原題は「La baie des anges」(天使の湾)
天使の湾とはニースから、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュールの
アンティーブ岬まで広がる地中海の湾のこと
日本では長らく未公開で、初めて公開されたのは
2007年3月のフランス映画祭での特別上映
モナコとカンヌのカジノが制作支援(ギャンブル中毒の映画なのに!笑)
(紹介したのはココ・シャネル、この出会いでふたりは大恋愛に発展)
ギャンブラーの気持ちを表すような高揚感ある音楽はミシェル・ルグラン
パリの銀行で働くジャンは同僚のキャロルから
賭けで大儲けをし新車を購入したと聞かされます
そして無理やりキャロルにカジノに連れて行かれるのですが
ビギナーズラックで大儲け
堅物な時計職人の父親の反対を無視して
休暇を利用しニースのカジノに向かいます
そこで白いスーツに金髪の美女、ジャッキーと出会い
最初は賭けに慎重だったジャンは、たった一晩でお金の感覚が麻痺してしまい
ジャッキーに振り回されてしまいます
ジャンヌ・ モローの、いわゆる「ファム・ファタール」もの
ギャンブル依存症で、わがままで、嘘つきで、思いやりがない
無一文になれば知り合いからお金を借りるし(返す様子はない)
ジャンのお金もジャンに内緒で賭けるし、全部すっても平気な顔
大金が手に入ったら入ったで、お酒を奢って、高級レストランに連れて行って
車を買って、ドレスを買って、高級ホテルではスィートルーム
そして有り金をまたすべてルーレットですってしまう
だけど彼女はそのことを十分に自分でも理解している
ギャンブルのせいで離婚して、子どもの養育権は元夫のもの
カジノに来ている金持ちの男性や、ディーラーに色仕掛けし
運もお金もなければ、駅の待合室で寝る生活
それでもギャンブルをやめられないことを知っているし
ギャンブルで破滅したことにも後悔していない
それなのにジャンはジャッキーに「愛してる」という
一緒にパリに帰って、ギャンブルの世界から抜け出そうとします
ジャンは父親に手紙を書き、書留で5万フランを送ってもらいました
それは父親が真面目に働いてコツコツと貯めたお金だということが
誰にでも想像できます
そうしてジャッキーをカジノに迎えに行きますが
ジャッキーはパリに行くつもりはありません(パリのカジノでは出入り禁止)
が、突然気が変わり
カジノを去っていくジャンを追いかけるという
オープニングと同じ一点消去な構図を用いた
あっさりしすぎるラスト
ハッピーエンドのように見えるけど、到底そうは思えない
ジャッキーの目当ては、ジャンの父親が送ってくれた
なけなしの5万フランを持って再びカジノに戻ること
はたしてジャンはジャッキーの甘い誘惑に勝てるのか
それともこのまま共依存する関係を続けてしまうのか
私はジャンはジャッキーを断れないと思います
挙句の果て、勤め先の銀行で横領でもして
刑務所送りになるでしょう
【解説】映画.comより
「シェルブールの雨傘」などで知られる名匠ジャック・ドゥミの長編第2作。南仏ニースの美しいリゾート地を舞台に、ギャンブルに魅入られた男女の運命を描く。パリの銀行で働くジャンは、同僚に連れられて訪れたカジノで大当たりする。すっかりギャンブルの魅力に取りつかれた彼はニースの安ホテルに居を移し、カジノ通いの毎日を送るように。そんなある日、カジノで出会ったブロンド美女ジャッキーと意気投合したジャンは、彼女とパートナーを組んでますますギャンブルにのめり込んでいくが……。ジャッキー役に「死刑台のエレベーター」のジャンヌ・モロー。日本では2017年の特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福(しあわせ)についての5つの物語」で劇場正式初公開。