原題は「Enemy」(敵)
「The Double」(二重や生き写し、コピーの意)
ドッペルゲンガーとは、自分の姿をもうひとりの自分で描く幻覚の一種
本人に関係のある場所に出現して、本人に関係のある人間と会話できる
ドアの開け閉めや車の運転が出来る、忽然と消える
ドッペルゲンガーを、本人が見ると死ぬ
大学の歴史教師アダム(ジェイク・ギレンホール)は
ボロ車に乗り、マンションにほとんど家具もなく質素な生活
高圧的な母親に頭が上がらないやさしい性格で
恋人のメアリー(メラニー・ロラン)とは
毎晩のように一緒に過ごしていますが、ちょっと倦怠期気味
単調な生活を繰り返すアダムでしたが
ある日同僚から「面白かった」と聞いた映画をレンタルして見ると
そこには自分とそっくりな俳優が映っていました
その日から、その”そっくりな男”に憑りつかれてしまいます
映画のエンドクレジットに流れるキャスト名から
インターネットで男の芸能事務所探し出し、訪ねてみる
そこでフロントから”そっくりな男”宛ての封筒を受け取ります
”そっくりな男”の名はアンソニー(ジェイク・ギレンホール)
封筒の中の手紙の住所に行き、電話を掛ける
しかしアンソニーは不在で、出たのは奥さんのヘレンでした
突然知らない男から電話がきて、顔も声もそっくりだから会いたい
と言われたら誰でも不審に思うはず
しかもアンソニーには浮気疑惑があるんですね(笑)
ヘレンは誰からの電話なのか(浮気相手の夫かも)どうしても知りたい
ネットでアダムの勤める大学を探し出し、会いに行ってしまいます
すると目の前に現れたのは、夫とそっくりどころか、夫そのもの
ヘレンがアンソニーにそのことを話すと
アンソニーもアダムが気になりだします
ふたりはホテルの一室で落ち合うわけですが
一卵性双生児でもない、ただのそっくりさんでもない
アダムはアンソニーがドッペルゲンガーかも知れないと気づきます
もしそうならどちらかが死ぬ
もう二度と会わないと部屋を飛び出しますが
今度はアンソニーがアダムに憑りつかれてしまう
そしてアダムの恋人メアリーの虜になってしまう
メアリーと寝るため”もう二度と現れない”ことを条件に
アダムと一晩入れ替わる
一方のアダムもアンソニーの高級マンションに行き
「鍵をなくした」と管理人に部屋を開けてもらおうとすると
管理人が奇妙な話をし始めます
楽しかったこと、鍵の話、また誘って欲しいこと
アンソニーがメアリーと激しいセックスを楽しんでいる時
アダムも妊婦のヘレンから誘惑されていました
だけど女は騙せない(笑)
ヘレンは指輪がないことで彼が夫でないことに気付き
メアリーは指輪の跡を見逃さなかった
逆上したメアリーとアンソニーは車中で喧嘩になり交通事故死してしまう
翌朝、事故のニュースの流れるラジオをそっと消すアダム
そしてアンソニーの上着から、彼が渡した封筒に入った鍵を見つける
「今夜は遅くなる」とヘレンに告げ、寝室を覗くと
そこに居たのは巨大蜘蛛の姿をしたヘレンでした
意味わかんなかったんですけれど(笑)
いろいろな解説を読んで私なりの解釈はこう
最初の秘密クラブで踏み潰される蜘蛛は
性欲を我慢できない男たちの、妻の嫉妬や怒りを消し去りたい願望
中盤に登場するエイリアンのような巨大蜘蛛は
”糸と蜘蛛の彫刻家”と呼ばれるルイーズ・ブルジョワの代表作
「ママン」(母親の化身)をイメージ
キリスト教で蜘蛛は「罪深い衝動」(浮気)
ユングの心理学の蜘蛛は「縛りつける」(束縛)
「Enemy」(=敵)は自分をコントロールする敵は自分自身ということ
アダムは幼い頃から母親(イザベラ・ロッセリーニ)に抑圧と支配され
その反動で役者を目指しますが売れず
妻の妊娠をきっかけに役者を諦め
大学の歴史講師として働くようになります
しかし影ではSMクラブを経営し(高級マンションに住んでいる)
昼間は講師として働き、夜は質素なアパートで
美人のキャリアウーマンと情事を楽しんでいました
アダムは妻に浮気を隠すため
無意識にドッペルゲンガー作り出していたのです
しかし蜘蛛(妻の嫉妬)は身動きが取れなくなるほど
巨大に膨れ上がっていました
でも、イチバンお気の毒だったのはメアリーよね
【解説】シネマトゥディより
ノーベル文学賞作家でポルトガル出身のジョゼ・サラマーゴの小説を実写化したミステリー。至って普通の日々を送ってきた教師が、ある映画に自分と酷似した男が出ているのを見つけたことから思わぬ運命をたどっていく。メガホンを取るのは、『灼熱の魂』『プリズナーズ』などのドゥニ・ヴィルヌーヴ。キャストには『ブロークバック・マウンテン』などのジェイク・ギレンホール、『マイ・ファミリー/遠い絆』などのメラニー・ロランら実力派が集う。全編を貫く不穏なムード、幻惑的な物語、緻密な映像が混然一体となった世界観に引きずり込まれる。
何も刺激のない日々に空虚なものを感じている、大学で歴史を教えているアダム・ベル(ジェイク・ギレンホール)。ある日、何げなく映画のDVDを観ていた彼は、劇中に出てくる俳優が自分自身とうり二つであることに驚く。彼がアンソニー・クレア(ジェイク・ギレンホール)という名だと知ったアダムは、さまざまな手を尽くして彼との面会を果たす。顔の作りのみならず、ひげの生やし方や胸にある傷痕までもが同じであることに戦慄(せんりつ)する。