バージニア・ウルフなんかこわくない (1966)

 

原題は「Who's Afraid of Virginia Woolf?」

トニー賞受賞の舞台を映画化したマイク・ニコルズ監督デビュー作

 

バージニア・ウルフとは、イギリスの女性小説家のことで

(「めぐりあう時間たち」(2002)でニコール・キッドマンが演じた)

バージニア・ウルフなんかこわくない」は

ディズニーアニメ「三匹の子ぶた」の主題歌

「大きな悪いオオカミ(The Big Bad Wolf)なんかこわくない」を

バージニア・ウルフ(Virginia Woolf)なんかこわくない」と歌った替え歌で

難解とされるバージニア・ウルフの小説を

理解できなくて馬鹿にされても怖くないという意味

ニューイングランドの田舎にある小さな大学の

歴史学の准教授であるジョージ(リチャード・バートン)と

その妻で学長の娘マーサ (エリザベス・テイラー)の夫婦は

土曜の夜遅く、教授会パーティから不機嫌な様子で帰宅し、口喧嘩をはじめます

さらにマーサはこれから来客があるとジョージに告げます

 

客は新しく大学に赴任してきた生物学者のニック(ジョージ・シーガル)と

ニックの妻ハニー(サンディ・デニス)の若い夫婦でした

第一の難関が、ふたりの罵りあいが

ベティ・デイヴィス「森の彼方に」(Beyond the Forest 1949)

内容に触れ例えていること

まだ物語も始まっていないので(笑)

「森の彼方に」を知らないと、そもそもの喧嘩の原因がわからない

罵詈雑言を夫に浴びせ続ける妻

さらに酒が進むと、若い夫婦も影響を受けいがみ合い

ドラマもサスペンスもなく、ただひたすら言い争う

それが2時間10分、延々と続きます

何も楽しめないし、何を学べばいいのか

これを苦行映画と言わず、なんと言うでしょう(笑)

 

リズは当時34歳でこの醜姿

確かにオスカー受賞に相当する演技かもですが

リズが注目浴びるべきはこの映画じゃないでしょ

宝石のような輝きと、気品があってこそがリズの魅力なのだから

第二の難関は、ジョージとマーサと不在の息子ジム

マーサは息子が16歳の誕生日を迎えるといいます

しかし息子が今どこにいるのか、何をしているのか

死んだのか最初から存在していないのか、ふたりの意見は食い違う

ニックもハニーと結婚したのは、ハニーが妊娠したこと

ハニーが財閥の娘だったからと打ち明けます

大学の給料だけでは満足な研究も、生活もできない

しかし結婚後ハニーのお腹はへこんでしまったと言います

ニックの出世のための政略結婚に痛く共感するジョージ

だけど自分はは23年も勤めて学長どころか、教授にさえなれないと

妻にグダグダと責め立てられている毎日

 

ニックの本音を聞いたハニーは、大量に酒を飲み、とち狂い

ジョージとマーサは、ふたりを車で送ることにしますが

ハニーが突然「踊りたい」と言い出し

ロードハウス(田舎にある食べ物や飲み物を提供する娯楽的な店) に入ります

ジューク・ボックスの音楽でマーサとニックは踊り、親密になっていくと

マーサは(作家希望でもある)ジョージの小説が駄作で

学長の父親が「大学の恥だ」だと出版させなかったことを教えます

 

ジョージは腹いせに、ハニーに「想像妊娠を知ってる」と脅します

(出産に異常な恐怖を抱いているので中絶したのかも知れない)

半狂乱になり店から飛び出してしまうハニー

マーサはジョージを責め

ジョージはマーサが息子の話を持ち出したことを責める

ジョージが精神病院に入院したほうがいいと言うと

怒ったマーサは車にニックとハニーだけを乗せ自宅に戻ります

 

ジョージが徒歩で帰宅すると

玄関前に停めた車でハニーが泥酔して寝ています

二階の寝室ではニックとマーサが身体を重ねていました

ジョージが黙ってその場を去ると

マーサはニックに「期待外れ」

「私を幸せにしてくれた男はジョージ」だと言います

 

頭に来たニックがハニーを連れて帰ると

花束を持ったジョージが帰宅し、息子の死のことを告げると

マーサは「息子を殺す必要があるの?」と責めます

バージニアウルフなんか怖くない」とジョージ

「怖いわ」とマーサ

ジョージが彼女の手を握ると朝日がふたりを包むのでした

 

子を成さなかった夫婦の苦しみや彷徨いを

夫婦喧嘩を通じてお互いが本性を現し、理解する

というのがテーマとは思うのですが

さすがにここまで極端だと、ある種のプレイ

一般の人間には理解できない(笑)

 

リズの輝けるキャリアは、ほぼこの作品で終わったといっていいけれど

もし、これがリズのナンバーワンだと思われているとしたら

悲しくなりました



 

【解説】映画.COMより

トニー賞を受賞したエドワード・オールビーの同名舞台劇をエリザベス・テイラー主演で映画化し、1967年・第39回アカデミー賞で主演女優賞など5部門に輝いた会話劇。「ウエスト・サイド物語」などの脚本家アーネスト・レーマンが脚色、原作の舞台演出を手がけたマイク・ニコルズがメガホンをとり、2組の夫婦が繰り広げる愛憎を描く。ニューイングランドの大学構内にある住宅で暮らす中年の歴史学者ジョージと年上の妻マーサ。大学総長の娘であるマーサは結婚当初からジョージを尻に敷いており、結婚23年目を迎えた現在、2人の関係は険悪なものになっていた。夜遅くにパーティから帰ってきた2人は、いつものように皮肉や軽蔑で応酬しあう。そんな彼らのもとに、生物学教師ニックとその妻ハニーという若い夫婦が訪ねてくる。ジョージとマーサの口論は彼らを巻き込んで激しい罵り合いへと発展し、事態は思わぬ方向へと展開していく。

1966年製作/131分/アメリ
原題:Who's Afraid of Virginia Woolf?
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:1967年3月11日