都会のアリス(1974)

「独り言とは 独りを聞くこと」

原題は「Alice in den Stadten」(都市のアリス)

ストーリーは作中でもステージで演奏している

チャック・ベリーの「メンフィス・テネシー」から着想を得たというもの

ザ・ビートルズほか数々のアーティストがカバーしている名曲

歌詞は、電話交換手にメンフィスまで長距離電話を繋いで

マリーという娘と連絡をつけて欲しいと懇願するもので

最後にマリーがまだ6歳であることが打ち明けられます

(絶対字幕が必要なのに、なぜ入れていないのか)

 

しかし「ペーパームーン」(1973)の試写を見たヴィム・ヴェンダース

「内容がほとんど同じ」という理由で一時は撮影を断念(笑)

後に脚本の後半を書き換え完成したそうです

31歳のジャーナリスト、フィリップ・ウィンターは

アメリカについての物語を書くため数週間の契約旅行をしていましたが

ポラロイド写真を撮っただけで記事は出来上がらず出版社から解雇されます

 

ドイツへ帰国するため車を売り空港に向かうと

ろくに英語を話せない母娘からチケットの購入を頼まれます

ところが航空管制官ストライキのためドイツ行きは欠航

翌日のアムステルダム行きに搭乗するため

3人はモーテルに泊まることにしました

しかし翌朝母親は「アムステルダムで合流しよう」という手紙と

9歳の娘アリスを残して、男の元に戻ってしまいました

たぶん毎度のことなのでしょう

一瞬涙を見せるものの(孤独でいることに慣れている)

アリスは生意気に振舞います

 

ニューヨークを歩くふたりのシーンを水平移動で横から撮るカメラ

ロビー・ミューラーのセンスが冴えわたっています

最初から最後まで素晴らしいショットの連続

(しかも殆ど即興で撮影したという)

アムステルダムに到着しても、母親は現れ

フィリップはアリスの祖母が住むというヴッパータールという都市

祖母を探すためレンタカーで向かうことにしました

だけどアリスは祖母の名前も憶えていません

フィリップとアリスは次第に信頼で結ばれていきますが

祖母は見つからず、お金も底をつきかけてきます

フィリップはアリスを警察に引き渡すことにして

ひとりチャック・ベリーのライブを見に行きました

ホテルに帰ると、アリスが祖母がルール地方にいることが

警察でわかったと戻っていました

やがてアリスが持っている写真と同じ、祖母の家を見つけますが

そこに住んでいたのは知らないイタリア人でした

 

さらに新聞で(フォード監督死去(1973831日)の記事と)

アリスが警察署を脱走し指名手配中だと知ります

フィリップの故郷に向かうためフェリーを待つふたりを見つけた警察官が

ミュンヘンにいる母親と連絡が取れたことを教えてくれます

最初はただのクソガキだと思った

アカの他人の娘を押し付けられ迷惑でしかなかった

でもアリスの面倒を見ていくうちに

愛情が芽生えていくうちに

旅というハプニングの中で強くなり

成長したのはフィリップのほうでした

電車に乗りミュンヘンに向かうふたり

旅もついに終わり

まるで男と女の行く末のように

 

 

【解説】映画.COMより

ビム・ベンダース監督が、ひょんなことから一緒に旅することになった青年と少女の交流をモノクロ映像でつづったロードムービー。ドイツ人の青年フィリップは旅行記を書くためアメリカを旅していたが、執筆に行き詰まり帰国することに。空港で足止めをくらった彼は、同じくドイツへ帰国しようとしていた女性リザと9歳の娘アリスに出会う。リザはフィリップに一方的にアリスを託し、行方をくらませてしまう。仕方なくアリスを連れてアムステルダムへ飛んだフィリップは、アリスの記憶を頼りに彼女の祖母の家を探す旅に出る。「まわり道」「さすらい」と続く、ベンダース監督&リュディガー・フォーグラー主演による「ロードムービー3部作」の第1作。

1974年製作/112分/G/西ドイツ
原題:Alice in den Stadten
配給:東北新社
日本初公開:1988年11月19日