男と女 人生最良の日々(2020)

「人生最良の日々を、(わたしたちは)まだ生きてはいない」

                  ヴィクトル・ユゴー

原題はLes plus belles annees d'une vie(人生で最も美しい年)

 

「男と女」(1966)の続編、想像したよりかなり好い出来で

トランティニャンの遺作として本当にふさわしい作品

しかも50年の歳月を経て

ほぼ同じキャスト、同じスタッフで制作されたという奇蹟

 

「男と女Ⅱ」 (1986)は見ていませんが

たぶん「男と女Ⅱ」 はなかったことになってるんですね(笑)

ノルマンディーで雑貨店を営むアンヌ

娘のフランソワーズは獣医でその日も馬の分娩の予定があり

忙しく駆けまわっていました

そこに見知らぬ男がアンヌを訪ねてきます

 

彼はかってのアンヌ恋人、ジャン=ルイの息子アントワーヌでした

アントワーヌは、認知症になり余命いくばもない父親に

逢って欲しいとアンヌに頼みに来たのです

「頼まれただけ」「お化粧してるからよ」

アヌーク・エーメ(撮影時86歳)がびっくりするくらい魅力的なのに対し

トランティニャン(撮影時88歳)は本物の認知症かと思うくらい

年老いてヨボヨボ

 

それがアンヌと話すうち、だんだんと活き活きしてきて

かってのハンサムで女好きでモテ男のオーラ復活

いやあ凄い

これが本物の俳優というものなのだな

とにかく会話が粋で洒落ている

だけど押しつけがましくなく、サラッとしている

恋愛に年齢は関係ないことを教えてくれます

そしてかってふたりの愛し合った映像が

フラッシュバックで流れます

 

愛を告白する電報

「モンマルトル1540」の 電話番号

フォードマスタングのドア番号「184

6時のパリ「18」の赤信号

ノルマンディーのホテルの部屋番号「26

プランシュドドーヴィルの海岸

シャバダバダ・・・

ジャン=ルイは老いたアンヌが、アンヌとは気付かずに

たくさんの女性を愛したが、彼女ほど愛した女性はいないと語ります

だけど事故で亡くなったアンヌのスタントマンの夫が

ジャン=ルイにとって彼とアンヌの間に立ちはだかっていたのです

その寂しさを紛らわすように他の女性と浮気してしまう

そして結局別れてしまった

アンヌはジャン=ルイをドライブに誘います

ふたりが出会った寄宿学校

あの日のホテル、海岸

 

ジャン=ルイはアンヌに許しを乞い

もう離れ離れになりたくないと訴える

どこまでが夢か現実なのか

つかの間正気に戻り、また忘れてしまう

そんなジャン=ルイをアンヌは慈しみ、愛おしいと思う

残り少ない人生をもういちどジャン=ルイに捧げよう

 

アントワーヌとフランソワーズにも

再び親愛が芽生え始めていました

もしかしたら、アントワーヌがアンヌに会いにきたのは

父親のためだけじゃなかったのかも知れません

アントワーヌにとっても、4人で過ごしたあの頃が

一番楽しい思い出だったのです

老いて肉体が不自由になっも、記憶が曖昧になっても

人を愛するという魂は自由でいたい

ものすごい感動作といったら嘘になりますが(笑)

(「男と女」を見た人にとっては特に)感慨深く

ロマンチックで幻想的

 

あとからあとから来る余韻がありました

 

 

 

【解説】映画.COMより

フランスの名匠クロード・ルルーシュ監督が1966年に手がけ、第19カンヌ国際映画祭パルムドールアカデミー外国語映画賞脚本賞を受賞した名作恋愛映画「男と女」のスタッフ&キャストが再結集した続編。前作の主演アヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャンが同じ役柄を演じ、53年後の2人の物語を過去の映像を散りばめつつ描いた。元レーシングドライバージャン・ルイは、現在は老人ホームで暮らし、かつての記憶を失いかけている。ジャン・ルイの息子はそんな父のため、父がずっと追い求めている女性アンヌを捜し出すことを決意。その思いを知ったアンヌはジャン・ルイのもとを訪ね、別々の道を歩んできた2人はついに再会を果たす。