パリの灯は遠く(1976)

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2019年11月9日(土)12:30(開場12:00)~
銀座タクトにて、チェイサーさん主催する「アラン・ドロン生誕84年記念祭」の
今日も勝手に前夜祭(笑)

なんでもドロンさまの主演作のなかで
一番の誇りにしているのがこの作品なのだそうです
原題は「MONSIEUR KLEIN」(ムッシュ・クライン)

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プロット(物語の筋)は「トワイライト・ゾーン」のようで
ドッペルゲンガー的な展開に目が離せない
脚本は「アルジェの戦い」(1967)のフランコ・ソリナス
ここでもナチス協力や、ユダヤ人の迫害を突いていて
フランスの暗部を描くのが得意な作家だと思います

ビリー・ワイルダー作品などでも活躍した
アレクサンドル・トローネの美術も素晴らしい

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1942年、ドイツ軍占領下のパリ
美術商ロベール(アラン・ドロン)は
愛人ジャニーヌ(ジュリエット・ベルト)をベッドに残し
ユダヤ人の男から、先祖伝来という高価な油絵を
安く買いたたいていました

略奪されるより、少しでも金にしたほうがましなのでしょう
ユダヤ人は渋々承諾し、ロベールの部屋を去ろうとしたその時
ドアの前に“ユダヤ通信”が配達されていました

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ユダヤ通信社に行き同姓同名の人違いなので取り消してくれと頼んでも
名簿を警察が没収してしまったという
警察に行けばユダヤ人でない証明を持ってこいという

冒頭で全裸の女性が、目、鼻、口、耳たぶの大きさ
体系に歩き方まで医師によって検査されていたのも
ユダヤ人でないという証明をもらうためだったのです

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ロべールは父親の元に急ぎ
祖父はカトリック系のフランス人、祖母はアルジェ生れと聞き
友人の弁護士ピエール(ミシェル・ロンダール)に証明書を依頼しますが
アルジェもドイツ占領下で書類がいつになるかわからない
手遅れになる前に、医師に証明してもらうよう警告します
しかしロベールは「動物じゃないんだ」「フランス政府を信じる」と
断固診断を拒否するのです

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そんなある日、ロベールのもとに偽ロベールの
恋人と思われる女性から恋文が届きます
偽ロベールが誰か知りたいロベールは、指示通り汽車に乗り
ある城の晩餐会に行きつき、手紙の差出人
フロランス(ジャンヌ・モロー)と会います

ジャンヌ・モローって、不機嫌な顔つきで美人でもないし
スタイルも特別いいわけじゃないのに
気迫だけで特別な女に魅せる
魔女ですよ(笑)

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フロランスはロベールはユダヤ人でないし無神論
極めて教養が高いと言います
ではなぜ、ロベールになりすましユダヤ人として登録したのか
偽ロベールの住んでいたアパートを訪ね
一緒に写真に写っているダンサーの女を探す

ピエールから探偵ごっこはやめろと言われても引き下がれない
やがて警察の手入れで全ての財産は没収され、ジャニーヌも去って行く
ピエールは一刻も早くパリから逃れるように
偽名のパスポートと旅券を渡しますが

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乗り込んだ汽車の向かいの席に座っていたのは探していた写真の女でした
ロベールがロベールの友人だと語ると
彼女はうっかりカンガルー女(アパートの管理人)が
ロベールを匿っていると漏らしてしまいます
あの部屋は空き室ではなかった
もうひとりのロベールはまだあそこにいる

ロベールは汽車から飛び降り、家に戻ります
そしてもうひとりのロベールに電話すると
彼も「君と話をしたかった」と答えるのです
しかしロベールがアパートに到着したとき
もうひとりのロベールは警察に連れ去られた後でした
通報したのはピエール

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真実は謎のまま
だけど偽ロベールが捕らえられたことで、これでもう安心と思った矢先
ユダヤ人の大検挙が行なわれ、ロベールも強制連行されます
そこで「ロベール・クライン!」のアナウンスに
男が挙手(もうひとりのロベールか)

しかも「祖母の出生証明が手に入った」「これで助かる」と叫ぶ
ピエールの声を耳にしながら
人混みに押されたロベールは列車に詰め込まれてしまう

無常に閉まる列車の扉

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この強制連行された人々が密集するスタジアムのような場所で
一度に集められたのがこれだけの人数というのが恐ろしい
当然ユダヤ人だけでなく、いろんな人種が混ざり込んでいる可能性は高く
これが何日間も続いたということなのでしょう

ロベールの頭の中では、油絵を買ったユダヤ人男性との会話が
リフレインしていました

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もうひとりのロベールは最後まで現れない
なのに、まるで彼が目の前に現れたような
鏡を使った素晴らしき演出力

そして人懐っこいシェパード
ドロンさまとシェパードって、ドロンさまと美女より
最高のツーショットかも知れません
似合いすぎる(笑)

 

【解説】allcinemaより
1942年、ナチス占領下のパリ。美術商のロベール・クラインは戦時中にも関わらず儲けた金で優雅な暮らしを送っていた。しかしある日、自分と同姓同名の男が存在する事を知った時から、れっきとしたフランス人であるはずの彼の生活は狂って行く。何と、もう一人のミスター・クラインはユダヤ人だったのである……。ナチスユダヤ人狩りに巻き込まれた男の悲劇を描いた作品で、'76年度の仏セザール賞で作品・監督・美術賞を受賞した。どっしりと重たい作風で知られるロージー監督ならではの素材だが、“自分と同性同名の謎の男を追う”というアイディアが成功、サスペンス映画として一級の仕上りになっている。ラスト・シーンにはかなりのショックあり。