プロミシング・ヤング・ウーマン(2020)

原題は「Promising Young Woman」(将来有望な若い女性

 

これは、若いころやんちゃしていた男性が見たら

背筋が凍りつくような映画でしょうね(笑)

なので殿方が読むには「取扱い注意」なレビューになっておりますので

ご用心を(笑)

派手な銃撃戦や暴力ではなく、人間心理の落とし穴を突く怖さ

それは自分の社会的立場が失われたり、家族を傷つけられるという

(被害者が受けた)恐怖の疑似体験をさせていくという

ひとことで言ったら「ゆすり」なんですが(笑)

今までにはない、違う角度からのプロットの組み立て方がとにかくうまい

そんなダークなストーリーに対して

信じられないくらいお洒落でセンスのいい

ポップでキュートなビジュアル

よくぞこんな映画を作ったと拍手を送りたい

クラブでひとり泥酔している美女を見て

男たちは誰が持ち帰ることにするか相談しています

そこでひとりの男性が彼女を親切にタクシーに乗せると

自分のアパートまで連れて行き

ベッドに寝かせパンティを脱がせたところで

突然女が起き上がり男を成敗

彼女こそ、男の無自覚な女性差別意識に罰を下す必殺仕置き人!(笑)

しかもその正体は、実家暮らしの30歳で

昼間はカフェで不愛想に働く、キャシー(キャリー・マリガン

そのカフェに医大時代のクラスメートだったという

ライアン(ボー・バーナム)が偶然やってきます

「何故こんな仕事を?」と聞かれ

「こんなところで働いているのはおかしい ?」と返すキャシー

「失言だった、コーヒーに唾を吐いてもいいよ」とジョークを言うと

本当に唾を吐くキャシー

ライアンはそのコーヒーを飲むと、彼女を食事に誘うのでした

実は「学生時代、きみが好きだった」のだと

ライアンは他の男たちと違い、すぐに手を出そうとはしませんでした

キスもセックスもキャシーが納得するまで待ってくれます

やがてキャシーもライアンのことが好きになっていきますが

ある夜、クラブから男を成敗するため出てきたところをライアンに見られ

「彼氏がいたのか」と勘違いされてしまいます

ライアンのため、必殺仕置き人をやめることにしたキャシー

キャシーはライアンと付き合いだし、楽しい日々を送るようになりますが

ライアンから、同じく医大のクラスメイトだったアルが

結婚することを教えられます

SNSでアルの現在と、あの「事件」の関係者を調べるキャシー

そこにはいかにも幸せそうなアルの姿

キャシーはまず今はセレブと結婚し、子どももいて幸せな家庭を築いた

マディソン(アリソン・ブリーを食事に誘います

自分のグラスにはジンジャエール

マディソンのグラスにはシャンペンを注ぎ(薬を入れたと思われる)

彼女の酔いが廻った頃、ニーナの「事件」のことを聞きます

しかしマディソンは事件のことはあまり覚えていない

みんな酔っていたと答えます

やがてマディソンが泥酔して倒れると

キャシーは見知らぬ男にホテルの鍵とお金を渡します

マディソンは自分が泥酔して男に連れ込まれても

ニーナのことを覚えていないと言えるのか

次にキャシーはメイクアップアーティストだと嘘をつき

バンドの撮影に向かう途中なんだけど現場がわからないと

若い女性に道を尋ねます

女性はそれが推しのバンドだと知ると大興奮

その場所まで案内するとキャシーの車に乗り込みます

それからキャシーは通っていた医学部の学部長エリザベス・ウォーカーに

(表向きは)復学するためだと面会をします

そこでもキャシーは ニーナの「事件」について質問します

学部長はそういう訴えは多くあるが

「プロミシング・ヤング・マン」(有望な青年)の将来を

潰すわけにはいかないと説明します

では被害者の「プロミシング・ヤング・ウーマン」の将来はどうなのだと

キャシーは女の子から預かったスマホを学部長に投げつけます

彼女は学部長の娘でした

キャシーは娘を酔っ払った男子学生がいる寮に降ろしたと言い

それでも「プロミシング・ヤング・マン」の将来を守るのかと問います

焦る学部長

愛する女性がレイプされた気持ちがやっとわかったかと

それは全てを失うこと

キャシーは、娘はダイナーで来るはずもない推しのバンドを待ってるだけ

迎えに行くようその場を立ち去るのでした

これは性加害を訴えた女性側に対し

加害者の弁護人が「プロミシング・ヤング・マン」だからという理由で

性犯罪が軽くなるという実話が基になっているそうです

日本の「いじめ問題」でも教育委員会が同じような説明をしていましたね

それだけではない、加害者から謝罪のひとこともありません

すべては「なかった」ことにされてしまう

 

これはぜひ教育委員会様と、老害の糞爺

勘違いのパリピへの推薦映画とさせていただきます

たとえ相手に非があったとしても(ここでは酔っていたことや、露出の多い服)

レイプや、セクハラや、いじめを許す材料になってはいけないのです

よく覚えておけ!

