
Googleを開くと自分の検索結果に基づいたおススメが表示されますよね
そのときに出てきたのが
「野村雅夫のムービージョッキー#21『リスボン特急』」
毎週土曜にBS10で放映されている
大阪・京都を拠点に活躍するラジオDJで翻訳家、野村雅夫氏による
「“思い出共感型”映画トーク番組」ということ

昔は解説付きのテレビ映画番組がたくさんありましたが
今では珍しいのではないでしょうか
でも面白かったです
謎だと思っていたことがいろいろ解明されました(笑)
まず冒頭の「警官が人に対して持つ感情は二つしかない 疑いと嘲りだ」
フランソワ=ウジェーヌ・ヴィドック
というテロップ
このヴィドック(1775~1857)というお方
犯罪者から警察のイヌになり、パリ警察の幹部にまで上り詰め
退職後は世界初の探偵になったという伝説的人物で

主人公のコールマン警視は彼をモデルに
監督のジャン・ピエール・メルヴィルが脚本を書いたそうです
それを「サムライ」と「仁義」でタッグを組んでいたアランドロンに
コールマン警視と、ナイトクラブの経営者だが裏の顔は強盗のシモン
どちらを演じたいか選ばせたということ
それまでギャング役が多かったドロンさまは
今までとは違うイメージのコールマン警視を選んだそうです

「16歳で歩兵連隊に入隊したが、軍隊生活に嫌気がさして5年後に除隊する。その際、除隊証明書を受けなかったため、脱走兵として逮捕され入獄する。入獄中に贋造紙幣犯の一味の濡れ衣を着せられ、ブレストの徒刑場で重労働刑に処せられた。それから10年は脱獄と逮捕を繰り返し多数の重罪犯人と知り合い、暗黒社会の裏表の情報・犯罪の手口を詳細に知り、脱獄と変装のプロとなる。出獄するとパリ警察の手先として、徒刑場で得た情報を売る密偵となる。この世界で数々の手柄を立て、ついには国家警察パリ地区犯罪捜査局を創設し初代局長となる。」・・というもの

ドロンさまも、不良少年から海軍に入隊したものの
不名誉除隊させられ、20歳の誕生日は独房の中
その後も裏社会の人間や凶悪犯、ジゴロらと関係を持ち
ポン引き生活をしていたのが、女優のブリジット・オベールとの出会いをきっかけに
まさかの世界的大スターに
ヴィドックに自分と重なるものを感じたのではないでしょうか
おかげで?この映画に出演した後はギャングより刑事役が多くなったそうです(笑)

コールマン警視とシモン(リチャード・クレンナ )がなぜ親友なのか
シモンと彼の強盗仲間、ポール、ルイ、モランがどんな関係かの説明は
一切ありませんが(MIHOシネマによると)彼らは戦友だったそうです
6年ほど前に書いた自分のブログを読み返したら
「私生活では全く共通点のない強盗グループなのですが
軍で特殊な訓練を受けた、昔の戦友ではないかと思わせます
そうでもなきゃ、こんな高度なヘリの操縦ができるわけがない 」
とレビューしていたので、我ながら鋭いなと(笑)

(ふたりの男を行き来する)カトリーヌ・ドヌーブを
使い切れていなかった感があるのは
「男の美学」を追及するメルヴィルにとって
美貌のヒロインは添え物に過ぎなかったのかも知れませんね
当時ドヌーブは妊娠中で、それに配慮したのもあったようです
それでもさすがの映像センス
ドヌーブのナース姿なんて、何度見ても溜息ものでございます (笑)

ツッコミどころは、やはりこの邦題
シモンがパリからリスボンへ向かう夜行列車の中で
大量のヘロインを盗むシーンが、クライマックスのひとつではあるのですが
列車がリスボンに行くわけでもないという(笑)
フランス国内で完結

これは原題の「UN FLIC」(警官・刑事) をそのままだと
「刑事」「デカ」というタイトルの映画が他にもたくさんあったからと
野村氏は予想していました
列車が見るからに模型だとわかるのは
(時代的に特撮の限界もあるけど)メルヴィルが気にするのはそこじゃないと
メルヴィルを擁護していましたね
あんな大きな磁石どこで買ったんだ、は確かに(笑)

印象的なのがポールが自殺するシーン
コールマン警視が一度扉を閉めたのは、奥さんに見せたくなかった
あるいは自分も見たくなかったのではないかと解説していました
私はこの銀行をリストラされた夫を心配する
妻の心情を見事に演じていたシモーヌ・バレールが
映画の中で(ある意味ドヌーブより)重要な役割を果たしていたような気がします
唯一人間らしく、共感できるのが彼女だからです

映画が終了したあと、もう一度名シーンを振り返り
見せてくれるのがありがたいですし、おかげでより記憶に残りやすい(笑)

同じBS10でもジャパネットのほうは無料(広告あり)なので
チェックしておくのもアリですね
問題は録画ばかり溜まって消化しきれないことなんですけど(笑)
【番組詳細】BS10より
『サムライ』や『仁義』でアラン・ドロンとコンビを組んだジャン=ピエール・メルヴィル監督の遺作。友情で結ばれた強盗団のボスと刑事が、その宿命から対決へと導かれてゆく姿を描く。カトリーヌ・ドヌーヴが2人の間で揺れ動く女性を好演。強盗団のボス役には、後に『ランボー』シリーズで上官・トラウトマン大佐を演じることになるリチャード・クレンナ。ヘリコプターを使った列車からの麻薬強奪シーンは手に汗握る迫力。
シモン率いる強盗団が銀行を襲撃し、大金の強奪に成功する。同じ頃、パリでは刑事のコールマンが、リスボン行きの特急列車を使った麻薬密輸が行なわれるとの情報を得ていた。シモンが経営するナイトクラブを訪れるコールマン。実はシモンとコールマンは旧知の仲で、シモンの愛人カティを巡って密かな三角関係にあった。やがて、麻薬密輸の情報を得たシモンは、その横取りを計画。一方のコールマンもその運び屋を追っていた…。