スコルピオ(1973)

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アラン・ドロン生誕84年記念祭」
(2019年11月9日12:30~銀座タクトにて)
今日も勝手に前夜祭(笑)
7作目は原題も「SCORPIO」(さそり座)

アメリカのバート・ランカスター
フランスのアラン・ドロン
そしてイギリスのポール・スコフィールドという
豪華大物キャストを迎えて挑んだスパイ・サスペンス

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当時アメリカでは、CIAが関与した
ウォーターゲート事件」が世間を騒がせ
国家権力への強い不信感が高まっていました

その「ウォーターゲート事件」の主犯格
元CIA工作員ジェームズ・W・マッコード・ジュニアらが逮捕されたその日
マイケル・ウィナー監督は本作のワシントンD.C.での撮影のため
同じウォーターゲート・ホテルに宿泊していて
その出来事は、その後のウィナー監督の演出に影響を及ぼしたそうです

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プロットはジョン・ル・カレのスパイ小説を彷彿させる
悲観的、厭世(えんせい)的なトーン
なのでアクションシーンより、人間ドラマに比重が置かれています
雰囲気の暗い映画が好きな人向きで
痛快な娯楽アクションを望むタイプには退屈かも知れません

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CIAのベテラン諜報部員クロス(バート・ランカスター)と
フランス人の殺し屋ローリエアラン・ドロン)は
パリ・オルリー空港で中近東某国の首相を暗殺し
ワシントンへと向かいます
空港ではクロスの妻サラ(ジョアンヌ・リンヴィル)が夫を出迎え
ローリエはCIAの大物、フィルチョク(J・D・キャノン)と接触
ローリエはパリでクロスも暗殺するよう命令されていましたが
従わなかったのです

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CIA本部長であるマクロード(ジョン・コリコス)は
クロスは二重スパイでソビエトKGBと通じているといいますが
長年クロスと仕事をしてきたローリエは信じられない
依頼を断ります

そこでCIAは、ローリエが(妹の親友)恋人スーザン(ゲイル・ハニカット)と
ホテルでお楽しみ中に踏み込み、麻薬所持の濡れ衣を着せます
そして30年服役したくなければ、クロス殺しを強要するのです

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そこでローリエは、マクロードに2万5千ドルの報酬と
CIAでのクロスのポジションを要求します
でなければクロスから知ったCIAの秘密を暴露すると脅しました
(万が一のため証拠書類を隠している)

一方、身の危険を感じたクロスは、CIAの監視をかわし国外へ脱出
ウィーンへ行きKGB工作員のザルコフ(ポール・スコフィールド)に
匿ってもらうことにしました

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ザルコフはKGBもCIA同様だと嘆いていました
人情も柔軟性もない、独裁主義の若い上司マルキンのことを
スターリン時代に威勢を振るった、本の知識しかない(真の共産主義と違う)
マルクス主義と同じだと皮肉ります

私たちは滅びゆく「恐竜」
たとえ敵国のスパイでも、お互いの国や思想を認め合った時代は終わった
(それが二重スパイというのであれば)消えゆくしかない
昔気質な男の万感の思いと哀しみ

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ローリエはクロスの逃亡先を知っていました
クロスの逃亡方法、経路、全て予想することができます
それくらいクロスは、ローリエにスパイのノウハウの
全てを教え込んでいたのです
早速ウィーンに飛びクロスと対峙しますが、相手もプロ中のプロ
猛追(もうつい)の末逃げられてしまいます

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次にCIAはクロスの妻、サラにかかってくる長距離電話を盗聴
クロスは友人に連絡係を頼み、公衆電話から
「図書館に本を返してほしい」伝えてもらいます
サラが外出し、閉館間際の図書館に入ってから出るまでの姿を追う
CIAの尾行と8ミリカメラによる隠し撮り

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ウィーンでの任務に実質上失敗したローリエ
CIAに戻りクロスの二重スパイの証拠を見せろと迫ります
マクロードが見せたのは、多額の振り込みがされている各国の通帳
ソビエトの空港での、飛行機から降りKGBの重要人物と会う数枚の写真
そしてクロスの妻サラの隠し撮りのフィルム

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その隠し撮りフィルムの、サラが図書館から出てきたところで
ローリエは思わず身を乗り出し、何度も再生を繰り返す

サラの後ろに写っていたのは、ローリエが誰よりも信頼していた
恋人のスーザンの姿でした、サラの連絡係はスーザンだったのです
妹とルームシェアしたのも、自分に近づくため
CIAの調べでスーザンはチェコのスパイだとわかります

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スーザンがサラに渡した何かを探すため、CIAは本物のコソ泥を雇い
サラが隣人(夫はCIA職員)の家のパーティに行っている間に
証拠とを探そうとします
しかしサラがパーティの途中で自宅に戻ろうとしたとき
不審な明かりに気が付き、車に隠していた銃を持ち出し発砲
逆に射殺されてしまいます

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サラの悲報を知ったクロスは、ローリエの予測通り
マクロードに復讐するためワシントンに戻ってきます
頼りになる黒人の仲介役に頼み、ボクシングジムに通うガタイのいい男と接触

そしてマクロードが食事に出かけるため車で出かけると
そのガタイのいい男が車の前に飛び込み、撥ねられてしまう
人々が集まり、動かすな、救急車だ、車は立往生
その騒動の中クロスは現れ、紙袋に隠した銃でマクロードを射殺します

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ローリエはスーザンのアパートの前に車を止め
彼女が姿を現すと、尾行を開始
スーザンの車は、予想通りクロスが待つ場所へ向かいます
そこにローリエが現われる

ローリエは何も聞かず、走り寄ってくる彼女を見つめたまま引き金を引き
クロスも撃ち殺します

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任務を終えたローリエの足許に、野良猫がじゃれつく
その一瞬の隙を、CIAの銃口が襲う
結局はふたりとも組織の捨て駒だったのです
そのときのローリエの目

これこそドロンさまの哀愁
世界一、犬死が似合う男(笑)

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バート・ランカスターもかっこよかった
この時60歳
日本の還暦おじさんも見習わなくてはいけません(笑)

監督のマイケル・ウィナーは料理批評家としても有名
しかしグルメが祟って食中毒に、肝臓病
何度も死の淵を彷徨い
医者が食べるのをやめろと言っても聞かなかったとか(笑)

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映画のタイトルと関係あるのかどうかわかりませんが
ドロンさま、ランカスター、監督ともにさそり座生まれだそうです

 


【解説】MovieWalkerより
ワシントン、パリ、ウィーンを舞台に、巨大な組織CIA(アメリカ中央情報局)に挑む殺し屋の姿を描く。製作はウォルター・ミリッシュ、監督はマイケル・ウィナー、脚本はジェラルド・ウイルソンとデイヴィッド・リンテルズ、撮影はロバート・パインター、音楽はジェリー・フィールディングが各々担当。出演はバート・ランカスターアラン・ドロンポール・スコフィールド、ジョン・コリコス、ゲイル・ハニカット、J・D・キャノン、ジョアン・リンヴィル、ヴラデク・シーバル、メル・スチュアート、バーク・バーネスなど。