「アラン・ドロン生誕84年記念祭」
(2019年11月9日12:30~銀座タクトにて)
今日も勝手に前夜祭(笑)
7作目は原題も「SCORPIO」(さそり座)
アメリカのバート・ランカスター
フランスのアラン・ドロン
そしてイギリスのポール・スコフィールドという
豪華大物キャストを迎えて挑んだスパイ・サスペンス
当時アメリカでは、CIAが関与した
「ウォーターゲート事件」が世間を騒がせ
国家権力への強い不信感が高まっていました
その「ウォーターゲート事件」の主犯格
元CIA工作員ジェームズ・W・マッコード・ジュニアらが逮捕されたその日
マイケル・ウィナー監督は本作のワシントンD.C.での撮影のため
同じウォーターゲート・ホテルに宿泊していて
その出来事は、その後のウィナー監督の演出に影響を及ぼしたそうです
プロットはジョン・ル・カレのスパイ小説を彷彿させる
悲観的、厭世(えんせい)的なトーン
なのでアクションシーンより、人間ドラマに比重が置かれています
雰囲気の暗い映画が好きな人向きで
痛快な娯楽アクションを望むタイプには退屈かも知れません
CIAのベテラン諜報部員クロス(バート・ランカスター)と
フランス人の殺し屋ローリエ(アラン・ドロン)は
パリ・オルリー空港で中近東某国の首相を暗殺し
ワシントンへと向かいます
空港ではクロスの妻サラ(ジョアンヌ・リンヴィル)が夫を出迎え
ローリエはCIAの大物、フィルチョク(J・D・キャノン)と接触
ローリエはパリでクロスも暗殺するよう命令されていましたが
従わなかったのです
CIA本部長であるマクロード(ジョン・コリコス)は
クロスは二重スパイでソビエトのKGBと通じているといいますが
長年クロスと仕事をしてきたローリエは信じられない
依頼を断ります
そこでCIAは、ローリエが(妹の親友)恋人スーザン(ゲイル・ハニカット)と
ホテルでお楽しみ中に踏み込み、麻薬所持の濡れ衣を着せます
そして30年服役したくなければ、クロス殺しを強要するのです
そこでローリエは、マクロードに2万5千ドルの報酬と
CIAでのクロスのポジションを要求します
でなければクロスから知ったCIAの秘密を暴露すると脅しました
(万が一のため証拠書類を隠している)
一方、身の危険を感じたクロスは、CIAの監視をかわし国外へ脱出
ウィーンへ行きKGB工作員のザルコフ(ポール・スコフィールド)に
匿ってもらうことにしました
ザルコフはKGBもCIA同様だと嘆いていました
人情も柔軟性もない、独裁主義の若い上司マルキンのことを
スターリン時代に威勢を振るった、本の知識しかない(真の共産主義と違う)
マルクス主義と同じだと皮肉ります
私たちは滅びゆく「恐竜」
たとえ敵国のスパイでも、お互いの国や思想を認め合った時代は終わった
(それが二重スパイというのであれば)消えゆくしかない
昔気質な男の万感の思いと哀しみ
ローリエはクロスの逃亡先を知っていました
クロスの逃亡方法、経路、全て予想することができます
それくらいクロスは、ローリエにスパイのノウハウの
全てを教え込んでいたのです
早速ウィーンに飛びクロスと対峙しますが、相手もプロ中のプロ
猛追(もうつい)の末逃げられてしまいます
次にCIAはクロスの妻、サラにかかってくる長距離電話を盗聴
クロスは友人に連絡係を頼み、公衆電話から
「図書館に本を返してほしい」伝えてもらいます
サラが外出し、閉館間際の図書館に入ってから出るまでの姿を追う
CIAの尾行と8ミリカメラによる隠し撮り
ウィーンでの任務に実質上失敗したローリエは
CIAに戻りクロスの二重スパイの証拠を見せろと迫ります
マクロードが見せたのは、多額の振り込みがされている各国の通帳
ソビエトの空港での、飛行機から降りKGBの重要人物と会う数枚の写真
そしてクロスの妻サラの隠し撮りのフィルム
その隠し撮りフィルムの、サラが図書館から出てきたところで
ローリエは思わず身を乗り出し、何度も再生を繰り返す
サラの後ろに写っていたのは、ローリエが誰よりも信頼していた
恋人のスーザンの姿でした、サラの連絡係はスーザンだったのです
妹とルームシェアしたのも、自分に近づくため
CIAの調べでスーザンはチェコのスパイだとわかります
スーザンがサラに渡した何かを探すため、CIAは本物のコソ泥を雇い
サラが隣人(夫はCIA職員)の家のパーティに行っている間に
証拠とを探そうとします
しかしサラがパーティの途中で自宅に戻ろうとしたとき
不審な明かりに気が付き、車に隠していた銃を持ち出し発砲
逆に射殺されてしまいます
サラの悲報を知ったクロスは、ローリエの予測通り
マクロードに復讐するためワシントンに戻ってきます
頼りになる黒人の仲介役に頼み、ボクシングジムに通うガタイのいい男と接触
そしてマクロードが食事に出かけるため車で出かけると
そのガタイのいい男が車の前に飛び込み、撥ねられてしまう
人々が集まり、動かすな、救急車だ、車は立往生
その騒動の中クロスは現れ、紙袋に隠した銃でマクロードを射殺します
ローリエはスーザンのアパートの前に車を止め
彼女が姿を現すと、尾行を開始
スーザンの車は、予想通りクロスが待つ場所へ向かいます
そこにローリエが現われる
ローリエは何も聞かず、走り寄ってくる彼女を見つめたまま引き金を引き
クロスも撃ち殺します
任務を終えたローリエの足許に、野良猫がじゃれつく
その一瞬の隙を、CIAの銃口が襲う
結局はふたりとも組織の捨て駒だったのです
そのときのローリエの目
これこそドロンさまの哀愁
世界一、犬死が似合う男(笑)
バート・ランカスターもかっこよかった
この時60歳
日本の還暦おじさんも見習わなくてはいけません(笑)
監督のマイケル・ウィナーは料理批評家としても有名
しかしグルメが祟って食中毒に、肝臓病
何度も死の淵を彷徨い
医者が食べるのをやめろと言っても聞かなかったとか(笑)
映画のタイトルと関係あるのかどうかわかりませんが
ドロンさま、ランカスター、監督ともにさそり座生まれだそうです
【解説】MovieWalkerより
ワシントン、パリ、ウィーンを舞台に、巨大な組織CIA(アメリカ中央情報局)に挑む殺し屋の姿を描く。製作はウォルター・ミリッシュ、監督はマイケル・ウィナー、脚本はジェラルド・ウイルソンとデイヴィッド・リンテルズ、撮影はロバート・パインター、音楽はジェリー・フィールディングが各々担当。出演はバート・ランカスター、アラン・ドロン、ポール・スコフィールド、ジョン・コリコス、ゲイル・ハニカット、J・D・キャノン、ジョアン・リンヴィル、ヴラデク・シーバル、メル・スチュアート、バーク・バーネスなど。