離愁(1973)

原題は「Le Train」(列車)

ロミー・シュナイダー主演作の中でも特に人気で

評価が高いですね

1940年フランス北西部、ドイツ軍の攻撃から逃れるための

疎開列車での出会い

 

それから3年後

男は警察(フランス警察であるが、ナチスの秘密警察下)に呼び出され

レジスタンスとして捕えられた女との共謀を疑われ対面させられます

女が彼の性を名乗る身分証明証を持っていたからです

女を「知っている」と認めたら死刑は確実

彼には妻も可愛い子どももいたのです

だけど男は、知らぬ存ぜぬと言えませんでした

女に駆け寄り抱きしめてしまいます

それは妻子より、女と死ぬことを選んだということ

ポーカーフェイスを貫いていた女の感情は崩壊

号泣のラストを迎えます

これも戦争の悲劇のひとつの形なのでしょう

どうせいつ死ぬかわからない

ならば愛する人と今死のう

1940年5月、ラジオ修理工のジュリアン(ジャン=ルイ・トランティニャン)は

ナチスドイツの侵攻から逃れるために列車で疎開する決意をします

しかし妊婦の妻と幼い娘は客車

ジュリアンは貨車に乗せられ離れ離れになってしまいます

列車は美しいフランスの田園を走っていきますが

ドイツ軍の攻撃は日増しに激しさをまし

駅に停まるたびに待ち構えていた避難民が押しよせてきます

ジュリアンは、列車に乗り込もうと小走りにかけて来た

アンナ(ロミー・シュナイダー)に手をさしのべ

自分が乗っている貨車に乗せてやります

ふたりの間に会話はありませんでしたが

すし詰め状態で身動きできない中寄り添い、互いに好意を抱いていました

アンナの訛りに彼女がスパイだという者もいましたが

彼女はジュリアンに自分がドイツ生まれのユダヤ人であることを

打ち明けます

まだ当時のフランス人には、ナチスによるユダヤ人虐殺の情報は

伝わっていなかったのです

そして旅を続けるうち、貨車の人々との

共同体のような人間模様が描かれていきます

苦しい状況の中でも、なんとか日常らしい生活を工夫しようと

老若男女問わず助け合い、酒を飲み交わし

停車駅で水を汲み、ピクニックもする

服を着たまま井戸で身体を洗うアンナの悩ましい姿

ますます虜になってしまうジュリアン

夜になり、寝ている間に客車と貨車が切り離され

妻子の乗った客車がどこに向かったかわからなくなるジュリアン

アンナは自ら下着を脱いでジュリアンを誘惑

同じ貨車の女がアンナにウィンクする

それから列車が終着駅に到着するまでの数日間

ふたりは愛し合います

同時に攻撃で大勢の人々が死んでいきました

終着駅に着くと、ドイツ人の身元を明かせないアンナのために

ジュリアンは自分の妻と嘘をつき仮の身分証明証を発行させ

職員はこれを大使館にもっていけば証明証がもらえると説明します

ジュリアンは決して浮気するような

妻子を裏切るような男ではなかった

でもこういう男のほうが、本気になったら一途

このままアンナと夫婦として暮らすつもりだったかも知れません

しかし妻が男の子を出産したと知らせを受け

彼が妻の入院している病院を訪問している間に

アンナは姿を消してしまいます

もとの平凡な生活に戻るジュリアン

そして3年後、アンナがレジスタンスの一員で

ロンドンとの連絡員であったことを知らされるジュリアン

高級な靴を履いていたことの意味や

妻として登録した時の伏線がうまく効いています

愛を貫いたふたりはそれでよかったのかも知れない

ただ残された奥さんと、子どもたちのその後を考えると

可哀そうですね



【解説】映画.COMより

第2次世界大戦下のフランスを舞台に、妻子ある男性とユダヤ人女性の愛と運命を描いたラブストーリー。
1940年。ベルギーとフランスの国境近くに住むラジオの修理工ジュリアンは、ドイツ軍の侵攻から逃れるため妻子とともに村を離れることに。妊娠中の妻と子どもは列車の客室に乗せ、自身は家畜車で移動する彼は、ある駅で列車に乗り込もうとする若いユダヤ人女性アンナと出会う。初めは言葉すら交わさないジュリアンとアンナだったが、次第にひかれ合うようになっていく。
主演は「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャンと「夕なぎ」のロミー・シュナイダー。作家ジョルジュ・シムノンの小説を基に、「帰らざる夜明け」のピエール・グラニエ=ドフェール監督がメガホンをとった。「没後40年 ロミー・シュナイダー映画祭」(2022年8月5日~25日/Bunkamuraル・シネマ)上映作品。

1973年製作/101分/G/フランス・イタリア合作
原題:Le train
配給:コピアポア・フィルム