原題も「The Father」(父)
認知症の親、またはパートナーの介護の苦労を描いた作品は多くありますが
認知症になった人間側から見える世界を描いているのは珍しい
しかも自分も認知症を患ったかのように疑似体験できる
顔が判断できなくなる
記憶の時系列がばらばらになる
どこにいるのか判らなくなる
本人は自立していると思ってる
「盗まれた」「殴られた」「意地悪された」などの被害妄想
現実に虐待されいるかも知れないという怖さ
当然家族は仕事やプライベートに支障をきたし
振り回され、疲れ果て、介護施設に入居させる以外
穏やかな日々を取り戻す方法はなくなってしまいます
本作では離婚歴のある娘アンに恋人が出来、彼とパリで暮らすため
しかし父親はヘルパーが時計を盗んだとかなんとか
散々嫌味を言って辞めさせてしまうのです
次に雇ったヘルパーローラは、アンソニーが可愛がっていた
アンの妹で画家のルーシーに似ていると言って上機嫌
タップダンスまで披露します
なぜルーシーは会いに来ないのかという質問に
複雑な心境が顔に現れるアン
妹は交通事故で死んでしまっていたのです
それさえも忘れてしまったファーザー
自分の家だと思っていたらアンの家だった
しかも離婚したはずのアンの夫と同居している
記憶と、目の前に見えるものがばらばら
気付けばそこは介護施設の部屋のなか
アンはどこにいるとスタッフのキャサリンに訪ねると
アンパリに住んでいると絵葉書を見せ、時折会いに来ているという
ドアの向こうにいるビルという男は、アンの夫のポールではないか
散歩に行こうと誘うのでした
アンソニー・ホプキンスの名演もさることながら
過剰に演出していないのが功を奏し、よりリアルな出来栄え
何が真実かわからなくなる痴呆症患者の不安を学ぶのに
初任者研修、看護学校や福祉専門学校の授業で見せるのも
いいかと思います
【解説】ウィキペディアより
監督はフローリアン・ゼレール、主演はアンソニー・ホプキンスが務めた。本作はゼレールが2012年に発表した戯曲『Le Père 父』であり、彼の映画監督デビュー作でもある。
本作は批評家から絶賛され、特にホプキンスの演技に対して惜しみない賞賛が送られている。
本作は第93回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、このうち主演男優賞(アンソニー・ホプキンス)と脚色賞を受賞した。
アンは80歳になった父親、アンソニーに認知症の兆候が見え始めたのを心配していた。アンソニーにヘルパーを付けようとしたアンだったが、気難しいアンソニーは難癖を付けてはヘルパーを追い出す始末だった。しかし、アンソニーの病状は悪化の一途を辿り、記憶が失われていくだけではなく、自らが置かれた状況すら把握できなくなっていった。困惑するばかりのアンソニーは苛立ちを募らせ、アンに当たることもあった。アンはそんな父親を懸命に支えていたが、気力と体力は消耗するばかりであった。