スケアクロウ(1973)

 
 
いい映画ですね
 
何度見ても、何時見ても
名作はやはり名作
その出来の良さに唸ってしまいます
 
真夜中のカーボーイ」と並ぶ傑作、男の友情
どちらも有名な名ラストシーンで、好みもそれぞれでしょうが
私は靴底から出す10ドル札のほうが好き
この余韻はたまらない
 
フォトグラフィーの美しさでも
こちらのほうが勝っているでしょう
鑑賞するのは三度目ですが、本当に見てよかった
 
ライオン(パチーノ)は素直で、人が良くて、優しい男
でもその分臆病なのだと思います
妊娠させた女性から逃げてしまい
何年もの間、船乗りの旅をしていました
 
月日が経ち、ライオンも自分が認める少しは大人になり
プレゼントの電気スタンドを抱えて
5歳になっただろう子どもに逢いに行こうとする途中です
 
気難しいマックス(ハックマン)は出所したばかり
何の罪かはわかりませんが(たぶん喧嘩ですね)
刑期の間はコツコツと貯金し
洗車場を開業するという目的を持っています
 
同じ場所で、ヒッチハイクで、出逢ったふたり
なりゆきで同じ旅路、目的地に向かうことになります
 
すべてが順調にいくのかと思えました
でもマックスの喧嘩っ早さのせいで
監獄に入ってしまうふたり
そこで歯車が狂ってしまいます
 
可愛いライオンは(たぶん)レイプされてしまったのでしょう
信じていた相手からの暴力で壊れてしまいます
優しさとか思いやりが仇となった瞬間
 
そのうえに、残されたたったひとつの希望も
息子は死んだと、天国にも行けないと
再婚した元妻からの残酷な言葉
 
追い打ちをかけられたライオン
何もなくなってしまった
ついに狂ってしまいます
 
マックスはそんなライオンに
強い責任を感じたのだと思います
身勝手さを後悔する
陽気なライオンを
こんなふうにしてしまったのは自分のせい
 
ふたりは夢の洗車場を経営することができるでしょうか
私はいつかできると信じます
そう願います
 
もちろん、お気に入りで
 

 
【解説】allcinemaより
ホモ・セクシュアルではない、男同士の深い友情を描いたアメリカン・ニューシネマの傑作。出所したばかりのマックスは、南カリフォルニアの道路で、同じくヒッチハイクをしていたライオンと知り合う。ライオンは5年ぶりに帰ってきた船員で、自分の居ない間に生まれた子供に会うため、妻のもとに向かう途中だという。意気投合した二人は、共に行動することにしたが……。次第に深まっていく友情を、ロード・ムービー風に描く。ラストの、ライオンに対するマックスの友情が素晴らしい余韻を残す。パチーノ、ハックマンの好演は言うまでもない。