次のターゲットはアルの弁護士だったジョーダン・グリーン

彼は女性の性被害の訴えから、加害者を男性を守る専門家でした

ニーナの「事件」についてジョーダン

被害者の女性のみだらな写真1枚あれば、男性を無実にできると教えます

しかし良心の呵責により、精神を病んでしまい現在は休職中でした

ジョーダンを許したキャシーは、ニーナの母親に会いに行きます

なぜあの夜、ニーナと一緒にいてやらなかったのだろう

ニーナが命を絶ったのは、自分のせいだと

キャシーはずっと責任を感じていたのです

前に進むようニーナの母親に励まされ

ライアンとの関係を再開し、平穏な生活が取り戻せると思った矢先

キャシーの家の前でマディソンが待っていました

キャシーは、マディソンと男は身体の関係はなかった

泥酔したマディソンを見守ってもらっただけと説明すると

マディソンは一旦は安心したものの

男とベットを共にしたことを家族に知れたら今の生活はなくなる

秘密を守ってもらうことと引き換えに

ニーナがレイプされたときの動画が入った携帯を置き

携帯はあげるから二度と連絡しないでと念を押します

動画を再生してみるキャシー

そこにレイプされている画像が写し出されることはありません

ただアルをはやし立て、嘲笑する笑い声だけ

キャシーの表情だけでわかる、そこにライアンがいたことが

キャシーはライアンに会いに行き、動画を見せると

アルの独身パーティーの場所はどこかと詰め寄ります

教えなければ動画を拡散すると

そうしたらあなたは医師の資格も仕事も失うことになる

独身パーティーが行われている別荘の手前で車を停め

ナース姿のストリッパーに変装したキャシーは

大歓迎する男たちに酒を注ぐと

アルを2階に誘いベッドに手錠で縛り付けます

キャシーが名前をニーナだと答えると、叫び出すアル

お友達は朝までこないわ、だって元医学部だもの

どうしたら酒で潰せるかくらい知っている

(ニーナも薬で泥酔させられたのだろう)

手術セットを広げるキャシー

 

手錠を解いたアルは、枕で彼女の顔を覆い窒息死させてしまいます

キャシーの死体を見つけたアルの親友はアルを励まし

「なにもなかった」と、ふたりはキャシーの死体を森まで運び焼きます

キャシーの両親から捜索願いが出され

ライアンのもとにも警察の捜査が入りますが

ライアンはキャシーが異常者だったと嘘をつき

アルとのつながりも隠します

 

だけどキャシーはすべて計算していたのです

なぜカフェのオーナーにハートのネックレスの半分を託したのか

なぜ車をアルの別荘の近くに乗り捨てたのか

履いてきた靴を森のほうに投げたのか

ハイヒールは履かず手に持って歩いたのか

そして弁護士のジョーダンのもとに送られてきた、手紙と携帯

相手は医者だもの、殺すのも遺体をバラバラにするのも隠すのも簡単

自分が殺されるとわかっていたのです

 

アルの盛大な結婚式が行われている最中

何台ものパトカーがやってきてアルは逮捕されます

焼け跡から発見されたネックレスが何よりの証拠でした

そのときライアンの携帯には

キャシーとニーナからのメッセージが届いていました

 

 

【解説】映画.COMより

Netflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子の妻カミラ夫人役を演じ、テレビシリーズ「キリング・イヴ Killing Eve」では製作総指揮や脚本を担当するなど、俳優・クリエイターとして幅広く活躍するエメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本でメガホンをとった長編映画監督デビュー作。ごく平凡な生活を送っているかに見える女性キャシー。実はとてつもなく切れ者でクレバーな彼女には、周囲の知らないもうひとつの顔があり、夜ごと外出する謎めいた行動の裏には、ある目的があった。明るい未来を約束された若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だと誰もが信じていた主人公キャシーが、ある不可解な事件によって約束された未来をふいに奪われたことから、復讐を企てる姿を描く。主人公キャシーを「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガンが演じ、「スキャンダル」「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」や「スーサイド・スクワッド」で知られる女優マーゴット・ロビーが製作を務めている。2021年・第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。

2020年製作/113分/PG12/アメリ
原題:Promising Young Woman
配給:パルコ