ふたりが入浴していた温泉に飛び込むと力ずくで丸子を追い払います
(佳那晃子が全裸でキャットファイト 汗)

稲宗組の手は明日楼にいる珠子にまでのび、勝造は拉致された珠子を助けに行くと
山岡が作った借金を返すと、稲宗と三好(成田三樹夫)に
陽暉楼から手を引くよう約束させるのでした
勝造から大阪に戻り秀次と料理屋でもするようにと金を渡された珠子は
旅立つ日、雨の中川を見つめている桃若に別れの挨拶をすのでした

お袖は桃若の妊娠を堀川の子ということにして認知してもらうつもりでした
しかし桃若は(自分の子でないことは承知で)喜ぶ堀川に事実を打ち明け
「何故、それを言う!」と怒らせ縁切りを言い渡されます

秀次と結婚した珠子は結局高知に戻り小料理屋をはじめます
桃若はひとりで出産し、弘子と名付けた赤ん坊のため懸命に働きますが
桃若が治るまで弘子ちゃんの面倒を見ると申し出る珠子でしたが
弘子はすでに(芸妓の習いとして)お袖の仲介で里子に出されていました
桃若の容態が悪化し弘子を返してくれとお袖に頼みに行く勝蔵
お袖は桃若の勝手な振舞をののしるものの
臨終の桃若のもとに弘子を抱いて駆けつける勝造

桃若の死を珠子の小料理屋に知らせにやって来た勝造
そこに稲宗の手下が襲ってきて、秀次が殺されてしまいます
そこから大阪駅の三等待合室
勝造は切符を2枚珠子に渡すと、ここで待つよう言い残し
秀次の仇を打ちに向かうのでした
勝造は床屋にいた稲宗と三好らを射殺しますが
追手に刺され倒れてしまいます

勝蔵と新たな地に出発するため駅で待つ珠子
やがて人の姿が消えても、深夜になっても
ひとり待ち続けるのでした
【解説】映画.COMより
西日本一を誇る土佐の高知随一の遊興、社交の場、陽暉楼を舞台に、そこでくり拡げられる様々な人間模様を描く。宮尾登美子の同名小説の映画化で、脚本は「鬼龍院花子の生涯」の高田宏治、監督も同作の五社英雄、撮影は「伊賀忍法帖」の森田富士郎がそれぞれ担当。
1983年製作/144分/日本
原題または英題:The Geisha
配給:東映