大人は判ってくれない(1959)

原題は「Les Quatre Cents Coups」

直訳は「400回の攻撃」転じて「無分別な行動」や「若気の至り」という意味で

1621年、20歳そこそこだったルイ13世が

フランス西南部のモントーバン市のプロテスタント系住民を弾圧するため

大砲400発を発砲したものの失敗に終わったことに由来

フランソワ・トリュフォーの自伝的要素が込められているという

あまりにも有名な長編デビュー作で

冒頭の「アンドレ・バザンに捧ぐ」のメッセージのバザンとは

戦後のフランスで最も影響力の高かった映画批評家のひとり

少年院を出た10代のトリュフォーを引き取った庇護者で

トリュフォーにとって父親のような存在だったそうです

私がこの映画を初めて見たのは、まだ就職したばかりの頃で

(当時はあたりまえだった)大人の理不尽な行動や、暴力的な発言に

泣くのを我慢しながら仕事したこともしばしば

(今ではびくともしなくなりましたが 笑)

今いる場所から逃げ出そうとする、主人公に共感したものです

 

改めて見てみると(影響を受けた監督のひとりにトリュフォーをあげている)

スピルバーグの「フェイブルマンズ」と共通したものも感じましたね

学習障害、両親の離婚、親からの愛情不足

家庭問題での苦しみから逃れるように映画にのめりこんでいき

やがて世界的に有名な映画作家になった

時代背景こそ古いですが、若い人たちにこそ見てほしい

年齢が若い頃にこそ見るべき映画だと思います

万が一道から逸れてしまっても、終わりじゃない

夢中になれるものを大切にしてほしいと思います

12歳のアントワーヌ(ジャン・ピエール・レオ) は

学校では教師に、家でも母親に叱られてばかり

馬鹿だとか、役に立たないと罵られています

翌朝寝坊したアントワーヌが急いで学校に向かうと

悪友のルネに、ランチ代で遊びに行こうと誘われます

ゲームセンターや遊園地を満喫し、街をうろついていると

母親が見知らぬ男とキスしているのを目撃

ショックだけど、「納得」もしてしまします

アントワーヌと違い、ルネは用意周到な気配りタイプ

アントワーヌに翌日提出するための欠席届の見本を渡します

その夜も母親の帰宅は遅く、欠席届を書くのにも失敗

担任に欠席の理由を追及されたアントワーヌは

思わず「母が死んだ」と答え、担任は痛く同情

国語の授業ではアントワーヌに当てないよう配慮してくれます

そこに(おそらく学校から連絡を受けた)両親が現れ

アントワーヌは皆の目の前で父親に殴られてしまいます

家出を決意したアントワーヌは

ルネ叔父さんの印刷工場片隅に泊まらせてもらいます

次の日学校に行くと、母親が迎えに来て

いつになく優しく風呂に入れたり、寝かしつけてくれます

自分も若いころボーイフレンドと家出したのよ、なんて

アントワーヌに理解まで示すのです

さらに作文のテストでいい点数を取ったら

1000フランあげると言います

アントワーヌは尊敬する作家バルザックの「絶対の探求」を読み

バルザックのためロウソクの火を捧げる

しかしボヤ騒ぎをおこし、陸軍学校に入れると叱る父親

母親は父親をなだめ、3人で映画を見に行くことにします

帰りの車の中では笑いが絶えませんでした

(これが唯一の楽しい思い出なんだろうな)

テストの日、アントワーヌはバルザック

大好きな一説を参考にした作文を書きます

ところが担任は「バルザックの写しだ」「盗作だ」と罵り

校長室に呼ばれたアントワーヌは学校から逃げ出してしまいます

「写していない」とアントワーヌを擁護したルネも停学処分になり

ルネは、(両親は別居中で金持ちのようだ)家に泊まるといいと言い

そこには100万フランもするという馬の剝製があり

アントワーヌはそれだけあったら海に行けると、海への憧れを語ります

煙草を吸い、バックギャモンをし、映画や人形劇を見にいくふたり

さらにお金を稼ぐため、アントワーヌの提案で

彼の父親の会社からタイプライターを盗み出しますが

売りさばくことに失敗

タイプライターを返しにいったところを守衛に捕ってしまい

父親はアントワーヌを警察へ連れて行くと

鑑別所に入れてほしいと頼むのでした

護送車の中でパリの景色を見つめながら

涙を流すアントワーヌ

少年審判所でのカウンセラーの面接で、アントワーヌは

自分は未婚だった母親が妊娠して堕ろそうとした子どもで

そのことに反対した祖母に助けられたこと

里子に出された後母の元へ戻されたが愛されなかったこと

祖母から盗んだお金については、夜中寝ている間に母親に取られ

祖母からのクリスマスプレゼントの本まで没収されたと言います

一方、母親は子どもの面倒を見ていないと質問され

共働きで仕事が忙しく、父親は休日も趣味のオートレースがある

父親が面倒を見ないのは、アントワーヌは自分の連れ子で

本当の父親でないことが明かされます

そして判事の3ヶ月間の感化院送りにすることに応じます

感化院でも要領が悪く

食事前にパンをつまんだと監視員に殴られるアントワーヌ

面会日、ルネが会いに来てくれて

その様子を窓から見たアントワーヌは叫びますが

ルネは追い返されてしまいます

さらに面会にやってきた母親から、父親に手紙を出したことを責められ

(浮気のことを書いたのだろうか)二度と感化院から戻ってくるな

これからは1人で生きていきなさいと言い放つのでした

 

ある日の屋外サッカーの練習中、脱走に成功するアントワーヌ

林を、丘を走り続け、やがてノルマンディーの海辺にたどり着きます

憧れの海、初めての海、打ち寄せる波

でも冷めきったアントワーヌの顔に

もはや少年のあどけなさは残っていませんでした

 

静止画による時間の停止はこの映画が初めてなのかな

切なくも美しいカメラはアンリ・ドカエ

 

続編があることは知りませんでした

いつか見てみたいものです

 

 

【解説】映画.COMより

フランソワ・トリュフォーが1959年に発表した長編デビュー作。12歳の少年を主人公に描いた自伝的要素の強い作品で、第12回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞、トリュフォーは一躍“ヌーベルバーグの旗手”として知られるようになった。パリの下町で暮らす少年アントワーヌは、学校では教師から叱られてばかりで、家庭では両親の口論が絶えず、息苦しい毎日を送っていた。そんなある日、親友ルネと学校をサボった彼は、街中で母親が見知らぬ男性と抱き合っている姿を目撃してしまう。翌日、前日の欠席理由を教師に尋ねられたアントワーヌは、母親が死んだと嘘をつくが……。トリュフォーは本作の後もジャン=ピエール・レオ演じる主人公アントワーヌの成長を20年にわたって撮り続け、シリーズ5作目まで制作された。

1959年製作/99分/PG12/フランス
原題:Les Quatre Cents Coups
配給:KADOKAWA