原題も「Les rendez-vous de Paris」(パリで待ち合わせ)
パリを舞台にした男女の恋の駆け引きを3話に分けて展開するオムニバス
路地で男女二人組がアコーディオンを手にして歌う♪巴里は恋の街~♪は
ルネ・クレールの「巴里の屋根の下」へのオマージュ
第1話「7時のランデブー」
エステル(クララ・ベラール)
大学生、彼氏とラブラブだが恋愛と勉強は両立
しかし彼氏が浮気しているかもしれないと知り、何も手につかなくなる
オラス(アントワーヌ・バズレル)
エステルの彼氏
フェリックス(マルコム・コンラート)
エステルにデートの誘いを断られると
「オラスは毎日7時ごろ”パン切れ”というカフェで女性とデートしている」
と教える
ナンパ男(マティアス・メガード)
朝一で買い物するエステルに声をかける、イケメンだがストーカー気味
が、この男を利用して彼の浮気を探ってみるのもアリと
「7時に”パン切れ”カフェに来れば再会できるわ」と約束して別れるが
その後財布がなくなっていることに気付く
アリシー(ジュディット・シャンセル)
財布(現金は抜かれていた)を拾ったと部屋まで届けてくれた女性
事情を話すと、もしナンパ男がカフェに来たら彼はスリではないから
自分も男にしつこく誘われていて
「7時に”パン切れ”カフェで待ち合わせ」しているので
どうせなら一緒に行って確かめようと誘われます
そして彼女と待ち合わせていたのは、なんとオラスでした
信じられないくらい、あっという間に愛は冷めた
こんな軽薄な男を信じていたなんて
立ち去るエステル
追いかけるオラス
置いてけぼりのアリシ―
少し遅れてやって来たナンパ男
奇跡的に集まった4人が、ものの見事にすれ違いバラバラになる
これも人生
第2話「パリのベンチ」
エル(オロール・ローシェール)
同棲している彼氏がいるが倦怠期で、日々の生活にも飽き飽きしている
週に1回、文学教師とデートしている
ルイ(セルジュ・レンコ )
本気でエルと付き合いたいと思っているが、キスまでの仲
身勝手な彼女に振り回され、公園散歩に付き合っている
彼女の要望にあわせ、ただひたすら、散歩、散歩、散歩のふたり
しかしついに、エルが「彼が出張に行くので」
パリ市内のホテルに泊まろうとルイを誘うのです
観光客のふりをして大きなバックを持ち、初めての外泊にときめく
しかしホテルを目前にしてエルが見たのは
出張のはずの彼が、見知らぬ女性とそのホテルに入る姿でした
彼氏と別れるのに「いいきっかけ」と言うルイ
ルイのデリカシーのない言葉に(オマエのほうがよっぽど毒吐き女だがな)
彼の浮気がショックだったエルは
一方的にルイに別れを告げ消えてしまうのです
だけどまた1週間後には、公園デートに誘うのかも知れない
こういう女は、頼まれて断れない男を知っているから
次々とパリのいろいろな公園や名所を見れるという点では
(黒猫の画家スタンランのお墓も見れる)
この作品がいちばん好きかも
なんといってもパリ案内ムービーとして最適(笑)
第3話「母と子1970年」(ピカソの作品名)
理屈はいいが売れない画家
女性にはモテる
若い娘(ヴェロニカ・ヨハンソン)
スウェーデンから友人の紹介でやってきたインテリアデザイナー
パリ案内を頼まれピカソ展に行くものの
夜にカフェで会うことを約束し(人妻を追うため)退館する
赤いカーディガンの女性(ベネディクト・ロワイヤン)
画家が一目惚れした人妻
二時間だけパリに滞在し、出版の仕事をしている夫のため
ピカソ展で出版物と実物のカラーが同じか図録にメモしている
画家に誘われアトリエまでついていくものの
スウェーデン娘に美術館を案内し、何気に絵を解説する体で
一目惚れした見知らぬ女性にアピールする画家
そのことにスウェーデン娘も、女性も気付かないはずがない(笑)
気付かないふりをしているだけ
案の定、女性は予定通り夫とパリを去ってしまうし
スウェーデン娘と約束したカフェに行くも彼女は来ない(あたりまえ)
しょうがないので、アトリエに戻り絵を仕上げることにする
青を基調とした寒色系ばかりの絵に
ハムみたいなピンク、赤い色の服が足されていき
だんだんとカラフルになっていく
失恋、失敗、だけど「無駄な1日はない」
たった1日の体験が、心を色鮮やかにすることもあるのです
「今夜はダメなんだ」
「信号で見かけて これを逃したらもう会えないと思って引き返してきた」
「言葉を信じては駄目よ」
「自分勝手よ 私の気持ちなんて全く考えないで」
「独創性のない男ね」
「彼とすることはあなたとしないから 裏切ってる気にならない」
「愛してないんだろ?」
「あなたへの今の愛より もっと彼を愛してた 時間が要るわ」
「寒い中でする熱いキスの方が魅力的でしょ まだ寒くないわ」
「彼がいなければあなたもいらない」
「退屈することができない」
「私は退屈するまで何もしないのが好き」
「あなたは彼の鏡像だった」
「良すぎて先を考えてる」
「私はこれが好き」
「僕の好みじゃない」
「ピンクの豚みたいだわ」
「デッサンはできない 描いていくなかから対象を立ち上げる」
「絵が好きだから 絵で苦しむ人と暮らすことは考えられない」
「好みでない女性を無視するなら その代わり完璧に愛せる女性を探すべきだ」
「好きな女性の全てを愛せるの?」
「揺るぎない自信があるもの 私にとって“男"は夫だけ」
「だから興味を持った人と安心して話せる」
「全ての女性が僕の仲介人とはね」
「まあ 無駄な1日ではなかったな」
「女性の同意が先決」「決定権は女性にある」
なので男は、ナンパ、ストーカー、不倫、浮気をしても
「簡単に手を出さない」「関係を持たない」まま終わる
そのかわり恋愛に修羅場は持ち込まず、終わり方もドライであっさり
だから何度でも、何歳になっても恋ができるのかもな(笑)
♪A Paris les rendez-vous
ne sont pas toujours pour vous
Il y a souvent des surprises
Il y a parfois des méprises♪
♪Tout cela fait des histoires
tantôt roses tantôt noires
Sur les pavés de Paris
tantôt l’on pleure tantôt l’on rit♪
♪パリでの出会いは
いつもあなたに都合がいいわけじゃない
思いがけない出来事もあれば
行き違いもある♪
♪薔薇色の物語もあれば
暗い物語もある
パリの石畳の上では
涙する者もあれば
笑う者もある♪
これでロメール特集は終わり
2021年12月31日までアマプラで配信されています
【解説】映画.COMより
ヌーヴェルヴァーグの映画手法をもっとも忠実に守りながら、70歳を越えてなおシンプルでみずみずしい作品を連発し続けるエリック・ロメールが3話構成のオムニバスで描く恋愛コメディ。前作「木と市長と文化会館 または七つの偶然」に続き、スタッフは、製作のフランソワーズ・エチュガレー、撮影のディアーヌ・バラティエ、録音のパスカル・リビエ、編集のメアリー・スティーブンがそれぞれ担当。出演は、人気モデルで映画出演は「アリア」のロバート・アルトマン編以来となるベネディクト・ロワイヤン、これが日本初公開作になるクララ・ベラール、演劇を勉強中の新人のオーロール・ロシェほか。三話のうち最後の挿話の題「母と子1907年」はパブロ・ピカソの絵画の題名から。