風の音、愛のうた(2011)


 
 
タイ映画って、過去に見た記憶がないのですけれど
なかなか素敵な作品でした。
 
タイに住む方ってもう少し褐色な肌で
ランニングと短パンのラフな服装なイメージがあったのですが
私たち日本人と、顔立ちやファッションがほとんど同じでした。
女の子は茶髪にし可愛いお洋服、そして携帯でメールのやりとり。
 
3人の監督によるオムニバス
3つの家族の日常の物語。
 

 
「お礼を言います、幸せとは何か分かった」
 
音楽学校の生徒のジョイは風変わりな音楽教授の助手となり
自閉症の妹ポーを連れ、自然の音を録音する旅をします。
 
才能はあるけれど自己中心的な考えしかできないジョイ。
妹の面倒はよくみますが、ときどき癇癪をおこしてしまいます。
思い通りにならない、全く言うことをきかない妹。
しかしなぜか教授と妹はだんだんとウマがあっていきます。
ふたりには、自然が奏でる音楽に共感するという共通点があったのです。
 
風変わりな教授でも、障害のある妹でもなく
成長しなければいけないのは
変わらなければならなかったのは
横柄で自分勝手なジョイだったのです。
そしてそのことに彼は、やっと気が付いたのです。
 
関係ないけれど、ジョイが成宮寛貴クンにそっくり。笑
 

 
「運ではない、すべては自分次第。足元を見ていなかったのさ」
 
女子大生のムアイは中国系タイ人の祖父から靴の作り方を教わることになります。
祖父の靴工房に大型機械を導入し、大量生産で工房を発展させた父と
オーダーメイドの靴作りをしている祖父は対立をしています。
 
昔ながらの職人気質の先代と、現代的な考えの跡取り。
家族経営ではその対立がより大きな気がします。
自分の経営方針にあった人間に、子どもが成長するとは限らない。
それに年老いた人間は、やがて現場から去らなければならない。
 
しかし世界不況の影響で、息子の事業は失敗してしまいます。
「足元を見ていなかったのさ」と、息子に救いの手を差し伸べる祖父。
祖父はたとえ小さな靴工房であっても
家族のために身銭をコツコツと貯めていたのです。
そして仕事仲間から、長年の信頼を築き上げてきたのです。
 
現代っ子の娘が、だんだんと昔気質のおじいちゃんに
なついていく過程がホノボノとした気分になれます。
 

 
軍人の夫の仕事の関係でタイの南部に移り住んだ母子。
しかしイスラム教徒圏のその地域ではテロによる被害がしばしばおこります。
夫もテロの爆破により死んでしまいました。
母子の故郷では危険だからバンコクに帰っておいでといいます。
 
この作品が一番感動しました。
国の抱える問題や、大人の事情をどうしても理解できない
そんな純粋な少年の気持ちにジーン・・・
 
仏教徒の息子の親友はイスラム教徒。
いつも一緒、毎朝宿題をみせてあげます。
友だちのいる、父親の思い出のある、この場所から離れたくないのです。
バンコク行きを決めた母親に反抗してしまいます。
 
ある日息子と親友は退役軍人に逢いに行きます。
片足を失った軍人を指さして
「ああなりたいの?」と叫ぶ母親・・
 
息子と親友は発表会の影絵で軍人のお話を演じます。
それは自分の父親の話でした。
イスラム教徒の多いその場所で、父親は英雄だった語ります。
 
子どもたちには仏教もイスラム教も関係ないのです。
そして小さな男の子にとっては
父親は一番身近にいるヒーローなのです
そうあってほしいのです。
 
少年の涙に母親が泣き
そして私もウルルンする・・笑
 

 
3つの作品の共通点は
いちど離れてしまいそうになった家族の絆や愛情が
修復されて以前よりよりよい関係になるというもの。
 
ほころびは早く見つけて繕うのが大切ですよね。
完全にほどけて片方見失う前に。
 
邦画のような雰囲気もあって見やすいですし
爽やかで後味の良い作品ばかりでしょう。
素敵な映画だと思います。