幸福の罪(2011)



原題であるチェコ語nevinnostは「無罪」
無邪気という意味もあるそうです


女性の一途で純粋な愛情、と言えば聞こえがいいですが
いわゆる「メンヘラ」
(”心に問題を抱えている人”という意味のインターネットスラング)もの
メンヘラタイプの女性は、恋人などの特定の人物に過度に依存し
心身共に束縛したがり、束縛を逃れる行動の報復として
自傷を含む過激な破壊活動に出る・・・という傾向があるそうです




リハビリ医トマシュに、患者である14歳少女オリンカへの
性的暴行の嫌疑がかけられ逮捕されます

捜査に当たることになったのは
トマシュの妻ミラーダの元夫である刑事ラダでした
ラダは15年前にミラーダに浮気され
ミラーダがトマシュの子を妊娠したために離婚したのです



オリンカは早熟な知性を蓄えた少女で
トマシュに対し恋愛感情を抱き
ふたりの(嘘の)関係をノートに綴り、それを母親が見つけたのです


ミラーダはトマシュが連行されたことに対して、前の亭主ラダに逆恨みし
妹のリダと押しかけ、罵詈雑言を浴びせかけます
その暴言と言ったら夫の逮捕と全く関係ない酷いもので
ただじっと耐えているラダの姿がはがゆい



そりゃあ、女をチヤホヤチヤホヤするトマシュのほうがモテるでしょう
オリンカとも実際には姦通はなかったのだろうけれど
そういう目で少女を見ていたことには間違いないのです
オリンカがトマシュが自分に気があると思ってもしょうがない


ラダは真面目だけれど寡黙で面白みのない男
刑事という職業柄、仕事も人に話せるようなものではない
それでもトマシュとミラーダのためにどうにかしたいと捜査を進めます
ラダとトマシュとミラーダは幼馴染みでもあったようです



無事に釈放されたトマシュでしたが、今度はリダの様子がおかしい
トマシュはミラーダの妹リダとも、結婚前からずっと付き合っていたのです
しかもミラーダとは妊娠して結婚、自分は中絶したのだと今さらブチ切れる
オリンカより若い時から、あなたしか知らないのに、と


怒ったトマシュは密会場所のコテージから帰ってしまい
残されたリダは入水自殺してしまいます
死因は溺死



しかし死体の爪にはトマシュの皮膚
体内には精液が残されていました
これが「メンヘラ」女の復讐


ラダが同時に捜査していた少女監禁殺害事件の容疑者が
トマシュと卓球するためだけの人?には笑えますが(笑)



そのあとの「愛しいあなた、12年は短い、待ってるわ」と
手紙を書くオリンカ(やがてリダの顔になる)は怖い
でもトマシュのような節操のない男には
このように呪縛する女性がいちばん合っているのかも知れません




【解説】allcinemaより
 「この素晴らしき世界」でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた、チェコを代表する若き巨匠ヤン・フジェベイク監督による心理サスペンス。ある“幸せな家庭”を舞台に、人間の抱える「罪と罰」を問いかける。主演は「ダーク・ブルー」のオンドジェイ・ヴェトヒーと「ルナシー」のアニャ・ガイスレロヴァ
 リハビリ医として評価の高いトマシュに、患者である14歳の少女オリンカへの性的暴行疑惑が持ち上がる。捜査にあたることになった刑事ラダは、トマシュの妻ミラダの前夫であり、ミラダはラダとの結婚生活中にトマシュと不倫し、トマシュの子供を身ごもったことからラダと離婚したのだった。果たして本当にトマシュはオリンカと姦通したのか?