しなの川(1973)



あらすじを見ると、良家に生まれながら
奔放で、情熱的、だけど冷めやすく
男を破滅させる娘の悲哀と成長を描きつつ

この後の戦争へ向かうようなプロローグも感じて文芸的


しかし90分という尺でドラマを描ききれなかったのか

それとも由美かおるさんの全裸がウリだったのか

(当時の由美さん、きゃりーぱみゅぱみゅに似ている!)

中盤までは正直惜しいな、という感じ




雪絵(由美かおる)は十日町の織元の娘

奉公の若い職人竜吉と良い仲になったのが原因で

父親によって寄宿学校に入れられますが


インテリ共産主義に染まった国語教師と恋に落ち東京へ駆け落ち

しかし東京ではアカ狩りにあい、生活は破綻

肉体関係を持ったとたんに、男への気持ちは醒め

田舎に帰り、竜吉とヨリを戻します




好きだと思っていた男と、寝てみたらガッカリ

あるある


今度は竜吉と心中するものの、命は助かり

そんななか家は破産寸前、金持ちとの縁談の話がすすみます


雪絵は生き別れた母親に会いに佐渡島

母親は男をとっかえひっかえするトンデモナイ女でしたが

ここから終盤にかけてはなかなかいい出来で

こういう蔑まれた人間を描くのが

野村芳太郎監督の得意技のような気がします




あっけらかんと自分の罪を認め、雪絵の父親の罪を認め

こんな人間だから、こんな生き方しかできないから

しょうがないのだと言う


雪絵はそんな母親が好きになり、父親も許す

そして家のために嫁入りを決意するのです


嫁入りのシーンもよかったですね

雪絵とすれ違いざまに、満州へとひとり出稼ぎに行く竜吉

美しい終わりかたでした




が、原作のあらすじを読んだら

ラース・フォン・トリアーの上をいくような変態で

阿部定の上をいくような波瀾万丈で


映画のほうは、原作連載中にされた映画化だったので

物語の途中までしか描かれていないそうなのです


私的には由美さんの「おしりおしり」より(笑)

原作のほうに興味を持ってしまいました




【解説】より

2月から19742月までヤングコミックに連載された上村一夫の漫画作品(原作岡崎英生)である。また、1973年に野村芳太郎監督によって映画化された日本映画である。

昭和3年、17歳の朝田竜吉は、十日町の高野家に奉公となる。高等女学校3年生の娘の高野雪絵と知り合う。雪絵は、駆け落ちした母親のことを気にしていた。その後、雪絵は長岡の高女に転校させられ、竜吉とは離れ離れになる。昭和5年、高女の国語教師で左翼の沖島雄介と恋仲になり、駆け落ちすることとなる。しかし、処女を与えた後、疎遠となる。十日町にかえり、雪絵と竜吉は再会する。そして、信濃川に落ちて心中するが、どちらも命は助かる。母が佐渡にいると聞いた雪絵は、母を訪ねまわり、ついに母に再会する。そして父親が同性愛者であること、雪絵の父は父親ではないこと、さらに女としての生き方について母から話を聞く。雪絵は自分の中に流れている母の血を感じて母と和解し、家に戻ってから父親をも許し、父の進める縁談を受けることにする。嫁入りの日、雪絵の姿を見つめる竜吉は満州へと旅立つ。