原題は「UN CARNET DE BAL 」(プロムブック)
プロムブックとは舞踏会で踊る男性の順番待ちを記したリスト
ダンスプログラムのこと
ストーリーはシンプルで
夫に先立たれた未亡人が20年前、16歳の時舞踏会でプロポーズされた
男性たちを探し会いにいくオムニバス
映画を見る年齢ってとても大事で(笑)
もし10代か20代前半の若い時見ていたなら
いい年したオバサンが昔の男に会いに行くなんてみっともない、と
思ったかも知れませんが
時代もあるのでしょうが、今は36歳なんてまだまだ若いし女盛り
ダンナが死んで自由になれたんだ(笑)
恋やトキメキを探す旅にでたっていいじゃないと共感するわけです
(私なら過去の男じゃなく、新しい男探すがな)
映像は美しく幻想的で、お伽噺か、夢の中のよう
それがまた、現実とのギャップと喪失感を見事に表現している
センチメンタル・ストーリー
年嵩(としかさ)の夫を亡くしたクリスティーヌ(マリー・ベル)は
遺品の処分中に16歳の時初めての出席した舞踏会の手帳を見つけます
そこには彼女を「一生愛する」と口説いた男たちの名前が書かれていました
子どもはおらず、身寄りもないし、親しい友人もいない
クリスティーヌは夫の執事のブレモンに男たちの住所を探してもらい
訪ねる決心をします
1人目のジョルジュはクリスティーヌの結婚を知って自殺していました
彼の母親は溺愛する息子の死を受け入れることができず
錯乱し20年前から記憶が止まったままでした
二人目のかって有能な弁護士で詩だったピエールは
ナイトクラブのオーナーでギャングのボスになっていました
作曲家だった3人目のアランは、修道士としての誓いを立て
少年合唱団に音楽を教えています
4人目のエリックは、スキー救助隊員として山で暮らしていました
5人目のフランソワは小さな村の市長で、その日はメイドとの結婚式でした
6人目の元医学生ティエリーは、違法な中絶を行い、しかもアルコール中毒
カードマジックが得意な7人目のファビアンは美容師
今でも町の舞踏会(式のダンスサーキット)の常連で
クリスティーヌをダンスに誘います
そこでクリスティーヌは、彼女の記憶の中の舞踏会と違い
踊っているのは平凡で普通の人々
本当の16歳の娘に出会い自分の年齢を突き付けられる現実
夢のような魔法は消え、時が記憶を美化した悲しさを知る
後悔と憂鬱だけを残し屋敷に戻ると
もうひとりの求婚者、8人目のジェラールが
15年前から湖を挟んだ向こう岸に住んでいたことをブレモンから知らされます
クリスティーヌが勇気を出してジェラールに会いに行くと
そこには若き日のジェラールそっくりの息子、ジャックが住んでいました
ジェラールが亡くなり、不動産は売却され、ひとりだと語るジャック
ラスト、正装したジャックがクリスティーヌを義母と説明し
ふたりは一緒に去っていくのでした
ジェラールだけがクリスティーヌを生涯愛していたという結末は
「華麗なるギャツビー」(1974)(原作は1925)(笑)
他の男たちは堕落したり、情けない醜男になっていたのと違って
ジェラールだけは幻想に包まれイイ男で終わるのはウマいけど
20年後に夢に出てきた男たちと再会してみて、イチバンまともだったのは
愛はなかったとか、なんだかんだ言った
自分のダンナだったんだな(笑)
【解説】KINENOTEより
「シュヴァリエの流行児」「望郷(1937)」に次ぐジュリアン・デュヴィヴィエ作品で、彼自ら脚本を書卸したものである。但し台詞は「或る映画監督の一生」のアンリ・ジャンソンがジャン・サルマン及び「女だけの都」のベルナール・ジンメルの協力を得て書いている。出演者は「外人部隊(1933)」のマリー・ベル、「巨人ゴーレム(1936)」のアリ・ボール、「生けるパスカル(1936)」のピエール・ブランシャール、「女だけの都」のルイ・ジューヴェ、「南方飛行」のピエール・リシャール・ウィルム、「ミモザ館」のフランソワーズ・ロゼー、「沐浴」のフェルナンデル、我国には初紹介の名優レイミュという素晴らしい顔触れで、助演者も「シュヴァリエの流行児」のロベール・リナン、「上から下まで」のミリー・マチス、「罪と罰(1936)」のシルヴィー、「どん底」のジェナン、「生けるパスカル(1935)」のアルコヴェー、新顔のベナール等が競演している。キャメラは「赤ちゃん」のミシェル・ケルベがアゴスチニ、レヴァンと共に担任、装置は「リリオム」のポール・コランのデザインによってセルジュ・ピメノフ及びドゥーアルニヨンが設計した。音楽は「巴里祭」「最後の億万長者」のモーリス・ジョーベールが作曲している。