フリック・ストーリー(1975)

 
 
アラン・ドロン×ジャン・ルイ・トランティニャン
カッコいいですねえ、シブいですねえ。
ほんっとフランス映画って溜息が出ます、地味だけれど痺れる。
冬の冷たいパリの街も、非情にぴったりな雰囲気がありました。
 
1947年、まだ戦争の傷跡が残っていた時代。
脱獄した強盗凶悪犯(トランティニャン)
邪魔者は裏切り者は容赦なく殺します。
パリで評判の国家警察局の凄腕刑事ボルニッシュ(ドロン)は
彼を追うことになります。
 
兄をナチスゲシュタポの拷問で殺された過去があるボルニッシュは
暴力より取引で犯人と交渉するタイプ。
一方の実在した殺人鬼ビュイッソンは、一瞬の躊躇もなく
自分にとって不要な人間は射殺します。
 
しかし彼には音楽を、ピアフを愛するという心がありました。
そして、その憩いが命取りになってしまいます。
 
刑事も犯罪者も紙一重なのかもしれません。
どちらも頭がよくなければ凄腕にはなれない
たまたまついた職業が違うだけ。
 
ビュイッソンとボルニッシュは同一人物のような存在だけれど
光と影なのです。
輝いているけれど、太陽と月。
そして惹かれる女性のタイプはたぶん同じ。
 
人は眩しく輝く光のようなスターに憧れるけれど
ひとり日陰で涼しみたいときもある。
トランティニャンがそんなクールになれる悪の華を好演。
男の悲哀が美しい、そんな作品でした。
 
だけれど、なぜビュイッソンは
(ドイツの)ワルサーP38にこだわったのだろう・・
 

 
【解説】allcinemaより
重犯罪者エミールが脱獄した。フランス国家警察局のボルニッシュは、エミールの逮捕に乗り出し、密告からつかんだ彼のアジトを襲撃する。しかしエミールは、彼をあしらうように逃亡、ボルニッシュの協力者を次々と殺害していく……。冷酷無比な凶悪犯を演じたJ=L・トランティニャンの圧倒的魅力に負うところの大きい、A・ドロン主演の実話に基づく刑事ドラマ。