ある結婚の風景(1973)

「そんなことは誰にでも当てはまる」

原題は「Scener ur ett äktenskap」(結婚の風景)ですが

「結婚の形而上学(けいじじょうがく)」といったほうが

正しいタイトルの気がします(笑)

イングマール・ベルイマン

公私ともにパートナーだったリヴ・ウルマンとの関係や

自身の経験(結婚だけで5回している)をもとに脚本・監督を務めた

6話からなるテレビドラマのミニシリーズ(1話は約50分)

当時のテレビドラマは予算もスケジュールもタイトで

映画ほど品質が高いと考えられておらず

ベルイマンが手を付けたのは多くの人にとって驚きだったそうです

しかし予想に反してドラマは高視聴率を稼ぎ

スウェーデンだけでなく、ヨーロッパ各国で成功を収め

さらにシリーズの放映後には

ヨーロッパでの離婚相談所を訪れる夫婦の数は倍になり

離婚率上昇に影響を与えたと物議を醸したそうです

その後168分の劇場版に短縮され公開されると

ゴールデングローブ賞外国語映画賞ほか、数々の映画賞を受賞

ウディ・アレンリチャード・リンクレイター

大きな影響を与えたと言われています

(もはやパクってるといっていい 笑)

心理学講師のヨハン(エルランド・ヨゼフソン)と

離婚弁護士のマリアンヌ(リヴ・ウルマン)は

新聞社からの取材を受けるほど理想的で仲睦まじい夫婦

結婚10年目を迎え、仕事も上手くいっている

ふたりの娘にも恵まれ、週末はお互いの両親と食事会

もちろん身体の相性もいいと、はにかむ

でもふたりが席を外した時、記者が隣の部屋を覗くと

そこはとても散らかっていました

記事が新聞に掲載されると

ふたりは親友でもあるピーターとカタリナの夫婦をディナーに招きます

その時ピーターとカタリナが離婚の危機にあることを知ります

しかしビジネスパートナーでもあるピーターとカタリナは

離婚したくても出来きないでいました

そのときからヨハンとマリアンヌの歯車も狂いだします

さらにマリアンヌの離婚相談所にやって来た初老の女性

私は良い妻で、夫は良い夫だった

だけど愛はなかった、子どもたちも愛せなかった

夫に別れたいと告げたところ

子どもたちが成長するまで待ってくれと頼まれた

その時が来たのだと言います

「愛」を確かめたくて妊娠するマリアンヌ

でも実際子どもが生まれたらどうだろう

夜泣きに、ミルクに、おむつ替え、おまけに仕事と家事

マリアンヌはヨハンに相談し中絶を選びます

そしてすぐ後悔する

ヨハンは勤務する大学の同僚のエヴァから

彼の書いた詩が凡庸以下だと評されショック

そこからマリアンヌに突然の告白

ポーラという23歳の愛人がいて

大学を休職し彼女の留学先ロンドンに一緒に行くことにしたと

全く気がつかなかった

でも毎日来るメイドも、親友のピーターとカタリナも

ヨハンが浮気していたことを知っていたというのです

それでも夫を愛してる

行かないでとすがりつくマリアンヌ

去っていくヨハン

数か月後、一旦家に戻ってきたヨハン

マリアンヌにクリーブランド大学の職に就けそうだと喜びを告げますが

マリアンヌは恋人が出来て綺麗になり

部屋は模様替え、ヨハンのものは処分されていました

そこで離婚を持ち掛けられますが、ヨハンは応じることが出来ず

年も考え方も違うポーラとの関係に悩んでいることを打ち明けると

マリアンヌも情に流されヨハンとヨリを戻そうとします

しかし、またすぐに言い争い別れてしまう

とにかく「愛している」のか「愛していない」のか(笑)

「ごめんなさい」「許してくれ」の繰り返し

「愛」は語りすぎてはいけない

相手を知りすぎてもいけないというアンチテーゼ

「神の不在」をテーマにし続けてきたベルイマンですが

こちらは「愛情の不確かさ」

宗教や哲学における「愛」とは、なぜ素直に愛しみ合えないのでしょう(笑)

じつにやっかいなものです

数年後、話し合いの末ついに離婚が確定

財産の分配、娘の養育の書類にサインをもらうため

マリアンヌはヨハンのオフィスに会いに行きます

そこでマリアンヌは、ヨハンを誘惑しヨハンも快楽に溺れますが

おかげで書類にサインできなくなってしまいます

しかし今の恋人のおかげでセックスの楽しみを知った

娘たちも慕っていると聞かされると

すべては妻も娘たちを捨てた自分の身勝手さだとわかっていても

かっての夫に尽くしていた妻はどこへ消えた

彼女の強気で、利口で、幸せそうな態度に憎しみが湧いてくる

ヨハンはマリアンヌを殴って、殴って、殴って、蹴り

離婚届にサインします

それからまた数年、ヨハンはポーラとは違う女性と再婚

エヴァとも不倫しています(若い秘書とも関係がある様子)

にもかかわらずマリアンヌ(も再婚)と結婚20年の記念日に

ふたりきりで海辺のサマーハウスで過ごします

何度別れても、どうしようもなく互いを必要とするふたり

「誰かを愛したことはなかったし、愛されたこともなかった」とマリアンヌは言い

「愛について考えたことは一度もない」と答えるヨハン

 

「だからどうした」と私(笑)

ただ20年の年月を経て、やっとふたりはお互いの理解をもって

冷静に本心を語り合えるようになったんだろうな

そしてリヴ・ウルマンもまた、ベルイマンの遺作まで彼の作品に主演したのよね

 

 

【解説】映画.COMより

ある一組の夫婦の結婚と離婚を通じ人間の真の結びつき、コミュニケーションとは何かを描く人間ドラマで、当初スウェーデン国営放送のもとで各50分6エピソード全5時間のTVシリーズとして企画・製作されたもの。製作はラース・オウェ・カールズベルイ、監督・脚本は「叫びとささやき」のイングマール・ベルイマン、撮影はスヴェン・ニクヴィスト、音楽はオーヴェ・スヴェンソン、編集はイングマール・ベルイマンとシブ・ラングレン、製作デザインはビヨルン・チューリン、衣裳はインガー・ペルソンが各々担当。出演はリヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ビビ・アンデショーン、ヤン・マルムシェーなど。

1974年製作/スウェーデン
原題:Scenes from a Marriage
配給:エキプ・ド・シネマ