小さな兵隊(1960)

「自由と感じ 幸せなのか 幸せを感じ 自由なのか」

「写真が真実 だとすれば 映像は24倍真実」

ジャン=リュック・ゴダールの「勝手にしやがれ」に続く長編第2作目

原題は「Le Petit Soldat」(小さな兵士 )

 

ゴダール曰く「リトル・ソルジャー」は

鏡に映る自分の顔が(自分が内面的に思っている)自分の顔と

一致しないことに気づく男の物語ということ

その通り作中では、多くの鏡や窓ガラスに

主人公の姿が映し出されます

とはいえ、内容はあくまでゴダール視点(笑)

「何か音楽は?バッハはどう」
「遅すぎる バッハは朝8時の音楽だ」
モーツァルトは?」
「早すぎる あれは夜8時の音楽」

ごちゃごちゃと鬱陶しいゴタクを並べ

カメラ越しにアンナ・カリーナを口説くのを

延々と見せつけられるというもの

なので全く話が進まない(笑)

とはいえアンナ・カリーナの愛くるしい表情と

ヌーヴェルヴァーグを支えた名カメラマン

ラウル・クタールポートレートのように素晴らしいショットのおかげで

最後までは見れます(笑)

1958年、アルジェリア戦争

フランス軍の脱走兵、ブリュノ・フォルスティエは報道カメラマンを装い

スイスのジュネーブにいました

そこでデンマーク娘のヴェロニカ(アンナ・カリーナ)を友人に紹介され

ひと目で彼女を気に入り、撮影することを引き受けます

ブリュノは(政治的信念はないが)フランスのテロ組織

OAS(秘密軍事組織)のエージェントとしても活動していました

二重スパイであることを疑われたブリュノは

(ブリュノは知らなかったが、ヴェロニカはFLNに協力していた)

FLN(アルジェリア民族解放戦線)アルジェリアの独立を支持する

ラジオ・ホストのパリヴォダを殺すよう命じられます

ブリュノは断り、ヴェロニカとブラジルに逃げる計画を立てますが

軍隊を脱走した弱みと、反逆者としてフランスに送り返すと脅され

暗殺を引き受けるしかありませんでした

しかしブリュノはバリヴォダに銃を向けることを何度も躊躇し

結局殺すことが出来ませんでした

さらにパリヴォダの命が狙われていることを知ったアルジェリア人に捕らえられ

激しい拷問を受けることになります

FLNを裏切った)ヴェロニカの手引きにより

拘束されている部屋の窓から飛び降り逃げたブリュノですが

フランス人はブリュノを利用するためと

FLNの隠れ家を聞き出すためヴェロニカを誘拐

ヴェロニカを救い、国外逃亡するためのパスポートを手に入れるため

ブリュノは再びパリヴォダの暗殺を引き受けることにします

ブリュノは暗殺に成功、しかしその直後

ヴェロニカが拷問中に死んだことを知らされるのでした

本作は1962年のアルジェリアの独立と、OASFLNとの停戦から

さらに半年待たなければ公開できなかったそうです

それが逆に良かったと思います

ゴダールは次作「女は女である」で高い評価を受け

アンナ・カリーナは国際的な人気女優となりました

もしこっちが先に公開されたら、ゴダール一発屋と評され

10年は干されていたかも知れません(笑)



【解説】映画.COMより

勝手にしやがれ」で鮮烈な長編デビューを果たしたジャン=リュック・ゴダール監督が後にパートナーとなるアンナ・カリーナを初めてヒロインに迎え、アルジェリア戦争を題材に撮りあげた長編第2作。
アルジェリアがフランスの植民地支配からの独立を目指して戦ったアルジェリア戦争の時代。カメラマンの青年ブリュノは、友人の紹介で出会った女性ヴェロニカに一目ぼれする。実はブリュノにはOAS(秘密軍事組織)のスパイという裏の顔があったが、組織から命じられたジャーナリスト暗殺を拒否したために追われる身となってしまう。
OASFLNアルジェリア民族解放戦線)が実名で登場し、両組織による拷問を批判的に描いたことで上映禁止となり、完成から約3年後の1963年にようやく公開された。

1960年製作/88分/フランス
原題:Le Petit Soldat
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
日本初公開:1968年12月31日