
「トムとジェリー」の穴あきチーズ(エメンタールチーズ)のようなフォント
原題の「bugonia」とは
牛の「bous」と、誕生や再生の「gonos」が組み合わさった
「牛の死骸から蜜蜂が生まれる」(転じて死からの再生)という意味だそうです

韓国のSFブラックコメディ「地球を守れ!」(2003) のリメイクということで
今や不条理映画の代名詞ともいえるヨルゴス・ランティモス監督
&アリ・アスタープロデュースのわりには不穏さは控えめ(笑)
わかりやすい内容ではないでしょうか

ほぼ、アンドロメダ星人の陰謀論に染まりきった男と
人間になりすましたアンドロメダ星人に違いないと誘拐されてしまった
大企業の女性CEOとの、全く噛み合わない会話劇なのですが
終盤は血飛沫舞うグロが炸裂します(笑)

趣味で養蜂をしているテディ(ジェシー・プレモンス)は
従弟のドン(自閉症)に
近年働きバチが、女王バチを棄てて大量失踪する原因について
それは人間を監視し自分たちの脳にまで侵入し生活を脅かす
人間に変装したアンドロメダ星人の陰謀だと教えます
テディはそのひとりがミシェル・フラー(エマ・ストーン)という
大手製薬会社のCEOだと言い、ドンと共にミッシェル誘拐を決行
彼女を地下室に閉じ込め

(他のアンドロメダ星人に救難信号を送るのを防ぐため)
頭を剃り、抗ヒスタミンクリームで全身を覆います
目的は(4日後の)月食の日にアンドロメダ星から飛来する宇宙船でやってきた
(月食だと地球の大気圏侵入に気づかれずに侵入できるという理屈)
皇帝と会談するため会わせてほしいというものでした

ミシェルが自分がエイリアンである根拠は何かと尋ねると
「45歳にしては若すぎる」(笑)
(それなら永遠の39歳の私もエイリアンだ 笑)

高学歴でエリートのミシェルは自身の最大限の知見や話術を使って
テディにアンドロメダ星人ではないこと
または、あなたの言う通りアンドロメダ星人よと
イカレ野郎のテディを説得しますが
テディの納得を得られず電気ショックをさせられるハメに

しかしミシェルの高い電圧に対する耐性に
彼女がただのアンドロメダ星人ではなく皇帝の一族だと見なし
(リサイクルショップで買った中古の)ドレスと夕食を用意し
地下室から解放します

そこでミシェルは、難病を患っていたテディの母親サンディが
ミシェルの会社の新薬の臨床試験に参加し
それがもとで母親が昏睡状態に陥ってしまったことを思い出します
つまり今回の犯行は、試験の失敗による補償金が不満だったのね、と

ミシェルの発言にテディはキレ、彼女に殴りかかったととき
今は地元の副保安官で、かってテディのシッターだったケイシーが訪ねてきて
(テディに性的虐待をしていた可能性を臭わせる)
誘拐された製薬会社のCEOの携帯の電源が最後に確認されたのがこの近くなので
何か知らないかと捜査に来ます

ミシェルのために用意したケーキを(スィーツ大好き)保安官にふるまい
その場をやり過ごそうとするテディ
その頃、地下室でミシェルを見張っていたドンは
テディとミシェル両方からの言葉のプレッシャーに耐え切れず
ショットガンで自殺してしまいます

異変に気付いた保安官をテディはうまく丸め込み
養蜂場に連れて行き、スコップで殴ったあとハチの大群に顔を噛ませて殺し

次にドンの遺体を発見したテディはミシェルを殺そうとし
ミシェルは、実は昏睡状態のテディの母親を回復することができる
新薬(解毒剤)がすでに開発されていて
車のトランクの中にある、見た目は不凍液の容器に隠しているのだと
命さながら訴えます

テディはドンの仇だとミシェルの膝蓋骨を強く打ち(脱臼させる)
車から不凍液の容器を発見して病院に急行
母親の点滴バッグに液体を注射するものの、母親の容態が急変
まもなく心電図が平行線を辿り、異変に気付いた看護師たちがやって来ます

