原題は「The Desert Fox: The Story of Rommel」(砂漠の狐:ロンメルの物語)
第二次世界大戦中、捕虜となったイギリスのデズモンド・ヤング准将が
ドイツ軍元帥エルヴィン・ロンメルに命を助けられたことに感動し
彼の業績とその死について調査した手記「砂漠の狐ロンメル」が原作
ロンメル夫人が制作顧問として参加し、ヤングが本人役で出演
作中でジェームズ・メイソンが着ている軍服は
ロンメルが実際に着用していたもの(軍服マニアにはたまりませんな)
騎士道精神をもって捕虜に対しては国際法を遵守する
立派な司令官でありながら、第三帝国の犠牲者になったと
本作が”ロンメル神話”の創造に重要な役割を果たしたそうです
一方でヘンリー・ハサウェイは「ロンメル軍団を叩け」(1971)
という作品も撮っていますが
こちらは残念なことにロンメルの戦車隊はただの絵
しかも叩くんじゃなくて、補給を断ったエピソードを描いた
ちょっとがっかり映画(笑)
ロンメル元帥(ジェームズ・メイスン)は
北アフリカ戦線におけるエル・アラメインの戦いで
弾薬と燃料の欠乏のため、連合軍の攻撃に堪えかね後退を決意します
状況がいかに絶望的であるにもかかわらず
「撤退などありえない」(どこかで聞いたセリフ 笑)と許しませんでした
(その2日後、ロンメルは総退却命令を出し
ドイツアフリカ軍団にとって初めての敗北となります)
持病でベルリンに戻ったロンメルに、旧友のシュトローリン博士は
「ヒトラーを退位させないとドイツは危ない」と主張します
しかしその時はまだ、ロンメルはドイツの敗北を信じることができませんでした
総司令官のゲルト・フォン・ルントシュテット元帥との作戦会議で
ヒトラーがロンメルの意見など聞き入れる気がないことを知ります
連合軍がノルマンディーに上陸してくるとロンメルが予想していたのに対し
ルントシュテットはカレー上陸を予想し
1944年、連合軍はノルマンディに上陸
同じ頃、反ナチ派によるシュタウフェンベルク参謀大佐主導の
総統暗殺が計画されますが未遂に終わり
前線へ赴く途中狙撃され自宅で療養中だったロンメルは
計画への関与を疑われ、やってきた総統の使者から
名誉の死か
軍法会議を望んで反逆罪で死刑となり、家族を生命の危険にさらすか
どちらかを選ぶように迫られます
「私は軍人であり、命令に従う」 と
ロンメルは元帥の制服のまま、車中で毒を仰いで自決したのしたのでした
地位と凄みだけで部下を従わせるヒトラーには
いまの日本で上級国民と呼ばれる人々と同じものを感じてしまいます
国のトップのご機嫌取りたちが国を最悪の結末へと導き
それを止めようとする人々は皆抹殺されていく
国が変わっても、時代が変わっても
政治は変わらないやるせなさ
だから今でもロンメルのようなタイプの軍人が人気があるのでしょう
名前(デザート・ロンメル)が使われているくらい(笑)
戦争の終わらせ方をめぐってのシュトローリン博士との議論や
ヒトラーと信頼関係にあるルントシュテットのやりとりは丁寧に描かれていて
それぞれの考え方が興味深い
軍人として戦争に生きる人間ドラマの佳作で
ヘンリー・ハサウェイの作品の中でも上位の出来に入ると思うのだけど
どの戦争映画のランキングでもお目にかからないのは
現代の映画界におけるユダヤ人の陰謀としか思えません
(でもナチスを悪く描かせたらロシアが一番 笑)
【解説】allcinema より
“砂漠の狐”と異名をとった独軍アフリカ方面司令官ロンメル元帥は、戦況不利となっても強硬策を主張するヒットラーの横暴さを許せず、彼を暗殺する計画に加担。だが、計画は不成功に終わり、ロンメルも主謀者の一員として反逆罪に問われる……。真の愛国者でよき家庭人であるロンメルが、恐怖体制を敵に回し、家庭を危険に晒す苦渋を負っても信念を貫こうとする姿を描き、J・メイソンが背筋のピンと張った、気骨ある芝居を見せる(ダンディな彼にはナチの制服がよく似合う)。H・ハサウェイ演出にしては、実に引き締まって、かつ情感溢れる戦争映画の好編だ。ロンメル夫人にはJ・タンディ。