原題は「IL GRANDE SILENZIO」(大いなる沈黙)
ブニュエルは「アンダルシアの犬」(1929)を
人々を不快にさせるために作ったというけれど
セルジオ・コルブッチもかなりシュルレアリスティック
(理性や道徳、美的という先入見を排除した思考)
今までにない西部劇、しかし画的にスタイリッシュで凄くいい
雪景色に唖者の殺し屋、ジャン=ルイ・トランティニャン
賞金稼ぎは極悪変態クラウス・キンスキー
ヒロインは黒人未亡人
モリコーネの鎮魂歌のような音楽
このトランティニャンはかなり美形ですよ(笑)
他の西部劇の主人公とは比べ物にならないくらいいい男
対抗できるといったら「続・荒野の用心棒(Django)」(1966)の
フランコ・ネロくらい
悪役のクラウス・キンスキーもさすがの存在感で
終盤はすべてかっさらっていくという図太さ(笑)
これがセルジオ・コルブッチのスタイルなのだろうな
判事であるポリカットは賞金稼ぎのロコ(キンスキー)を雇い
「合法」の名のもと、町を追われ野盗となった人々を人間狩りしては
賞金を稼いでいました
そこにやって来たサイレンス(トランティニャン)と呼ばれる殺し屋
彼はポリカットとその仲間に両親を殺され、声帯を切られた過去がありました
無実の罪で夫を殺されたポーリンは、サイレンスに夫の敵討ちを依頼します
そして、もうひとりやって来たのはポリカットとロコの悪だくみを知り
法で秩序を治めようと赴任してきた保安官ゲデオンでした
ロコは野盗たちを人質にしてサイレンスを酒場におびき出します
サイレンスはロコを挑発し正当防衛でロコを倒そうとしますが
サイレンスの早撃ちを知っているロコは誘いに乗りません
それぢころかロコの手下に襲われ重傷を負ってしまいます
ロコはゲデオンによって逮捕
サイレンスはポーリンに手当てされて、二人は愛し合うようになります
しかし平穏な日もつかの間、ロコの手下たちが留置所を襲いロコは脱走
サイレンスはロコと対決しようとしますが
その場にかけつけたポーリンとともにロコに撃たれて
絶命してしまいます
まさかの、これで終わり(笑)
私腹を肥やすためには手段を選ばない卑劣な人間が勝つ
家も家族も失い、食べるものもない野盗(難民)たちが
この先どうなるかもわからない
後味の悪さは上位ランキング(笑)
でも(スイスのアルプスでロケしたという)雪の白、血の赤
漆黒の衣装のトランティニャン、黒い肌の女
そして残酷の華キンスキーには
他の西部劇には決してない、ここだけの美しさがあるのです
【解説】allcinema より
賞金稼ぎを生業とする残虐な無法者集団。彼らは無垢の人々をも手にかけ、一顧だにしない冷酷さを持っていた。彼らに夫を殺された未亡人は、ひとりの男に復讐を依頼する。“サイレンス”と呼ばれるその男は、幼いときに両親を殺され、自分も声帯を切り裂かれて声を失っていた。そして、彼をそんな目に会わせたのが、その無法者たちのボスだった……。“サイレンス”に扮するトランティニャンと、彼と対決する事になる凄腕の賞金稼ぎロコに扮するキンスキー。名優二人の名状しがたい存在感を得て、S・コルブッチが紡ぎあげた凄絶な西部秘史で、数あるマカロニ・ウェスタンの中でも、その陰鬱さと設定の特殊さ(舞台となるのは一面、雪に覆われたスノーヒルという町)で群を抜く異色作。物語の血なまぐささを尚更際立たせるかのように、真っ白の雪世界を捉えたイッポリティのカメラと、モリコーネのスコアは美しい。それにしても何とイキな邦題よ!