テス(1979)


オープニングの最後に現れる

to Sharon」(シャロンにささぐ)の文字

これは気が付かなかった

 

ナスターシャ・キンスキー(当時17歳)はシャロン・テートと似ている

ドイツ人で英語がまだ苦手だったキンスキーがテスを演じる事に

周囲からかなり反対があったそうですが

 

ポランスキーにとってはキンスキーとの出会いのほうが重要で

原作云々は後からついてきたものなのでしょう

 

牧師から貴族の末裔だと知らされた父親によって

親戚だと名乗りダーバヴィル家に奉公にやられてしまうテス

 

の赤、ピンクの薔薇、そしてテスの美しさ

薔薇の棘が痛いというテスに「美しさには代償がいる」というアレック

不幸を暗示するようなその言葉通り

犯され、情婦にさせられ、生まれた子は死んでしまいます

 

これが世渡り上手な女なら美貌を武器に男たちを手玉に取り

セレブな生活と浮気を満喫したのでしょうが

 

テスには信念があって、嘘が付けない

でも貧しくてお金が必要だという現実との板挟み

 

初めて愛を知ったエンジェルには

過去を打ち明けたとたんに捨てられてしまう

男の処女愛の残酷

 
 
それなのに突然分別もなくテスに会いに行くエンジェル

それはテスをさらなる破滅へ向かわせます

 

テスがストーン・ヘンジで眠るラストは

(舞台がフランスなので)原作にないものだと思いますが

 

シャロンキリスト教誕生前の世界へあらためて葬りたい

そんなポランスキーの願いがあったのではないでしょうか

 
 
そして何より、ジェフリー・アンスワースと

ギスラン・クロケのカメラの素晴らしさ

過激な映像なしに、ここまでエロスの描写成り立たせ

手腕に唸ります
 


【解説】allcinemaより

 文豪ハーディの名作を、ポランスキーが英国ロマンの薫りふんだんに映像化した大作メロドラマ。19世紀末、ドーセット地方の貧農の娘テス(キンスキー)は遠縁のダーバビル家に奉公に出される。その息子にかどわかされ私生児を孕んだ彼女だが、実家に戻って生んだ子はわずか数週間で死んでしまう。後に働きに出た農場で牧師の息子(ファース)と美しい恋に落ち結婚するが、テスの過去を初夜に知った彼はそのまま外国に去っていく。流転の人生の果てに再び彼とめぐりあうテスだが、もはや新たな選択は破滅を意味した……。誘惑の苺に奮いつく唇の艶かしさ、野卑な農婦の中で際立つ清楚さ、テス=キンスキーの美しさが多くを担う作品だが、P・サルドのスコア、G・アンスワースのキャメラともに流麗にして甘美。珍しく風景に大いに語らせるポランスキーの演出作法も堂に入ったもので、ラスト近く、度々映し出されるストーンヘンジの崇高なシルエットが意味ありげだ。