ミス・シェパードをお手本に(2015)

原題は「THE LADY IN THE VAN (ヴァンの中(車中暮らし)の女性)

邦題のように決して「お手本」にはなりません(笑)

老女の路上生活もの

むしろお手本にすべきはレディ・シェパードが

ヴァンを停めて生活する近隣の人々

本音は早くどこかに行って欲しい

消えてほしいと願っているのですが(笑)

建て前では挨拶をしたり、食べ物を運んだり

親切にしています

今なら見て見ぬふりをするのでしょうが

50年以上前の1970年のロンドンは

他国からの難民や移民が今ほど多くなかったのでしょう

同じ民族、同じ宗教

身寄りも家もない老女を、邪険にするわけにいかなかったのです

冒頭、老女が運転する(明らかに人を撥ねた)ヴァンが

パトカーに追いかけられています

ヴァンはパトカーをかわし見事に逃げたつもりでいましたが・・

それから何年か後、ロンドンのカムデンタウンに引っ越してきた

劇作家アラン(アレックス・ジェニングス )は原稿を書いています

主人公は勝手に自宅のトイレを借りに来る

自称清潔好きのホームレス、レディ・シェパード(マギー・スミス

我儘で毒舌でプライドが高く、カムデンタウンでは有名人でした

しかしついにレディの車に、行政から移動命令が出ます

しかもある晩怪しい男(実はレディを追いかけた警察官)が

彼女を脅し金を巻き上げている

そのうえふざけた若者たちがレディの車に悪戯しようとします

さすがに放っておけなくなったアランは

レディのヴァンを自宅前のスペースに駐車させるのですが

なんと(認知になった母の姿とかぶることもあり)それから15

レディはそこに住み続けたのでした

ただね、実話が元とはいえお堅すぎる

しかも半端に暗い(笑)

どうせなら「マダムと泥棒」(1955)みたいに

ババアに振り回され騙されるような

コメディ的に弾けたほうが絶対面白くなったはず

フランス語、ピアノ、交通事故(過失致死傷罪

一途な信仰心、懺悔(教会では消臭スプレーを常に用意 笑)

ラストに伏線回収して真実が明かされる・・

(そしてちょっとしんみり)くらいがいい

アランがパートナー(ゲイ)と暮らすようになったくだりも

レディから励まされたエピソードのようなものがあれば

もっとしっくりきたでしょう

でも人に親切にして悪いことはありませんね

事実アランも劇作家として成功し

こうやって映画の主人公にもなれたのですから(笑)

 

 

 

【解説】allcinema より

英国の劇作家アラン・ベネットの驚きの実体験を、アラン・ベネット自らの脚本で映画化したヒューマン・コメディ。オンボロワゴン車で寝泊まりする偏屈老婦人と、彼女のために自宅の敷地を提供した劇作家の15年にわたる奇妙で心温まる交流をユーモラスに綴る。主演はともに舞台版でも同じ役を演じたマギー・スミスとアレックス・ジェニングス。共演にジム・ブロードベント。監督はアラン・ベネットとは数々の舞台でタッグを組む盟友で、映画でも「英国万歳!」「ヒストリーボーイズ」に続いてこれが3度目のコラボとなるニコラス・ハイトナー
 ロンドンのカムデン、グロスター・クレセント通り23番地。文化人が多く暮らすリベラルなこの地区に、壊れかけた一台のバンが停まっている。所有者はみすぼらしい身なりの老婦人、ミス・シェパード。ホームレスの彼女は、このバンで寝泊まりし、自由気ままに暮らしていた。プライドが高く、心配する近所の住人の親切にも、悪態で返す偏屈ぶり。ある日、ついに退去命令を受けて途方に暮れるミス・シェパード。劇作家のベネットは、そんな彼女に自宅の敷地を提供する。一時しのぎになればと軽い気持ちで提案したベネットだったが、まさかそのまま15年間も居座り続けるとは思いもしなかった。頑固で変わり者の彼女に振り回されつつも、決して互いに深入りすることのなく、一定の距離を保って奇妙な共同生活を送るベネット。それでも作家として、ミス・シェパードの謎めいた人生に興味を抱かずにはいられないベネットだったが…。