原題も「Prisoners 」(囚人や捕虜のこと)
林で鹿を撃つオープニングの映像美
屋外の景観はもちろん、室内の撮影にも手抜きをすることはありません
暗くよどんだサウンドも雰囲気があり
本作でもヴィルヌーヴのセンスが光ります
カメラはロジャー・ディーキンス
ペンシルベニア州の田舎町
工務店を営むケラー・ドーヴァー(ジャックマン)は家族と共に
隣家のフランクリン・バーチ(テレンス・ハワード)家に
感謝祭のお祝いのため訪れていました
そこでケラーの6歳の娘アンナと
フランクリンの7歳の娘ジョイが行方不明になってしまう
ケラーの長男ラルフと、フランクリンの長女イライザは
散歩に出かけた時、アンナとジョイが怪しいRV車で遊び
車の中に人がいたといいます
現場に向かうとそのRV車はすでに去っていました
そしてダイナーで食事する怪しく見える男(ギレンホール )
幼女誘拐犯はこの男だ!と思ったのですが(笑)
事件を捜査することになるデビッド・ロキ刑事でした
幼い娘を誘拐された父親の心情を
ジャックマンが迫真の演技で見事に表現しています
子どもが行方不明になったら正気でいられるはずがない
しかも昨日まで平和で幸せだった家庭に、不和が生じる
すぐにRV車は見つかり
アレックス・ジョーンズという男が容疑者として拘束されますが
アレックスは知的障害で会話もほとんどできない
車からもなんの痕跡も見つからず、釈放されることになります
ケラーはアレックスに詰め寄り、娘の居場所を聞き出そうとすると
彼は「僕がいたときは泣かなかった」と言い
しかもアンナとジョイが作った替え歌まで知っている
ケラーはアレックスが何かを知っていると確信し
拉致監禁しフランクリンを誘ってアレックスにリンチするのです
いくら娘を救うためでも、フランクリン(黒人)はためらいがある
もしアレックスが無罪で逮捕されたら、家族を守れない
アメリカでは人種によって酌量や刑期が違うのでしょう
ロキ刑事が性犯罪の前科のある人物にあたっていたとき
神父の家の前で、窓から神父が倒れているのを見つけ
慌てて部屋の中に入ると、単に泥酔していただけなのですが(笑)
偶然、地下に(”迷路”のペンダントをしている)死体を発見します
さらに少女の拉致事件の解決を祈るキャンドルを灯す集会で
不審な男を見かけ追いかけますが逃げられ、似顔絵を公開します
子ども服売り場の店員からの情報で、テイラーという男が見つかり
テイラーも幼い頃拉致されていたことがわかります
しかし苛立つロキ刑事のミスのせいで自殺してしまう
しかもテイラーの家で見つかった子供服についていたのは豚の血で
幼児誘拐犯を空想する模造犯だと結論付けされます
だけどテイラーの書いていた「迷路」と
神父の地下で死んでいた男の「迷路」の形のペンダントが一致する
神父は男が懺悔で「神との戦い」のため
16人の子どもを殺害したと告白したあと
男を殺したことを認めています
そしてケラーに拷問を受けるアレックスもまた
「迷路」という不可解な言葉を発します
ケラーは謎を解くためアレックスの叔母のホリーを訪ね
アレックスが釈放されたときの自分の行動を謝罪し
ホリーから話を聞くことができました
ホリーと(行方不明の)夫は、息子が癌で死んだあと信仰を失い
アレックスを養子にしますが
夫が飼っていたペットの(アレックスが嫌いな)蛇と
事故のせいで言語障害になったと言います
神父に殺された男、アレックス、幼い頃拉致されたテイラー
知的障害、幼児誘拐、蛇、迷路
3人の男の共通点を結び付けるものは何なのか
そんな時フランクリンの娘、ジョイが保護されたという知らせが入ります
ジョイはアンナと監禁されていた家から逃げますが
ジョイより年下のアンナは走るのが遅いのでしょう
