ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018)

「時計を贈ってはダメ 永遠という意味だから」
「花火を贈ってはダメ 儚いという意味だから」

 

原題は地球最后的夜晩(地球最後の夜)

英題は「Long Day's Journey Into Night(長い1日の夜への旅)

監督のビー・ガンは1989貴州省凯里(かいり)

苗族ミャオ族自治生まれ

 

なんと映画の存在を知ったのが高校生の時(笑)

山西メディアアカデミー(山西省のメディア教育大学)に

入学するきっかけになったそうです

本作は28歳のとき撮影した長編2作目

若いですね、才能あると思います

(早い成功に押しつぶされて短命になる場合もあるけど)

 

作風はデビッド・リンチウォンカーウァイ風にした感じ

(照明はウォン・カーウァイ組のウォン・チーミン)

簡単に言えば、意味不明だけど

エロくて気障で、ハイセンス(笑)

父の死をきっかけに故郷の凱里へ戻ったルオは

父の遺した、母の名のついたレストランの掛け時計の中から

かって愛した女の写真と、その写真を送った

「タイ・チャオメイ」の連絡先を見つけます

 

ルオは12年前に彼の落ち度でヤクザのヅオに殺されてしまった

幼馴染で親友の白猫のことを思い出しています

そしてヅオの居場所を探すため、ワン・チーウェンという女優の名前を名乗る

ヅオの愛人に会いに行きます

彼女の化粧は母に似ていました

やがてふたりは愛し合うようになります

緑のワンピース

赤い爪

魔法の言葉

長いキス

ザボン

彼女は妊娠したという

心配しないで、もう堕ろしたわ

ヅオが戻って来るから

彼に知れたら貴方が殺されてしまう

 

ふたりの関係はヅオにばれ

ルオはヅオに捕まり吊るされてしまいますが

ワンに助けられ(そそのかされ)映画館でヅオを背後から射殺します

消えてしまった彼女

緑の本だけ残して

タイ・チャオメイという女刑務所に服役していました

ワン・チーウェンの本名はチェン・フイシェンといい

若い頃は仲間と悪さばかりしていました

回る家の物語が書かれた緑の本は彼女が強盗に入った家から盗んだもので

「最愛の人にあげる」と言っていた

そしてチェン・フイシェンが旁海(パンハイ)という村に

いることを教えてくれます

チェン・フイシェンというのも有名な女優の名前(笑)

ルオは知り合いに頼みチェン・フイシェンを探してもらうと

それらしき女が旁海でホテルの経営者と結婚しているという

ルオはホテルにワンを探しに行きますが彼女は居ず

元夫からダンマイ(架空の村)の店で唄っていると教えられます

その店が開くまで映画館で時間を潰そうとするルオ

 

ここでやっとタイトルバック(笑)

劇場版はここから3D映像だそうです

しかも60分ワンカットの長回し(笑)

ここからは、どこまでが現実なのか

過去の記憶なのか、幻か、わからなくなります(笑)

「運命の女性を捜しに夢の中へ」

未練がましい男のファンタジー

 

12歳の白猫はワンが堕胎したこどもと重ねているんでしょうね

(父親のコートのサイズがルオにぴったり)

 

卓球少年(少年時代の白猫)

ロープウエィ

ビリヤード場

ワンに似たカイチンという女

ラケットの回転で空中浮遊

男と駆け落ちしようとする母親

(母親はなぜか白猫の母親と同じ顔)

母親からもらった時計をカイチンに送る

お返しに花火をもらう

カイチンはルオを燃えてしまった部屋に案内します

そこはワンが緑の本を盗んだ部屋で

母が駆け落ちした男と不倫を重ねた部屋でした

 

魔法の言葉

カイチンにキス

回る部屋

消えない線香花火

結局は夢オチかい!なんですけど(笑)

 

ヒロインの緑の衣装や真っ赤な口紅など

ヒッチコックの「めまい」のキム・ノヴァクを意識したことを知ると

「なるほど」ですよね(笑)

ルオは母親と化粧の似ている女を愛し、彼女そっくりの女を好きになる

「めまい」ジェームズ・スチュワート演じる主人公が

キム・ノヴァクにひと目で魅了されますが彼女が死に

失意の中、偶然見かけた彼女そっくりの女性に夢中になるというもの

でも女が戻ってくることはない

本当に自分のことを愛してくれたかどうかもわからない

ただ利用されただけ

だけど夢の中なら愛し合える

魔法の言葉さえ唱えれば

こんな男いやだ

それはともかく(笑)

 

映像にも脚本にも抜群のセンスを持っているので

ビー・ガンの更なる活躍を期待したいと思います

新世代の注目の監督のひとりに間違いありません





【解説】映画.COMより

初監督作「凱里ブルース」で注目を集めた中国の新世代監督ビー・ガンの第2作。自分の過去をめぐって迷宮のような世界をさまようことになる男の旅路を描いた。途中に3Dのワンシークエンスショットが入るという演出があり、物語の中盤で主人公が映画館に入り、現実と記憶と夢が交錯する世界に入り込むと同時に、観客も3Dメガネを装着し、その世界を追体験することができる。父の死をきっかけに、何年も距離を置いていた故郷の凱里へ戻ったルオ・ホンウは、そこで幼なじみである白猫の死を思い起こす。そして同時に、ルオの心をずっと捉えて離れることのなった、ある女性のイメージが付きまとう。香港の有名女優と同じワン・チーウェンと名乗った彼女の面影を追い、ルオは現実と記憶と夢が交わるミステリアスな旅に出る。2018年・第71カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品。日本では、同年の第19東京フィルメックスで学生審査員賞を受賞。