仁義(1970)


まるで東映ヤクザ映画の邦題ですが(笑)

原題はLECERCLE ROUGE」(セルクル・ルージュ赤い輪)

 

冒頭で紹介される「人はそれと知らずに必ずめぐり逢う

たとえ互いの身に何が起こり、どのような道をたどろうとも

必ずや赤い輪の中で結び合う」というブッダの言葉から

運命で結ばれた人間は、一つの赤い輪の中にいるという意味

 

ジャン・ピエール・メルヴィルは前作に「サムライ」(1967)があったので

その流れで「仁義」という邦題になったそうです(ばかだ)

 

しかも本国フランスでは400万人動員の大ヒットを記録したにもかかわらず

日本では20分短縮して公開したために

興行も批評も大コケしたとか(ばかだ)
 

確かにメルヴィル作品は台詞が少なく、代わりに演技で魅せ

雰囲気や余韻を残すタイプの作り方なので

好きな人は好きだけど、人によっては退屈に感じるかも知れません

 

カメラは天才アンリ・ドカエ

モノクロにに近いブルートーンな色調が美しく

引きの空撮など緊張感あふれる画作りには

さすがとしか言いようがありません

 

しかしこの作品で盟友メルヴィルと対立してしまい

ふたりの関係は終わったそうです

 

ストーリーは出所したばかりのコレー(アラン・ドロン)と

護送中に列車から逃亡した凶悪犯

ヴォーゲルJMヴォロンテ)が偶然出会い
 

射撃の名手の元刑事ジャンセン(イヴ・モンタン)と組んで

マルセイユの刑務所の看守から持ち掛けられた

宝石店強盗を計画するというもの
 

そこにヴォーゲルを執拗に追うマッティ刑事(ブールヴィル)が
絡んできます

 

ここに登場する男たちはみんな孤独で

コレーは昔の仲間に恋人を奪われていて

ジャンセンはアルコールの中毒症状で爬虫類の妄想に悩まされています

マッティ刑事は深夜に帰る自宅で、三匹の猫しか話し相手がいない

 

最大の見せ場はやはり宝石店襲撃
 

大スターたちが覆面を被り、台詞すらない

リアルで凝った演出だと思います

 

アラン・ドロンには共演者を引き立てる才能がありますが

その中でもやはりイヴ・モンタンが圧倒的な存在感 

 

射撃のシーンには痺れた!

やりがいのある仕事がなければ、男は廃人同様なのね

 

だけど彼らを待っていたのは、ただの犬死

それでもかっこいい

 

タバコでつながる

言葉はいらない

女もいらない
いぶし銀の男の美学を堪能できます

 


【あらすじ】KINENOTEより

マルセイユ--パリ間の夜行列車のコンパートメント内、一人は刑事=マッティ(ブールビル)、一人は容疑者=ボーゲル(G・M・ヴォロンテ)。マッティが寝入るとボーゲルは安全ピンを取り出し、針の先をヒン曲げ手錠の鍵穴にさしこんだ……。マルセイユから程遠くない刑務所。年期開け近くもう出獄というコレー(A・ドロン)に古顔の看守が宝石店を襲う仕事をもちかけていた。しかし、彼は「別に大きな仕事をしなくとも俺は食える」と断った。コレーには仲間のリコ(A・エキナン)に“貸し”があったのだ。出所後、彼がくらい込んでいる間に勢力を伸ばしたリコを訪ね“貸し”を求めたがリコは言を左右にして断わる。コレーは一喝してかなりの札束をものにした。リコの追手を背後に古巣パリへ向かったコレーの車のトランクに、突っ走る列車から脱出したボーゲルが偶然もぐり込んできた。勿論、マッティの追求は随所の非常線、検問所に及んでいた。が、危機はリコの追手が先だった。コレーが捕えられた時、ボーゲルの凄腕が披露された。二人は友情を深めたが、困ったことに敵と共に札束が穴だらけになり一文ナシとなったのだった。コレーの脳裏裡にいつかの看守の話--パリの高級宝石店の話が浮かんだ。厳重な防護設備を破るには、射撃の名人が必要だった。ボーゲルの昔の仲間で元警官=ジャンセン(Y・モンタン)が呼出される。「仕事を手伝ってもらいたい」「よかろう」。計画は順調に進み出した。一方、マッティも黙ってはいなかった。彼はかねて親しいヤクザの一人、サンティ(F・ペリエ)を訪ねた。サンティが“イヌは嫌だ”と断わると、一計を案じ、彼の息子をマリファナ常習者だと逮捕して恫喝した。サンティも息子への愛には勝てなかった。網は巧みにはられた。一方、ジャンセンの精巧な腕が50米離れた防犯ベルを射抜き、コレーとボーゲルの“仕事師”ぶりも見事に発揮され宝石店襲撃は成功した。二〇億旧フラン。金に代える為に故買商が必要だった。しかし、市場はリコに押さえられていた。最後の頼みは昔の仲間サンティだった。場所はパリ郊外の空地。三人が赴いた時、出向えた故買商それはマッティだった。ボーゲルが彼を見て叫ぶ“逃げろ!”同時に警官隊のピストルの火が吹いた。