ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015)



原題は「ELSER」(エルザー=主人公の名字)

1939118ミュンヘンのビアホール“ビュルガーブロイケラー”で

ヒトラー暗殺を企てた「ビュルガーブロイケラー爆発事件」の単独犯


グオルク・エルザーは音楽とダンスが得意で、女好き

優柔不断で共産思考寄りなプロテスタント

そんなひとりの男が精巧な時限爆弾を作り

ミュンヘンで行われる恒例の記念演説でヒトラーを暗殺しようと計画




しかしヒトラーが演説を13分早く切り上げてしまったため

爆破は成功するも、暗殺は失敗

グオルクは捕らえ、当然拷問されることになります


当然、拷問も、処刑も覚悟のうえの行為でしょう

グオルクの頭の中は彼が1930年代を過ごした

故郷の情景が映し出されます




グオルクは、インテリジェンスな雰囲気があるのでしょう

女性を落とすのはお手のもの(笑)


そんなモテ男が本気になったのが、旦那からDVを受けている人妻エルザ

エルザが虐待された傷を舐める、若干変態(笑)

同時に共産思考にかぶれてはいくものの

共産党員とは少し違い、自分の主義主張をもつタイプ




ナチスの無謀な他国への攻撃や、フランスやイギリス参戦のニュースを聞き

多くの人々が犠牲になるのを阻止するには


ヒトラーと軍の最高司令部を抹消するしかない

そこに爆発物を作れるという職場環境が偶然にも重なり

グオルクは完璧な時限爆弾を作り出すのです




しかしナチスの刑事警察(クリポ)の幹部たちは陰に黒幕がいると信じ

なんとかグオルクから聞き出そうと、恋人エルザを連行して来ます


尋問シーンで記録係でタイプライターの無言の女性が登場しますが

ヒルシュビーゲル監督はこの女性こそが

「当時のドイツという国を象徴」していると語っているそうです




何も言わず、体制支持派なのか反体制派なのかも分からない

たとえ間違ったことでも、命じられたまま淡々と仕事をこなし

政権の一部として機能するだけ、それが当時の多くのドイツ国民の姿

しかし彼らも生きるために、家族のために、そうするしかなかったのです


そうして私的にもうひとり注目したのは

グオルクを尋問したひとり、ネーベ親衛隊中将




ユダヤ人やパルチザンの人々を大量虐殺したにもかかわらず

やがて反ヒトラー派になり1944720ヒトラー暗殺計画の失敗

1945321ピアノ線絞首刑になった人物

一方、グオルクが処刑されたのは194549


なぜネーベが反ヒトラーになったのか

なぜグオルクが処刑されるまで5年以上かかったのか




そこらへんの内部事情もわかると

反戦映画としての共感度も高まったかも知れません


グオルクが頭の良い理想主義者であることはわかりますが

人間として共感できるタイプではありませんので

(変態として語ればまた別ですけど 笑)




いまだにグオルクに「反逆者」のレッテルを貼る人々も

ドイツ国内では多くいるといること

そしてメルケル首相にいたっては、2014年にグオルクを評価したそうです



【解説】allcinemaより

ヒトラー ~最期の12日間~」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が、1939118日にミュンヘンで起きたヒトラー暗殺未遂事件の知られざる真実の物語に迫るドラマ。主演は「白いリボン」のクリスティアン・フリーデル、共演にカタリーナ・シュットラー、ブルクハルト・クラウスナー。
 1939118日、ドイツ。ミュンヘンのビアホールでは、ヒトラーによる毎年恒例のミュンヘン一揆記念演説が行われていた。やがて悪天候のため、ヒトラーは予定より早く演説を切り上げ退席する。その13分後、会場に仕掛けられた時限爆弾が爆発し、8人の犠牲者を出す。実行犯として逮捕されたのは、ゲオルク・エルザーという36歳の平凡な家具職人だった。ヒトラーは、エルザーの背後に何らかの大がかりな組織があると確信し、秘密警察ゲシュタポに徹底した捜査を指示する。ところが、どんなに過酷な取り調べにも、単独犯との主張を曲げないエルザーだったが…。