夕なぎ(1972)

原題は「Cesar et Rosalie」(セザールとロザリー)

ひとりの魅力的な女性をふたりの男が取り合ううちに

やがて男同士の友情が芽生えていく・・・というもの

クロード・ソーテは男女の三角関係よりむしろ

ホモソーシャル(対女性やゲイでない、男性間の親密な結びつきのこと)を

描きたかったのかも知れません

ロザリー(ロミー・シュナイダー)は離婚歴があるシングルマザー

通訳の仕事で自立している、知的な美女ですが

アンニュイで優柔不断な態度と、困惑したような瞳

男を振り回す魔性の女

でも決してそんな悪女には見えないんですね

だから男が虜になってしまうんですけど(笑)

金属解体業を営むセザール(イヴ・モンタン)と半同棲生活をしています

セザール(かなり年上)は陽気な人気者で

金を稼ぐ能力もバイタリティもある

なによりロザリーに夢中でした

でも男友達との(賭け事の)集まりにロザリーを付き合わせ

深夜まで酒を用意させたりと

女を自分の召使のように扱う古いタイプでもありました

そんな時、ロザリーの母リュシーの3度目の結婚パーティー

人気バンド・デシネ(漫画)作家でかっての恋人

ダヴィッド(サミー・フレイ)と再会します

ダヴィッドはセザールと違い近代的な考えで

何よりロザリーのことを一番に考えてくれる

たちまち親密な雰囲気になります

若いふたりとの、年の差によるギャップを理解するそぶりを見せながらも

セザールは混乱し、嫉妬に狂いはじめます

突然激怒しロザリーを殴ったり

ダヴィッドのアトリエを破壊したり

とんでもない行動をおこすようになるのです

そのことが逆にロザリーの気持ちを
ダヴィッドに押しやってしまうことになり

ロザリーはダヴィッドと地中海のセット(Sète)に

バカンスに出かけてしまいます

セザールは反省し、ロザリーを取り戻すため

(金の力で)ダヴィッドのアトリエをもとに戻し

彼女がかって家族と過ごした思い出の

ノワールムティエ島(Île de Noirmoutier)の別荘を買い

そこで家族全員、夏を過ごすことを提案します

ロザリーは許しを請うセザールを受け入れ、島にやって来ますが

ダヴィッドを失ったことで鬱になってしまう

そこでセザールはダヴィッドも呼ぶことにするのですが

やがてふたりは一緒に釣りを楽しんだりして意気投合

同じ時間を過ごすようになります

疎外され孤独に感じたロザリーは姿を消してしまうのでした

1年後、(ロザリーを失った傷を共有している)セザールとダヴィッドは

昼食を摂りながら、一緒に暮らす相談をしていました

そこに一台のタクシーが停まると、なんと降りてきたのは

満面の笑顔を浮かべたロザリーでした

一応ハッピーエンドとも思える結末ですが

女王様はふたりの男とともに暮らすつもりなのか

どちらかひとりを選ぶつもりなのか

(原題のタイトルから考えれば、セザールのほう)

また面倒なことが起こりそうな予感です(笑)



【解説】映画.COMより

「すぎ去りし日の……」のクロード・ソーテ監督が、タイプの異なる2人の男の間で揺れ動く女性の愛の行方を描いたラブストーリー。
画家の夫と別れ、通訳の仕事をしながら幼い娘を育てるロザリー。現在は自動車や船の解体業を営む陽気な中年男セザールと恋に落ち、一緒に暮らしている。ある春の日、ロザリーは母の3度目の結婚パーティで、かつての恋人ダビッドと再会する。2人の男から愛を寄せられて苦悩するロザリーだったが……。
「太陽が知っている」のロミー・シュナイダーがロザリー、「恐怖の報酬」のイブ・モンタンがセザール、「うたかたの日々」のサミー・フレイがダビッドを演じた。イブ・サン=ローランが衣装デザインを担当。「没後40年 ロミー・シュナイダー映画祭」(2022年8月5日~25日/Bunkamuraル・シネマ)上映作品。

1972年製作/111分/G/フランス
原題:Cesar et Rosalie
配給:コピアポア・フィルム