殺しが静かにやって来る(1968)

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原題は「IL GRANDE SILENZIO(大いなる沈黙)

ブニュエルは「アンダルシアの犬」(1929)

人々を不快にさせるために作ったというけれど

セルジオ・コルブッチもかなりシュルレアリスティック

(理性や道徳、美的という先入見を排除した思考)

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今までにない西部劇、しかし画的にスタイリッシュで凄くいい

雪景色に唖者の殺し屋、ジャン=ルイ・トランティニャン

賞金稼ぎは極悪変態クラウス・キンスキー

ヒロインは黒人未亡人

モリコーネの鎮魂歌のような音楽

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このトランティニャンはかなり美形ですよ(笑)

他の西部劇の主人公とは比べ物にならないくらいいい男

対抗できるといったら「続・荒野の用心棒(Django)」(1966)

フランコ・ネロくらい

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悪役のクラウス・キンスキーもさすがの存在感で

終盤はすべてかっさらっていくという図太さ(笑)

これがセルジオ・コルブッチのスタイルなのだろうな

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1898年アメリカ西部にあるスノーヒル

判事であるポリカットは賞金稼ぎのロコ(キンスキー)を雇い

「合法」の名のもと、町を追われ野盗となった人々を人間狩りしては

賞金を稼いでいました

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そこにやって来たサイレンス(トランティニャン)と呼ばれる殺し屋

彼はポリカットとその仲間に両親を殺され、声帯を切られた過去がありました

無実の罪で夫を殺されたポーリンは、サイレンスに夫の敵討ち依頼します

 

そして、もうひとりやって来たのはポリカットとロコの悪だくみを知り

法で秩序を治めようと赴任してきた保安官ゲデオンでした

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ロコは野盗たちを人質にしてサイレンスを酒場におびき出します

サイレンスはロコを挑発し正当防衛でロコを倒そうとしますが

サイレンスの早撃ちを知っているロコは誘いに乗りません

それぢころかロコの手下に襲われ重傷を負ってしまいます

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ロコはゲデオンによって逮捕

サイレンスはポーリンに手当てされて、二人は愛し合うようになります

しかし平穏な日もつかの間、ロコの手下たちが留置所を襲いロコは脱走

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サイレンスはロコと対決しようとしますが

その場にかけつけたポーリンとともにロコに撃たれて

絶命してしまいます

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まさかの、これで終わり(笑)

私腹を肥やすためには手段を選ばない卑劣な人間が勝つ

家も家族も失い、食べるものもない野盗(難民)たちが

この先どうなるかもわからない

後味の悪さは上位ランキング(笑)

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でも(スイスのアルプスでロケしたという)雪の白、血の赤

漆黒の衣装のトランティニャン、黒い肌の女

そして残酷の華キンスキーには

他の西部劇には決してない、ここだけの美しさがあるのです

 

 

【解説】allcinema より

賞金稼ぎを生業とする残虐な無法者集団。彼らは無垢の人々をも手にかけ、一顧だにしない冷酷さを持っていた。彼らに夫を殺された未亡人は、ひとりの男に復讐を依頼する。“サイレンス”と呼ばれるその男は、幼いときに両親を殺され、自分も声帯を切り裂かれて声を失っていた。そして、彼をそんな目に会わせたのが、その無法者たちのボスだった……。“サイレンス”に扮するトランティニャンと、彼と対決する事になる凄腕の賞金稼ぎロコに扮するキンスキー。名優二人の名状しがたい存在感を得て、S・コルブッチが紡ぎあげた凄絶な西部秘史で、数あるマカロニ・ウェスタンの中でも、その陰鬱さと設定の特殊さ(舞台となるのは一面、雪に覆われたスノーヒルという町)で群を抜く異色作。物語の血なまぐささを尚更際立たせるかのように、真っ白の雪世界を捉えたイッポリティのカメラと、モリコーネのスコアは美しい。それにしても何とイキな邦題よ!