リスボン特急(1972)

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原題は「UN FLIC」(警官)
ジャン・ピエール・メルヴィルの早すぎる遺作
享年55歳

始まってすぐ引き込まれる画の美しさ
メルヴィル・ブルー
サングラスに鍔のあるソフト帽子と
トレンチコートのハード・ボイルドスタイル
セリフと無駄を削ぎ落とした演出に酔う

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1台のダッジに四人の初老の男が乗っている
ハンドルを握るルイ・コスタマイケル・コンラッド
助手席には首領株のシモン(リチャード・クレンナ)
後部座席にマルク・アルブイ(アンドレ・プース)と
ポールウェベル(リカルド・クッチョーラ)

閉店まぎわの銀行に客を装って入るシモン右手にはコルト
続いてマルクが自動小銃を構え窓口の出納係から金を奪い
ポールが金庫の金を袋に金を詰させる

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一瞬の隙を見て、出納係が手際よく札束を投げつけ警報ベルを鳴らし
護身用のピストルを取りだしマルクを撃ちます
マルクの自動小銃も火を吹き、出納係が倒れる

4人は車で逃げ、 現金はひとまず空地に埋め
マルクを診療所に連れて行きます、助かる見込みは五分以下
そしてパリの家に戻るのです

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その夜、警察署長のエドアール・コールマン(ドロンさま)は
密告屋のギャビーから、ある組織と税関がグルになり
麻薬をリスボン特急で運ぶという情報を手に入れました
そして「銀行襲撃事件」を報じた夕刊を手に
シモンの経営するナイト・クラブにやってきます

さすがドロンさま、警察署長だからといって
決して善人なわけではなく(笑)

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シモンの愛人カティ(カトリーヌ・ドヌーヴ)を自分の情婦にし
ときどき逢引きしているのです
シモンもそのことを知ってるようで、愛人を金の代わりに
賄賂として渡しているようなものなのでしょう

それからシモン、ポール、ルイの3人は看護人に変装し
捜査から逃れるため、マルクを診療所から連れだそうとしますが
そこの受付嬢がかなりお堅い人間で、いくら書類がそろっていても
危篤で移動できないと言い張ります
その隙に看護婦になりすましたカティがマルクの部屋に行き
マルクに注射を打ち殺してしまいます

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そして次に3人はベンツに乗りボルドーに向かい
そこからヘリで午後7時59分発のリスボン特急を追いかけます
特急では運び屋マチュが麻薬をスーツケースに詰めていました
シモンはヘリから特急に降り、トイレでガウンに着替え
いかにも紳士のように運び屋の部屋に向かう

本当に磁石で鍵が開くのかどうかわかりませんが(笑)
アイディアは逸品

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麻薬の詰まったスーツケースを奪い再びヘリに戻る
銀行強盗もですが、ここらへんの描写がとても丁寧で
どんなトラブルがあっても彼らは冷静で絶対慌てないのです

私生活では全く共通点のない強盗グループなのですが
軍で特殊な訓練を受けた、昔の戦友ではないかと思わせます
そうでもなきゃ、こんな高度なヘリの運転ができるわけがない(笑)

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麻薬を盗まれた運び屋のほうも、悔しがるそぶりも見せずに
麻薬の入っていたスーツケースを車外に投げ捨て
淡々と証拠隠滅を図るリアル、たとえ失敗してもこれがプロの仕事だよ

パリでは死亡したマルクの身元が判明し、ルイを逮捕します
シモンとポールはルイは絶対口を割らないと信じますが

コールマンは密告屋のギャビーを殴りつけ脅したように
彼がいかに理不尽に暴力的な男か知っています
ナイト・クラブにシモンを訪ねるコールマン
シモンはポールに、ルイが喋ったことを
電話で知らせようとしますが間に合いませんでした

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ポールは銃身自殺をし
ホテルの前でスーツケースを持ち、カティの迎えの車を待つシモンを
その場でコールマンは射殺します

助手がポツリと「撃つの早すぎやしませんか」
シモンは丸腰だったのです

その光景をただ呆然と見つめるカティ
彼女がショックなのは愛人が死んだことだけでない
シモンを失うことは毛皮のコートも、宝石も失うこと
コールマンからは何ももらえない
それでも、共犯にもかかわらず彼女を逮捕しなかったのは
コールマンなりの愛しかただったのかも知れません

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メルヴィル×ドロンさまといえば
「サムライ」や「仁義」のほうが評価は高いですが
見やすさと、わかりやすさはこちらが上だと思います

ドロンさまとドヌーブのキスシーンだけでも
ファンを陶然させるのには十分(笑)

シャルル・アズナブール監修のエンディングテーマも評判通りGOOD
列車とヘリが模型なんて気にしません(笑)

 

 

【解説】KINENOTEより
銀行砲撃に端を発し、かたい友情の絆で結ばれながらも、対決の運命に向っていくパリ警察の鬼刑事と、夜のパリに君臨する顔役の二人の男と、その蔭で生きる哀しい女の運命を描く、フィルム・ノワール。製作はロベール・ドルフマン、監督・脚本・台詞・編集は「仁義」のジャン・ピエール・メルヴィル。撮影はワルター・ウォティッツ、音楽はミシェル・コロンビエ、美術はテオバール・ムーリッスが各々担当。出演はアラン・ドロンカトリーヌ・ドヌーヴ、リチャード・クレンナ、リカルド・クッチョーラ、マイケル・コンラッド、ポール・クローシェ、アンドレ・プス、シモーヌ・ヴァレール、ジャン・ドザイなど。