ロビンソン漂流記(1954)

「文明社会が怖くないか」

「あなたがこわくないならフライデーもこわくない」

原題は「Adventures of Robinson Crusoe」(ロビンソン・クルーソーの冒険)

1659年、嵐で船が難破し漂着した無人島で

28年と2ヶ月と19日生き続けたクルーソーの物語

この児童文学の古典をなんとルイス・ブニュエル

89分にギュッとまとめ正攻法で取り組んでいます(笑)

ちなみにプロデューサーは主役にオーソン・ウェルズを望んだそうですが

声が大きく太り過ぎという理由で、ブニュエルが拒否したそうです

主演に選ばれたのはアイルランド出身のダニエル・オハーリー

まずは食料と水の調達

運良く鳥の巣を発見し卵を拝借して割るとまさかのひな鳥出現

でも南国の島なので水や果物はあり動物もいるんですね

小麦を栽培したり、山羊を捕えて飼ったり農業ゲームのスキルが高い

次に孤独との戦い

案山子に女性のドレスを着せたり

見つけた足跡がまさかの一個だけだったり(一個という美?笑)

人間の声を聴きたいときは自分のこだま(やまびこ)

孤高のファッションセンスも超シュルレア(笑)

でもクルーソーが孤独に耐えられたのは

共に生き残った愛犬レックスとの友情と

オウムと、猫ちゃんのおかげ

(猫ちゃんは漂着前に妊娠していた可能性があると思う)

しかし年月が経ち、年老いたレックスが弱っていく

レックスに栄養をつけさせようと鳥の卵を探しに行くクルーソー

雨が降り出してくる

卵を見つけ小屋に帰るクルーソー

いつものように主人を迎えようと表に出たレックスが

雨の中倒れ息絶えてしまう 

本作の公開年、淀川長治さんがベストには選出しなかったけれど

いちばん泣いたのがこの「ロビンソン漂流記」だそうです

レックスという心の支えを失ってしまったクルーソー

ひとりぽっちの寂しさと戦っていました

何年後かのある日、向かいの島の住民とみられる食人種が

海浜で儀式をやっているのを目にします

クルーソーは生贄から逃れたひとりの青年を助けたことで

彼を金曜日に出会ったことからフライデーと名付け

召使として雇い、調教するのでした

ここらへんの描写もブニュエルは巧いですね

大航海と植民地政策時代の、黒人差別的描写にもかかわらず

フライデーがとにかく適応性に優れ賢い(笑)

クルーソーの語る聖書のウンチクや、神様や悪魔の存在についても

いちいち突っ込んでくる

(フライデーは自称無神論ブニュエルの化身なのかも知れない)

漫才かよ!コメディかよ!ながら

徐々にふたりが信頼関係を築いていくエピソードには救われます

そしてついに28年目、無人島に一隻の船がやってきました

船内ではクーデターが起こり、実権を握った反逆者たちが船を乗っ取ろうと

船長を島に置き去りにしようとしていました

クルーソーとフライデーは船長を助け

反逆者たちを(サバイバルのため)島に残し

イギリスへと舵を向けたのでした

低予算の映画ならではの撮影の大変さ

常軌を逸したような異様さ

大英帝国の政治的押しつけがましさ

今見てもあるある、大人も楽しめる冒険映画

ただ私が鑑賞したのがU-NEXTで

イマドキの4Kテレビでも当時のまま?(笑)かなり画像は荒いので

もしBlu-rayやリストア版があるとしたら

そちらがお薦めだと思います

 

 

【解説】映画.COMより

ダニエル・デフォーの小説The Life and Strange Adventures of Robinson Crusoe of Yorkをルイス・ブニュエルが監督した冒険もの。フィリップ・ロールとルイス・ブニュエルが共同で脚色し、アレックス・フィリップスが撮影を担当している。製作はオスカル・ダンシヘルスとヘンリー・F・エーリッヒ。音楽はアンソニー・コリンズ。出演者はダン・オハーリー、ジェームズ・フェルナンデス。パテカラー、デラックスカラーシネマスコープ

1952年製作/メキシコ
原題:Adventures of Robinson Crusoe
配給:ユナイト