ファーザー(2020)

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原題もThe Father」(父)

認知症の親、またはパートナーの介護の苦労を描いた作品は多くありますが

認知症になった人間側から見える世界を描いているのは珍しい

しかも自分も認知症を患ったかのように疑似体験できる

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顔が判断できなくなる

記憶の時系列がばらばらになる

どこにいるのか判らなくなる

本人は自立していると思ってる

「盗まれた」「殴られた」「意地悪された」などの被害妄想

現実に虐待されいるかも知れないという怖さ

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当然家族は仕事やプライベートに支障をきたし

振り回され、疲れ果て、介護施設に入居させる以外

穏やかな日々を取り戻す方法はなくなってしまいます

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本作では離婚歴のある娘アンに恋人が出来、彼とパリで暮らすため

80歳になる父親アンソニーのためホームヘルパーを雇います

しかし父親はヘルパーが時計を盗んだとかなんとか

散々嫌味を言って辞めさせてしまうのです

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次に雇ったヘルパーローラは、アンソニーが可愛がっていた

アンの妹で画家のルーシーに似ていると言って上機嫌

タップダンスまで披露します

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なぜルーシーは会いに来ないのかという質問に

複雑な心境が顔に現れるアン

妹は交通事故で死んでしまっていたのです

それさえも忘れてしまったファーザー

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自分の家だと思っていたらアンの家だった

しかも離婚したはずのアンの夫と同居している

記憶と、目の前に見えるものがばらばら

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気付けばそこは介護施設の部屋のなか

アンはどこにいるとスタッフのキャサリンに訪ねると

アンパリに住んでいると絵葉書を見せ、時折会いに来ているという

ドアの向こうにいるビルという男は、アンの夫のポールではないか

キャサリンは、なにがどうなっているか迷うアンソニーをあやし

散歩に行こうと誘うのでした

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アンソニー・ホプキンスの名演もさることながら

過剰に演出していないのが功を奏し、よりリアルな出来栄え

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何が真実かわからなくなる痴呆症患者の不安を学ぶのに

初任者研修、看護学校や福祉専門学校の授業で見せるのも

いいかと思います





【解説】ウィキペディアより

監督はフローリアン・ゼレール、主演はアンソニー・ホプキンスが務めた。本作はゼレールが2012年に発表した戯曲『Le Père 父』であり、彼の映画監督デビュー作でもある。

本作は批評家から絶賛され、特にホプキンスの演技に対して惜しみない賞賛が送られている。

本作は第93アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、このうち主演男優賞(アンソニー・ホプキンス)と脚色賞を受賞した。

アンは80歳になった父親、アンソニー認知症の兆候が見え始めたのを心配していた。アンソニーにヘルパーを付けようとしたアンだったが、気難しいアンソニーは難癖を付けてはヘルパーを追い出す始末だった。しかし、アンソニーの病状は悪化の一途を辿り、記憶が失われていくだけではなく、自らが置かれた状況すら把握できなくなっていった。困惑するばかりのアンソニーは苛立ちを募らせ、アンに当たることもあった。アンはそんな父親を懸命に支えていたが、気力と体力は消耗するばかりであった。