靴をなくした天使(1992)

原題は「Hero」(英雄)

仕事をクビになり、盗品の売買で生計を立て

たかが100ドルの靴にこだわるだけの

クズでだらしなくカッコ悪い

妻に三行半(みくだりはん=離縁状)された中年男が

愛する息子に好かれるためだけ

自分がいかに凄い仕事をしているヒーローだという

嘘をつく物語

 

B級の小品であることは否めませんが(笑)

くだらなさと、ウェットになり過ぎないバランスが絶妙

キャスティングもダスティン・ホフマンを筆頭に

アンディ・ガルシアジョーン・キューザックジーナ・デイヴィス豪華

窃盗の罪で逮捕されたバーニー(ダスティン・ホフマン)は

裁判所から収監命令の判決を待つ身

弁護士は情状酌量を得るため、離婚した妻と息子に対して

「よき父親像」を演じるようアドバイスします

しかし目先の欲望しか考えていないバーニー

隙を見ては弁護士の財布を盗み

 

息子との面会では、息子がトイレで拾ったという財布も

「自分が警察に届けるから」と取り上げ

中身のカードを故買(こばい)に売る始末

その夜、映画を見るために息子を迎えに出たバーニーは

雨の中、旅客機の墜落事故に遭遇してしまいます

助けてくれの悲鳴不本意避難ドアを開けバーニー

 

次々と乗客が脱出することに成功するなか

ひとりの少年が「父親を助けてほしい」と懇願します

困ったなと言いつつ(少年に息子の姿を見たのだろう)

少年の父親の救助に向かうバーニー

まだ機内に残された人々に手を貸しながら少年の父親を探していると

高級そうな女性もののバックを発見、すかさず盗もうとすると

座席に挟まれ助けを求める女性を発見

人気ニュースキャスターのゲイル(ジーナ・デイヴィス)でした

 

やがて救助隊が現れ、バーニーは現場を離れますが

少年の父親を見つけられなかったうえ(すでに脱出していた)

100ドルで買った新品の靴が片方見つからない

おまけに泥だらけで息子に会いに行くと

元妻のエヴェリンジョーン・キューザック)が

時間に遅れたバーニーを激しくなじります

もちろん飛行機事故に遭遇したなんて話は信じてくれません

バーニーはゲイルから盗んだバックのお金を抜き取り

(息子が拾った財布の謝礼だと)息子に渡すようエヴェリンに頼みます

帰り道、親切なホームレスのババー(アンディ・ガルシア)の

車に乗せてもらったバーニーは、墜落事故で起こった終始を話し

お礼として残された片方の靴をくれてやります

「片足の友人がいる」とありがたく受け取るババー

一方で、飛行機の墜落事故という惨劇にもかかわらず死傷者はゼロ

病院で目を覚ましたゲイルは自分を助けた人物を、「104便の天使」だと報道し

不鮮明な映像と現場に残された片方の靴を頼りに探すことにします

おかげでテレビ局には自称「天使」がいっぱい(笑)

 

ババーも、テレビ局の出す賞金欲しさに名乗りを上げたひとり

バーニーからもらった靴を履き

バーニーから聞いた救出劇を話します

そのことで勝手に英雄像が作り上げられ

着飾さられ、テレビ出演させられ、高級ホテルに豪華な食事

おまけに実はハンサムだったババーに世間は夢中

ババーは本当のことが言えなくなってしまいます

インタビューでは(先日までの自分と同じ暮らしをしている)

路上で暮らす人々に毛布を与えてほしいと、裕福な人々に寄付を募り

病院を慰問し病気の子どもたちを励ますと

その人柄にますます人気が上昇(笑)

そのころバーニーは、窃盗品を売り払おうとして囮捜査に逮捕されていました

ババーの活躍をテレビで見たバーニーはひとり悪態を吐きますが

世間の人々はすっかりババーの奉仕の心に感化されていて

ババーに影響された弁護士は、バーニーのために保釈金を払います

が、ゲイルの盗まれたバックの中身が

バーニーによって転売されていたことがわかり

ババーにも警察の捜査が入ります

 

ゲイルは、ババーが(魔が差して)盗んだバックをバーニーに売り

そのことでバーニーに脅されているのではないかと思っていましたが

ババーに会うためホテルにやってきたバーニーが、両手で顔を拭った時

彼の黒く汚れた顔を見たゲイルは

バーニーこそ本物の天使だったことに気づきます

 

ババーはバーニーに謝り

バーニーもババーがあの場にいたら同じ事をしたと言

それより口止め料として、息子の学費、弁護士の費用

そして自分の刑を軽くするための証言をしてほしいと頼むのです

無事服役を逃れることが出来たバーニーは

息子にだけは真実を話すことにします

「何で助けたの」と聞く息子に「魔が差した」と答えるバーニー

 

その時、ライオンの檻に娘が落ちたと女性の叫び声

係員を呼べというバーニーに「助けて!」と悲痛に訴える母親

バーニーは脱いだ靴を息子に渡すと、ライオンの檻へと向かうのでした

本物のヒーローとは誰か
見返りなんか求めていていない、偽善も下心もない

無償の愛情で命を懸けることができる

親の愛に勝るものはないのです

 

こんなダメで不運な父親でも

彼こそヒーローなのだと、息子は誇りに思うのでした

 

 

【解説】映画.COMより

マスコミが作り上げた虚像に振り回される人々の姿を描いた風刺コメディ。飛行機の墜落現場に遭遇したコソ泥のバーニー。彼は嫌々ながらも乗客たちを助け出し、そのままその場を立ち去った。その飛行機に偶然乗り合わせていた女性テレビリポーターのゲイルは、現場に残った靴を手がかりに、テレビで”謎のヒーロー”の公開捜査を開始。そしてある男性が名乗りを挙げるが……。主人公バーニーを、名優ダスティン・ホフマンが好演。ビデオ題は「ヒーロー 靴をなくした天使」。

1992年製作/117分/アメリ
原題:Hero
劇場公開日:1993年4月