原題は「BIG JAKE」 (ビッグジェイク)
プロデューサーはマイケル・ウェイン(最初の妻との間の長男)
次男役はパトリック・ウェイン(最初の妻の間の次男)
三男役はクリス・ミッチャム(ロバート・ミッチャムの息子)
孫役がイーサン・ウェイン(3番目の妻との間の息子)
ストーリーは単純で、身代金目的で悪漢に誘拐された孫息子を
チョイ悪な家出じいさんが助けにいくというもの
公開当時は批評家だけでなく、観客からも
「デュークや、オハラほどのスターが何故こんな映画に出たのか」
「(息子が製作とはいえ)脚本に文句を言わなかったのか」と
酷評されたそうです
確かに先住民やメキシコ人が善人悪人かまわず殺され
飼い犬まで殺され、身内だけが生き残るのはいいとして
悲しみもしないし、追悼もなしというのは
(70年代ともなると)非難轟々だったのかもしれませんが
私はそこまで悪い出来とは思いません
その証拠に赤字になっていないうえ
それなりの興行成績(その年のTOP10)も収めている
たとえ時代遅れになっても、御大は御大のままでいい
1909年、テキサスにあるマッキャンドルズ大牧場が
ジョン・フェイン(リチャード・ブーン)一味に襲われ
雇用人たちは惨殺、長男は瀕死の重症
そのうえ(長男の)孫息子が誘拐されてしまいます
身代金は100万ドル、保安隊(テキサスレンジャー)は
フェイン一味を追おうとしますが
マーサ夫人(モーリン・オハラ)は保安官や騎兵隊では
孫を取り戻すのは無理
悪には悪で挑まないと勝ち目はない、と考えます
そこにジェイクこと、ジェイコブ・マッキャンドルズ(ジョン・ウェイン)に
「孫が誘拐された」という手紙が届きます
彼は「シマロン」(1931)と同じなんですね(笑)
土地や富や名声を手に入れても、自由気ままな生活しかできない男
家のことは全て奥さんにまかせきり
子どもの顔もよく知らないし、孫となったら実感もわかない
だけど今まで一度も、愚痴も、文句も、泣き言も言ったことがない妻が
救いを求めてきた、これはただごとではないと察します
10年以上ぶりに地元に帰ってきたジェイク
駅名がマッキャンドルズというだけで、どれほどの大地主かわかる
迎えにきた次男のジェームズはいちいち嫌味ったらしい
三男のマイケル(イケメン君)はやんちゃで無謀
だけど父親の記憶がない分、素直なところもある
保安隊は自動車で先回りし、孫を救い一味を逮捕すると断言します
息子のジェームズとマイケルも当然のように
父親ではなく自動車隊に同行するという
ジェイクのお供は、ワン公(ドッグ)と、アパッチ族のサムだけ
だけどマーサが100万ドルの箱を預けたのは夫のジェイク
自動車隊になにかあったら、息子と孫を救うのは
ジェイクしかいないと信じているから
モーリン・オハラ、このとき50歳
相変わらず綺麗だし、いい女ですね
こういう芯の通った強い女がよく似合う
自動車隊はフェイン一味に先を読まれ、襲撃されてしまい
次男ジェームズは、後から追って来た父親に助けられ
結局、父親と同行することにします
アパッチ族のサムは(耳がいい)何者かに尾行されていると気付き
ひとりは始末したものの、ひとりは逃がしてしまいます
その後、逃げた男(フェイン)はジェイクの前に姿を現わし
身代金の受け渡し場所だけを伝えて消えてしまいました
御大の敵役を演じるって、御大に負けないくらいの存在感が必要で
まさにリチャード・ブーンはぴったり
デュークの遺作「ラスト・シューティスト」(1976)でも
決闘相手を演じました
身代金の受け渡し場所に行く途中、立ち寄った町で
ジェイクは息子たちに酒場で女とハメを外してこいという
(アメリカではそういうことを教えるのも父親の役目なのか 笑)
自分は簡易宿泊所の(最新型?笑)手動シャワーでさっぱり
でもどんな時でも銃は携帯、パンツも脱がない(笑)
襲ってきた相手を撃ち
ジェームズは酒場で、マイケルとサムは宿屋で
それぞれ敵を倒します
そのとき金庫の鍵が壊れてしまい
中に入っていたのは100万ドルではなく
紙の切れ端だったことがわかります
納得のいかないジェームズとマイケルに
ジェイクは、母さんと決めた事だと説明します
悪党の言いなりにはならない、金も渡さない
金を受け取った瞬間、奴らは孫を殺すのだから
敵のアジトに乗り込むと、相手も用意周到
