原題は「WONDER WHEEL」 (コニーアイランドにある観覧車のこと)
「女と男の観覧車」というより「疲れた女の観覧車」(笑)
しかもジム・ベルーシは回転木馬の操縦士だし(笑)
ウディにしてはコメディ要素が少なく
モテ男が恋人の娘を好きになってしまうという展開も
ウディの人生の機微(きび=微妙な事情)を
ペーソスに投影しているように感じます
語り手がカメラ目線なのも「アニーホール」「マンハッタン」など
ウディと共同執筆を手掛けたマーシャル・ブリックマン風
ウディお得意の1950年代の美術や衣装は逸品で
遊園地のネオンサインや、夕日、日照り雨といった光と色調の素晴らしさ
カメラはヴィットリオ・ストラーロ
コニーアイランドのダイナーでウェイトレスとして働く
元女優のジニー(ケイト・ウィンスレット)は
回転木馬の操縦係の夫ハンプティ(ジム・ベルーシ)と再婚同士
連れ子のミッチーと3人、観覧車の見える部屋で暮らしていました
そんなある日、ギャングと駆け落ちして勘当されたハンプティの娘
キャロライナ(ジュノー・テンプル)がFBIに情報を提供して
夫から命を狙われているので匿ってほしいとやって来ます
ウェイトレスの仕事と、息子のミッチーの放火騒ぎで忙しいジニーは
難色を示しますが、ハンプティはやっぱり娘が可愛い
キャロライナをジニーの勤めているダイナーで働かせ
宝くじで当てた貯金で夜学に通わせる
そんな時ライフセーバーをしながら劇作家を目指す
ミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と知り合ったジニー
元女優だったジニーは演劇の話でミッキーと意気投合
ふたりは不倫するわけですが
ミッキーは(ウディの投影)決して女性が傷つくことは言いません
自分のことを正直に言い、好きな場所に連れて行く
記念日には安値でも自分の好きだと思うものをプレゼントする
それが彼なりの恋人へのやさしさ
ジニーはハンプティと別れミッキーと結婚したいと思うようになります
(ジニーの最初の夫はジニーに浮気され自殺している)
ハンプティもウディの投影
昔は趣味の釣りに一緒に行ったのに、今では釣りが嫌いだと言う
真面目に働き連れ子の面倒も見ているのに、今ではさらに金を無心する
妻が若い男と浮気しているとも知らず
昔のようにお互いが思いやれる関係に戻りたいと願う
だけどミッキーとキャロライナが知り合ったときから風向きが変わった
キャロライナは頭はトロいけど邪心がない、あるのは正直な自分だけ
ミッキーは何より自分に正直であることを大切にするタイプ
とはいえジニーと恋人同志である以上
いくらキャロライナのことが好きでも友達の関係のまま
自分の誕生日にジニーがあまりにも高価な時計を買ってきたため
「受け取れない」と断ると彼女は狂ったように豹変してしまう
しかもキャロライナから「美味しいピザの店がある」と
紹介されてふたりでディナーに行った夜
ギャングがキャロライナの命を狙い探していると知りながら
あえてキャロライナに知らせなかったジニー
そしてキャロライナは行方不明になります
ミッキーはジニーのしたことを軽蔑し
なぜこんなイカれた女を好きになったのかと後悔する
一方、夫のハンプティはキャロライナがいなくなってしまい
ジニーに昔のような関係に戻って、ずっとそばにいて欲しいと懇願する
いくら冴えない中年のデブでも、大金を盗んでも結局許してくれる
アンタみたいな女にはもったいない男だよ
息子の放火も、不倫も、どちらも火遊び
失敗したら命取り
なのに心にぽっかり空いた穴を埋めるため、何度も繰り返してしまう
ケイト・ウィンスレットの演技は彼女の最高傑作といえるほど圧巻だけど
「ブルージャスミン」(2013)の女神的なケイト・ブランシェットの
壊れっぷりのほうが衝撃的だったかな
【解説】allcinema より
ウディ・アレン監督作品初登場となる「リトル・チルドレン」「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレットが、ままならない日常に疲れ果て、刹那の情事にすがりつくうらぶれた中年女性を演じる哀愁の愛憎ドラマ。共演はジュノー・テンプル、ジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ。
1950年代、ニューヨーク郊外のリゾート地コニーアイランド。遊園地のレストランでウェイトレスとして働く元女優のジニー。今は回転木馬の操縦係を務める粗野な男ハンプティと再婚し、自身の連れ子リッチーと3人で、騒々しい遊園地のそばで暮らしていた。夫婦喧嘩が絶えず、息子も問題ばかりを起こして、苛立ちばかりが募る、満たされない日々が続いていた。そんな中、海岸で監視員のバイトをしている脚本家志望の若者ミッキーと出会い、彼との道ならぬ恋に忘れかけていた夢が再燃していくジニー。ところがある日、ギャングと駆け落ちして音信不通だったハンプティの娘キャロライナが突然現われ、命を狙われていると助けを求めてきたことから、運命の歯車が狂い始めるジニーだったが…。