その間、ドンの遺体のポケットから鎖の鍵を取り出して逃げようとしたミシェルは
ミシェルと同じように丸坊主にされた遺体の一部が入った多くの瓶や
拷問されたアンドロメダ星人の写真を見つけ
病院から逃げて戻ったテディに「何人殺したのだ」と涙ながらに訴えます

地球にやって来たアンドロメダ星人は
恐竜の絶滅を誤って引き起こしたことへの罪悪感から
自分たちの姿とそっくりの人類と、アトランティスを創造したこと
しかし人類は暴力と地球の破壊を繰り返したため
善良な生物を除いて生命体を滅ぼしますが(ノアの箱舟)
(優勢人種の子孫は)さらなる人類の差別や攻撃性を生み出し
(テディの母親に行った)新薬の臨床試験も、生まれつき欠陥のある人類を
暴力的な性質から遠ざけるための実験の一部だったとミシェルは明かし
自分もいつしか人類の欲望に侵されていたと打ち明けます

それからテディをアンドロメダ星人の会合に参加することを約束し
宇宙船にテレポートするため、ミシェルの会社に向かいます

ミシェルのオフィスに到着したテディは、もし騙された時に自分の身を守るため
自作の(身体にダイナマイトを巻きつけた)爆弾ベストを着ていました
ミシェルは電卓で船を呼ぶ数字(パスワード)を押し
(前回の月食から年月が経っているためなかなか思いだせない 笑)
船へのテレポーターだとテディをクローゼットに押し込めますが
テディが誤ってベストを爆発させてしまい、テディの身体は木っ端みじん
衝撃で気絶したミシェルは救急車で運ばれますが

目を覚ましたミシェルは救急車から飛び降り
再びオフィスに戻り電卓を手にすると
クローゼットに入り船へとテレポートするのでした

なんとテディが言っていたことも
ミシェルが言っていたことも
全部嘘のようで本当だったのです(笑)

ミシェルは真のアンドロメダ星人の皇帝であり
(編み編みの宇宙服がモードすぎる 笑)
仲間のアンドロメダ星人と、人類への実験は失敗したことを結論づけます
ミシェルが(天動説に出てくる平面の)地球のドームを割ると
瞬時に人類は死に、それ以外の動植物はすべて生き残ります
ミシェルは鳥たちが飛び、ミツバチがテディの養蜂場に戻ってくるのを
見つめたのでした
つまりは戦争のない地球の平和を取り戻し、環境を守るためには
人類が滅ぶしかないということでしょうか
かっては自然と共存して暮らしていた民族も、多くいたはずなのに
【解説】映画.COMより
「哀れなるものたち」「女王陛下のお気に入り」などで知られる鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が、これで5度目のタッグとなるエマ・ストーンを主演に迎えて描いた誘拐サスペンス。「エディントンへようこそ」「ミッドサマー」の監督アリ・アスターがプロデューサーに名を連ね、2003年の韓国映画「地球を守れ!」をリメイクした。
世界的に知られた製薬会社のカリスマ経営者ミシェルが、何者かに誘拐される。犯人は、ミシェルが地球を侵略する宇宙人だと固く信じる陰謀論者のテディと、彼を慕う従弟のドン。2人は彼女を自宅の地下室に監禁し、地球から手を引くよう要求してくる。ミシェルは彼らの馬鹿げた要望を一蹴し、なんとか言いくるめようとするが、互いに一歩も引かない駆け引きは二転三転する。やがてテディの隠された過去が明らかになることで、荒唐無稽な誘拐劇は予想外の方向へと転じていく。
エマ・ストーンが髪を剃った丸坊主姿も披露し、陰謀論者に囚われたミシェル役を熱演。彼女を宇宙人だと信じてやまない誘拐犯2人組を、「憐れみの3章」「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のジェシー・プレモンスと、オーディションで抜てきされた新星エイダン・デルビスが演じる。2025年・第82回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。第98回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞ほか計4部門にノミネートされた。
2025年製作/118分/PG12/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ合作
原題または英題:Bugonia
配給:ギャガ