父、帰る(2003)

 
 
 
こういう説明不足で不親切な映画は好きです
自分の描いた想像で見れるから
 
最初の少年たちが高い塔から飛び降りるエピソードから
兄弟の弟のほうがいかに強情で繊細なのかが読み取れます
 
兄弟は長い間、母子家庭で育ちました
ところがある日突然、(12年ぶりに)父親と名乗る男が帰ってきます
そして、母親はこの男と息子たちを旅させるのです
 
アンドレイ(兄)にはまだ父親の記憶があるのでしょうか
長男らしい素直な性格で父にも従順に従います
 
だけれどイワン(弟)は反抗期かもしれません
この父親と名乗る謎の男がうさん臭くてしょうがない
刑務所帰りなのか?
マフィアなのか?
信用出来ず、反発してしまいます
 
そんなイワンに対してさらなる威厳をふりかざす父親
肝心なことは何も伝えず
ただ権力と恐怖で従わせようとする
 
この作品は、ソビエトからロシアへの変革を伝えているそうです
それを、親子の葛藤に例えたのは非常にうまいし、わかりやすい
 
親(権力)は国(政府)
兄弟は国民なのでしょう
素晴らしい傑作だと思います
 
父親が残した言葉は「誤解している・・」でした
息子が放ったのは「お父さん!」という叫び
 
どんなにダメな親でも
どんなに反発する子でも
本当は愛し合っていたのです
 
でも、親は先に死に
子どもは成長していく
 
ソ連崩壊(私の勝手な解釈)と
これから成長していこうとするロシア(当時)を
これほどまでに繊細で瑞々しく描くとは!
 
親の権力と、政治的な圧力を
とてもうまく例えた作品でしょう
 
お気に入りにします
 

 
【解説】allcinemaより
2003年のヴェネチア国際映画祭で絶賛され最高賞の金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞する快挙を果たしたアンドレイ・ズビャギンツェフ監督による静謐で衝撃的な人間ドラマ。12年ぶりに突然帰郷してきた父親を前に、事情も呑み込めず戸惑うばかりの兄弟の姿を、謎を秘めた緊張感溢れる語り口で綴り、親子の間の絆や葛藤を鮮やかに描き出す。なお、本作撮影終了後、ロケ地だった湖で兄アンドレイ役のウラジーミル・ガーリンが不慮の事故で溺死する不幸な出来事があった。
 ロシアの片田舎。2人の兄弟、アンドレイとイワンは母とつつましくも幸せに暮らしていた。父親は12年前に家を出て行ったきり音信不通。兄弟は写真でしか父の顔を知らなかった。そんなある夏の日、父が突然家に帰ってきた。寡黙な父はこれまでのことを何も語ろうとはせず、母も事情を説明しようとはしない。兄弟の戸惑いをよそに、翌朝父は彼らを小旅行に連れ出す。道中、父は子どもたちに対し高圧的に振る舞う。そんな理不尽な接し方にも、父を慕い続ける兄に対し、弟のほうは徐々に反抗心を募らせていくのだった…。