プレシャス(2009)




こんなにも絶望的で、未来さえない少女を
よくここまでカラっと前向きに描けたと思います

虐待を受け、読み書きもできない、挙句の果てにはHIV
そんなヒロインが「大学に行く」と決断するまでの物語


16歳の黒人で肥満の女の子、プレシャスは2度目の妊娠中
子どもは父親からのレイプによるものでした
母親は生活保護を受け家で寝たきりでテレビを見る生活
プレシャスに毎日のように暴言を浴びせ虐待をしています
最初の子どもはダウン症でおばあちゃんが預り、育てているようです





妊娠のため学校は退学、フリースクールに通うようになったプレシャス
そこは家庭や本人に問題がある子が集まる場所
そこで出会った教師、ミズ・レインはプレシャスに読み書きを教え
励まし、親身になり家にも招いてくれました

そして「子どもはあなたを愛している」というミズ・レインの言葉に
プレシャスははじめて生きる希望を見つけるのです


しかし、父親がHIVで死んだと母親から知らされます
プレシャスも陽性でした



すっぴんメイクのマライア・キャリー

そしてクライマックスである、ソーシャルワーカー
母親が虐待の真実を打ち明けるシーン
夫の愛を奪ったプレシャスが憎かったと彼女はいいます
なんとプレシャスは3歳から父親に犯されていたのです

幼児虐待には、本人しか知らない秘密があるのだと胸が痛くなります
そんな家庭から、子どもを救うことの難しさも知ります

母親役のモニークの怪演は、「女」の恨みと執念がにじみ出ていて
見ていて本当に怖ろしくなりました
豚足を丸ごと煮込んだ料理も気味がわるい
それを無理やり作らせて食べさせる暴君ぶり
オスカー受賞も納得の演技です





母親のそばにいたら、自分の子もまた虐待されてしまう
負の連鎖を止め、絶対的逆境から抜け出すために
母親と決別することを決心をするプレシャス

これからは学校へ通い、自立し
子どもたちとともに生きるのです
女性は強いのです、そして再生する力を信じたい


このような虐待が現実に多くあるということには
本当に胸を痛めてしまします

特に女性への虐待、レイプ被害を受ける弱者側の視点でつくられ
その人たちを救いたいという思いが込められた作品だと思います



【解説】allcinemaより
実際にニューヨークのハーレムでソーシャルワーカーや教師をした経験を持つ女性詩人のサファイアが、そこで出会った黒人の貧困家庭に暮らす子どもたちの実態を背景に書き上げた小説を、これがデビュー2作目のリー・ダニエルズ監督が映画化した衝撃のドラマ。1987年のハーレムを舞台に、読み書きがほとんど出来ない16歳の肥満少女、プレシャスが、両親による想像を絶する虐待に耐えながら生きる過酷な日常と、一人の女性教師との出会いがもたらす一条の希望を描き出す。主演は新人ながら本作での演技が高い評価を受けたガボレイ・シディベ。共演に、こちらもその演技が絶賛され助演女優賞を総ナメにしたモニーク。
 1987年のニューヨーク、ハーレム。16歳のプレシャスは、極度の肥満体型のうえ読み書きも出来ず孤独に堪え忍ぶ日々。“貴い”という名前とは裏腹の過酷な毎日だった。この年齢にして2度目の妊娠。どちらも彼女の父親によるレイプが原因。失業中の母親は、そんなプレシャスを容赦なく虐待し続ける。妊娠が理由で学校を停学になった彼女は、校長の勧めでフリースクールに通うことに。彼女はそこで若い女性教師レインと運命的な出会いを果たす。彼女の親身な指導のおかげで読み書きを覚え、次第に希望の光を見出し始めるプレシャスだった。