金を先に渡さなければ子どもを殺すという
駆け引き、にらみ合い、箱を開ける瞬間、偽札
だけど決着はすぐにはつかない
ドッグが、またいい演技をするねえ
正直最初から最後まで、息子たちより役に立つ(笑)
サムやドッグが死んだとき、デュークに泣けとは言わないけれど
せめて亡骸を抱きしめるとか、土に埋めて欲しかった
(マーサがジェイクと同じ名前を付けた)孫を救い
瀕死のフェインに名前を聞かれたジェイクは
「ジェイコブ・マッキャンドルズ」と名乗ります
「死んだかと・・」 と息を引き取るフェイン
「生きてるさ」
そして「おじいちゃんだよ」と孫を引き寄せる
反抗的だったジェームズも、父親なりの愛の示し方を知り
「家に帰ろう」と誘うのでした
男は本物の男になったとき、初めて”許す”という意味を知る
(今日も名言出たぞ 笑)
男系家族、男性至上主義
そういう考えを、古いとか
女性蔑視だと軽蔑する人も多いでしょうが
いざとなったら、家族を守る責任は男にある
そのためには命を懸けることも惜しまない
その信念を、私は間違ってるとは言えないし
むしろ、そんな男がいたら結婚したい(笑)
(相手にも選ぶ権利があるがな)
ところで、瀕死だった長男
(歌手のボビー・ヴィントン=デュークの若い頃に顔が似ているらしい)
はどうなった?(笑)
【解説】KINENOTEより
無法者に誘拐された孫を追う、西部男の心意気を描いた作品。製作はジョン・ウェインの長男マイケル・ウェイン、監督は「荒野のスモーキー」のジョージ・シャーマン、脚本は、かつてリチャード・ブーンが主演したTV「西部の男パラディン」の作者フィンク夫妻、撮影はウィリアム・H・クローシア、音楽は「大脱走」のエルマー・バーンステインがそれぞれ担当。出演は「リオ・ロボ」のジョン・ウェイン、リチャード・ブーン、モーリン・オハラ、ジョン・ウェインの次男パトリック・ウェイン、ロバート・ミッチャムの息子クリス・ミッチャム、ブルース・キャボット、映画デビューのポップ歌手ボビー・ヴィントン、それにジョン・ウェインの末っ子ジョン・イーサン・ウェインなど。日本語版監修は清水俊二。テクニカラー、パナビジョン。1971年作品。
近代化の波が押し寄せつつある西部はテキサスのマッキャンドルズ牧場では、牧場主のジェーコブ・マッキャンドルズ(ジョン・ウェイン)が、ここ数年メキシコにでかけており、留守を息子のジェフ(ボビー・ヴィントン)が守っていた。ある日、悪名高いジョン・フェーン(リチャード・ブーン)率いる7人の無法者に牧場が襲われ、ジェーコブの孫ジェーク少年(ジョン・イーサン・ウェイン)が誘拐された。一味は少年の生命と交換に百万ドルの身代金を要求した。ジェーコブの妻マーサ(モーリン・オハラ)は、ほかの2人の息子ジェームズ(パトリック・ウェイン)とマイケル(クリス・ミッチャム)を呼び寄せ、ジェーコブにも連絡した。急遽戻ったジェーコブは、古いアパッチ族の友人“とがった鼻”(ブルース・キャボット)に応援を頼み、ジョン・フェーン一味追跡に向かった。一足先に自動車で発ったジェームズたちのテキサス警備隊は、たちまちフェーンの襲撃にあったが、ジェーコブの機転で難を逃れた。あらためて父親の実力を見直したジェームズやマイケルは、ジェーコブの一行と合流してフェーン一味を追った。メキシコの町エスコンドラで、金庫を狙う町の無法者たちを蹴散らしたあと、フェーンからの使いが現れ、ジェーク少年と身代金との交換場所へ案内すると告げた、ジェーク少年には、狙撃の名手の銃口が正確に狙いを定めていると念を押されたジェーコブは、偶然外出していたマイケルを射ち合いで死んだことにして、こっそり跡をつけさせた。待ち構えていたフェーンは、ジェーク少年を前に引きすえた。フェーンがジェーコブの持参した金庫を開けたとたん、凄まじい射ち合いが始まった。ジェーク少年の狙撃者は鐘楼の上から少年を狙っていたが、マイケルが射殺した。さらにジェーク少年を殺そうとしたフェーンの子分を、弾丸を使い果たしたジェーコブは鍬で刺し殺した。その瞬間、散弾銃を下げたフェーンが乗り込んできたが、その刹那、銃声が響いてフェーンはどうと倒れた。マイケルの必殺の銃弾であった。物かげて震えていたジェーク少年を、ジェーコブは大きな腕で抱きあげた(東和配給*1時間50分)