欲望のあいまいな対象(1977)

原題はCet obscur objet du désir」(このあいまいな欲望の対象)

 

7 年前に妻を亡くした富豪の老人マチューは

新入りの若く美しいメイド、コンチータを気に入り

その夜、部屋に呼び言い寄りますが

翌朝彼女は、不意に姿を消してしまいます

その後なぜか、彼女と何度別れてもあちこちで再会し

マチューは決して身体を許さない彼女の虜になっていく・・

プロットそのものは単純ですが(笑)

ブニュエルは映画作りの美学において

リアリズムを断固として拒否し

ブルジョアキリスト教教育、格差社会、移民

左翼テロ、右翼の攻撃という政治的主題を

恋する男とそれを拒む女として描き

さらに女の「二枚舌」を「ふたりの女」に演じさせる演出

ブニュエルがわかりやすくしようとすれば、するほど

ややこしくなっていく(笑)

冒頭、部屋に散らばってている血の付いたクッション、靴、下着を

執事に「棄ててしまえ」と命令するマチュー

列車に乗り込むと「こんな別れ方ひどいわ」と駆け付けた女に

頭からバケツで水をかける

一緒に乗り合わせた乗客たちは驚き

小人の精神科医が「よかったら話を聞かせてくれないか」と尋ねると

マチューは彼女との出会いから語っていきます

豪邸で執事と暮らす大ブルジョワマチュー

メイドとしてやってきた、18歳のコンチータにひと目で恋しますが

手を出そうとして逃げられ

しばらくすると、行けつけのレストランのクロークで

働いている彼女を見つけます

コンチータ10年前にスペインから母親とパリにやってきた移民で

母親は敬虔なキリスト教

マチューは生活の足しにとお金を渡し

毎日(貧困街にある)アパートに通うようになります

そしてついに母親からコンチータを愛人にする許可を得ます

しかしコンチータは「お金で買った」と激怒し

一方で「愛しているのはあなただけ」と甘言で誘う

だけどキスは許しても、ベッドの中ではがっつり貞操帯(笑)

(結婚するまで処女を守ると最初から明言している)

さらに友人のギター弾きの男を部屋に連れ込む

わたしのことを馬鹿にしているのか、出ていけ!

となるわけですが

結局、彼女のスペインの故郷セビリアまで追いかけていく

(再開発のため立ち退き=移民は追放させられた)

そこでコンチータはダンサーとして働き

全裸で団体の観光客(日本人?)にフラミンゴを披露

激怒したマチューが観光客を追い出すと

ここにベッドがあるとでもいうの、ただ踊っていただけ

あなたのせいで仕事がクビになる、と怒り

次にはまた「愛しているのはあなただけ」

お金なんていらない、住む部屋がほしい

そうかそうかと、一軒家をプレゼント(登記証も)

しかしマチューが会いに行くと門に鍵をかけられ入れない

しかもマチューの目の前で、ギター弾きの男とセックスをしだす

「見たいなら、見て」

その場を立ち去るマチュー

しかもその夜、強盗に車は壊され財布を奪われてしまう

翌朝、マチューのもとにコンチータが仲直りにやって来ます

「セックスはしていない」「彼はゲイなの」

「愛しているのはあなただけ」

でも今度ばかりはマチューは許しませんでした

コンチータの顔を何度も殴り

(彼女は「今 あなた私を愛していると確信しと言う

彼女を置き去りにして、この列車に乗り込んだのです

マチューの話に納得する乗客たち

そこに隠れていたコンチータがやってきて

バケツの水をマチューにかけるのでした

目的地に(パサージュ・ショワズール)つくと

ふたりは腕を組み仲良く歩き出すのでした

ラジオ放送でテロリスト同盟が結成されたことが告げられ

続いてワルキューレの「愛の二重唱」が流れる

愛の夢が またわたしのものに帰ってくる♪

ショー・ウインドーでは血の付いたレースに刺しゅうする女性

爆発音

ついにパリ中心部でも、爆弾テロが起こったのです

変わりゆくパリと、変わらないパリ

はたしてマチューはコンチータと結婚するのでしょうか

どちらにしろ、離れられないでしょう

すっかり調教されてしまいましたから(笑)



【解説】ウィキペディアより

1977年に製作・公開されたフランス・スペイン合作映画である。

ルイス・ブニュエル監督の遺作で、ピエール・ルイスの小説『女と人形』(映画化作品『西班牙狂想曲』『私の体に悪魔がいる』)からインスパイアされた作品(原作とはクレジットされていない)。 ヒロイン・コンチータをフランス人のキャロル・ブーケとスペイン人のアンヘラ・モリーナの二人の女優が演じるという「二人一役」の演出がなされている。キャロル・ブーケは本作品が映画初出演である。 また、余りにも唐突に訪れる結末により、『アンダルシアの犬』や『黄金時代』などと重ね合わせてシュルレアリスム作品と語られることもある。1977年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。