危険な関係(1959) 4Kデジタル・リマスター版





戦争だ!

戦争で結構よ



ロジェ・ヴァディム × ジャンヌ・モロー × ジェラール・フィリップ

ほぼ満席、こんなに混んでる恵比寿ガーデンシネマは初めてかも(笑)


ジュラール・フィリップ(36歳)遺作でもあるということで

リアルタイムで当時の彼の映画を見たムービーファンにとっては

感慨深いものがあるに違いないと思います



まだ、このような男女の感情や関係を表現するのは

タブーだったのか。フランスでは上映&輸出禁止


1972年のイタリア映画「ラストタンゴ・イン・パリ」が

5日で上映禁止となったことを考えると

50年代で不倫や調教というテーマは

さすが恋愛に自由なフランスでも、やはり早すぎたのでしょう





それにもかかわらずこのような物語を理解し

自ら脚本を手掛け映画化できたのもプレイボーイと名高い

ロジェ・ヴァディムだからこそできたことだと思います


1952年、18歳になったブリジット・バルドーと最初の結婚、57年に離婚
1958
年、アネット・ヴァディムと結婚、1女をもうけ、60年に離婚
1961
年、カトリーヌ・ドヌーブと付き合い、1男をもうける。
1965
年、ジェーン・フォンダと結婚、1女をもうけ、73年に離婚
1975
年、衣装デザイナーと結婚、1児をもうけ、77年に離婚。
1990
年、マリー=クリスティーヌ・バローと結婚

癌により2000年に72歳で没


「素直な悪女」(1956)での共演がきっかけで

BBジャン=ルイ・トランティニャンと恋に落ち

関係を持ってしまったために

ヴァディムとはBBと離婚したわけですが



ヴァディムはその後もBBといくつも映画を撮っていますし

この作品ではトランティニャンを起用しているうえ

BBの次の妻、マリアンヌ役のアネット・ヴァディムは
メイクから髪型、衣装までBBそっくりにさせています
しかもモローの素肌は背中しかチラ見せさせないくせに

アネット・ヴァディムは全裸ですから(笑)






映画同様、このような特異な恋愛は

普通の人には理解しがたいでしょうし

好みも別れると思います



それでも、まずオープニング・クレジットで使われる

セロニアス・モンクのピアノ・ソロ「Crepusculewith Nellie」には痺れます

音楽の使い方は「死刑台のエレベーター」(1958)に

決して劣らないどころか

アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズは実際に登場して

クライマックスでの「危険な関係のブルース」の演奏

ジャズファンなら嬉しさのあまり、きっと笑いが止まらないでしょう



外交官のヴァルモン(ジェラール・フィリップ)と

妻のジュリエット(ジャンヌ・モロー)は

お互い公認でそれぞれの愛人と情事を楽しみ

相手を夢中させ、そして別れることが、ふたりの絆でした






しかしジュリエットは、自分の愛人だったアメリカ人のコートが

18歳のセシル(ジャンヌ・ヴァレリーと婚約すると聞いて

ヴァルモンにセシルを落とす(処女を奪う)ように指示するのです


自分が清純だと信じている乙女が結婚したらそうではなかった

コートに対する復讐






だけどセシルにはダンスニ(ジャン=ルイ・トランティニャン)という
恋人がいて、コートと結婚する気はありませんでした

なのにまだ学生のダンスニはセシルに結婚を待つように言います



そしてメジェーヴスキー旅行に行ったセシルをヴァルモンは追いかけます

そこで貞淑な人妻マリアンヌアネット・ヴァディム)と出会い

彼女に心底、心を奪われてしまうのです



ジャンヌ・モローは本当に凄い女優ですよね

普通にしてればイングリット・バーグマンに負けない美人顔にもかかわらず

あえて怖い顔にしてみせるのです

美しさに隠れた醜い心とは、こうなのよ、と

さすがのヴァディムも、彼女には手を出せなかったのではと察します(笑)






一方、純真無垢なジュリエット

真面目過ぎて、肉体関係に持ち込むのがとても難しい

しかしいちど貞淑が崩されてしまうと、いとも簡単に調教されてしまう

まさにサディストの心をくすぐるタイプ

破滅へと追い込まれてしまうのです


セシルはヴァルモンの子を宿すも、コートではなく

やはり愛するダンスニとの結婚を望みます

そのことが気に食わないジュリエットは

セシルとダンスニを騙し、ダンスニと愛人になろうとします


だけど、それだけはヴァルモンは許せなかった

ジュリエットがダンスニと逢うことを阻止しようとします

そしてすべてが悲劇となってしまうのです






今でこそ整形でもなんでも
美しくなれる方法はいくらでもあるのでしょうが

それでも私は、年齢によってその人の生活や

生活習慣ははっきり姿形に現れると信じています

年を取ったらその人がどういう人なのか

見た目に出てしまうのです


それでも昂然たるジャンヌ・モローはやっぱり凄い

堂々と顔をあげ、醜くなってしまった顔にも風評にも全く屈しない

何物にも負けない信念を感じてしまいます


彼女はまた「やる」のではないかと思わせるほどに

破滅するまで







確かに↓のallcinemaさんの解説の通り

「今観ればそれほどでもなく、映画としても弱い」のですが


もし私が大資産家で映画製作費を捻出できるなら

パトリス・ルコント、あるいはウォン・カーウァイ

ぜひ現代版リメイクしてもらいたい作品です


ラース・フォン・トリアーだと、ちょっと行きすぎてしまいそう()



世間から見たら歪んでいるでしょう
だけれどこういう愛の形も、きっとあるはずなのです





【解説】allcinemaより

後にスティーヴン・フリアーズミロシュ・フォアマンによっても映画にされる、ド・ラクロの古典的恋愛小説『ヴァルモン』の翻案映画化で、舞台は現代のパリに置き換えられている。外交官ヴァルモン(これが遺作となったG・フィリップ)と妻ジュリエット(J・モロー)は互いに愛し合いながらも、他に恋人を作るのを是とし、その秘め事の報告をしあい、後始末を共にするのを楽しんでいた。妻にはジェリーという愛人がいたが、彼が婚約したことに憤り、夫にその相手セシルの純潔を奪わせた。が、彼女は彼女でダンスニ(J=L・トランティニャン)というもう一人の恋人がいた。ヴァルモンは火遊びの相手のつもりのマリアンヌ夫人に本気で惚れてしまう。これを知った妻はダンスニを情夫にしようとするが、すべてのカラクリを知った彼はヴァルモンを殺す。残された妻は証拠の手紙を焼き捨てようとして顔に火傷を負ってしまう……。当初インモラルな主題ゆえに輸出を禁じられたというが、今観ればそれほどでもなく、映画としても弱い。