捕まってしまいます
ケラーがジョイにアンナのことを詰め寄ると
ジョイはその家に「あなたもいた」と悲鳴をあげます
やっぱり犯人はアレックスで、娘はホリーの家にいたんだ
ケラーが何食わぬ顔で、お詫びに家を修理したいとホリーを訪ね
家に入れてもらいますが、ホリーに脚を撃たれ
(コーラのようなペットボトルの)薬を飲まされます
ホリーは息子の死を復讐するため、夫と「神との戦い」を誓ったと
それはあなたのような悪魔を作り出すため
幼い子どもを誘拐し、子を失った両親に
自分たちと同じ苦しみを与えるというものでした
そしてアレックスは最初に拉致した子で、テイラーは2番目
ホリーの夫のせいで迷路と蛇がトラウマになり
知的障害は薬によるものでしょう
ケラーは古いセダンの下に掘った穴に閉じ込められてしまい
そこでアンナの大事にしていた赤いホイッスルを見つけます
感謝祭の夜、アンナは失くした赤いホイッスルを探すために
ジョイと自宅に行き、アレックスにさらわれたのです
ケラーの父親の住まいだった廃墟からアレックスを発見したロキ刑事は
ホリーに知らせるため家に入ると
「迷路」のネックレスと同じネックレスを付けた男の写真を見つけます
幼児を16人殺害と告白した男は、ホリーの行方不明の夫だったのです
ロキ刑事がホリーを探すと、薬物を注射されたアンナが倒れていました
ホリーを撃ち合いになり、ロキ刑事は頭から血を流しながら
アンナを車に乗せ猛スピードで病院に運ぶ(サイレン鳴らせよ)
アンナは助かり、怪我の治療を受けたロキ刑事の病室に
母親と助けてくれたお礼をしにきました
アンナの首に下がっているのは、失くした赤いホイッスルではなく
新しく買ったものだと母親が説明します
ホリーの家の家宅捜査がはじまり
誘拐された幼児たちの遺体を探すため、家の回が掘り起こされる
その日の作業が終わり、帰ろうとした時
ロキ刑事は、かすかに聞こえるホイッスルの音に気付きます
「最悪の事態に備えて準備しろ」
たぶんホイッスルは防犯用にケラーが与えたもの
伏線の回収もオチも良く出来ている
幼児拉致誘拐犯が、ペドフィリア(幼児性愛者 )ではなく
自分の息子が死んだ苦しみと、神への憎しみを
同じ幼い子を持つ親に判らせるためという動機
アンナも、ジョイも、アレックスも死ななくて良かった
やっぱりヴィルヌーヴは深い
【解説】allcinema より
前作「灼熱の魂」が高い評価を受けたカナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが、ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールを主演に迎えて贈る緊迫のクライム・サスペンス。アメリカの田舎町を舞台に、何者かに掠われた6歳の少女の捜索を巡って繰り広げられる、冷静沈着に捜査を進めていく刑事(ジェイク・ギレンホール)と、自らの手で一刻も早く我が子を見つけ出そうと暴走していく父親(ヒュー・ジャックマン)の対照的な姿をスリリングに描き出していく。共演はヴィオラ・デイヴィス、マリア・ベロ、テレンス・ハワード、メリッサ・レオ、ポール・ダノ。
ペンシルヴェニア州ののどかな田舎町。感謝祭の日、工務店を営むケラーの6歳になる愛娘が、隣人の娘と一緒に忽然と姿を消してしまう。警察は現場近くで目撃された怪しげなRV車を手がかりに、乗っていた青年アレックスを逮捕する。しかしアレックスは10歳程度の知能しかなく、まともな証言も得られないまま釈放の期限を迎えてしまう。一向に進展を見せない捜査に、ケラーは指揮を執るロキ刑事への不満を募らせる。そして自ら娘の居場所を聞き出すべく、ついにアレックスの監禁という暴挙に出てしまうケラーだったが…。