原題は「COAL MINER'S DAUGHTER」 (炭鉱夫の娘)
1976年にカントリー歌手ロレッタ・リン(1932~)が発表した
ベストセラーの自伝小説が原作
第53回アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネート
歌の吹替なしでロレッタの13~35歳までを演じた
シシー・スペイセクがオスカーを獲得しました
そのほかにもロレッタの父親役で「ザ・バンド」のリヴォン・ヘルムや
後見人の役としてロレッタが現実に世話になったという
カントリー・シンガーのアーネット・タブが本人役として出演
心温まる友情出演にカントリーが好きな人が見たら
たまらないものがあるのではないでしょうか
貧しい炭鉱夫の娘ロレッタ(シシー・スペイセク)は
軍隊から戻ってきたドゥー(トミー・リー・ジョーンズ)と
恋に落ちてしまい親の反対を押し切り結婚
しかしまだ13歳、料理は下手だし家事もろくに出来ない
セックスは嫌がる、ドゥーとは喧嘩してばかりで実家に戻りますが
その時すでに妊娠、炭鉱夫を嫌ったドゥーとワシントンに移り住み
(映画では)18歳の時には4児の母になっていました
(現実でも最終的に6人の母親、なんと29歳で孫が誕生 笑)
そんなロレッタの趣味はラジオを聞いて流行歌を歌うこと
やがて自分でも曲を作って子どもたちに歌い聞かせるようになります
ロレッタに才能を見出したドゥーは
結婚記念日にロレッタがねだった結婚指輪の代わりに
中古のギターをプレゼント
そして自主制作したレコードをラジオ局に送り
夫婦で営業活動をするようになります
はじめてのレコーディングで緊張したロレッタが
子どもたちの見守る中で歌うシーンがほのぼの
ラジオで下ネタと気付かず発言して大騒ぎになったり
でもそれがウケたのか(笑)ロレッタの曲はチャート入り
交通事故で入院中の大スター、パッツィー・クライン(1932~1963)を
見舞ったのをきっかけに、彼女と親交を深めツアーに同行するようになり
ロレッタもまた大スターの道を歩みはじめるのです
そこでいじけてしまったのが、夫のドゥー
ロレッタと離れ田舎で子どもたちと暮らす決意をするのですが
実際の彼はかなり女遊びをしたようで(笑)
アメリカ南部では当時は女性が13歳で結婚するのも珍しくなく
その苦労がロレッタの曲に真実味を帯びせ
さらに人々の共感を得たのかもしれません
ロレッタはあっという間にカントリーのトップ歌手まで上り詰め
その後何度も訪れる挫折にも、夫婦の危機にも負けず
ヒット曲を生み続けていくのです
”炭鉱夫の娘”には”強い女”という意味もあるのだろうか(笑)
華奢なシシー・スペイセクが困難を乗り越えていく姿に勇気をもらえ
若きトミー・リー・ジョーンズの髪型に、なぜか笑える(笑)
カントリー音楽映画の佳作
【解説】KINENOTEより
現代アメリカのポップス界で、シンガー・ソングライターとして人気のあるロレッタ・リンの生いたちから、結婚、出産を経て歌手として成功するまでの波乱の半生を描く。製作総指揮はボブ・ラーソン、製作はバーナード・シュワルツ、監督は「アガサ 愛の失踪事件」のマイケル・アプテッド、ロレッタ・リンとジョージ・ベクシーによるリンの自伝を基にトム・リックマンが脚色。撮影はラルフ・ボード、音楽はオーエン・ブラッドレー、編集はアーサー・シュミット、製作デザインはジョン・W・コルソが各々担当。出演はシシー・スペイセク、トミー・リー・ジョーンズ、ビバリー・ダンジェロ、レボン・ヘルム、フィリス・ボーエンズなど。
ケンタッキー、テネシー州にまたがるアパラチア山脈沿いの山間地の貧しい炭抗町、ブッチャー・ホラー。炭抗夫テッド(レボン・ヘルム)を父にもつロレッタ(シシー・スペイセク)は母クララ(フィリス・ボーエンズ)も含めて10人という大家族の中で成長し、今年13歳になっていた。厳しい生活を送りながら不満ひとつ感じていない彼女は、父親の愛情を一身に受けていた。が、ある日、ひとつの変化が生じた。炭抗夫の息子で軍隊にとられていたドゥーリトル・リン(トミー・リー・ジョーンズ)が町に戻って来たのだ。ロレッタの憧れの視線を感じたドゥーは、毎日のように彼女を誘い出し、2人の仲は急速に発展する。そしてささやかな結婚式を挙げる2人。しかし13歳の妻は性には無知で、新婚早々トラブルが生じる。しかも炭抗夫の生活を嫌ったドゥーはひとり新しい生活を切り開くために旅立ってしまった。その時、ロレッタはすでに妊娠していた。やがてドゥーがロレッタに旅費を送ってよこし、ロレッタもこの炭抗町を去っていった。6年の歳月が流れて、ワシントン州に落ちついた彼女は、次々に4人の子供を生んだ。ドゥーの仕事もまずまずで、平凡だが幸せな生活を送るロレッタに、ドゥーがギターをプレゼントした。以前から彼女の歌を聞くのが好きだったのだ。そして町の酒場にロレッタを連れてゆき、デビューさせるドゥー。それが大成功し、ドウーは彼女の歌をレコードに吹き込みそれをラジオ局へ送った。そんな彼女の元に父の死という悲しい知らせがとどく。葬式を済ませ再び売り込みに努める2人。やがてアイム・ア・ホンキー・トンク・ガールをヒットさせ、C&Wの女王、パッツィ・クライン(ビバリー・ダンジェロ)にめぐりあったロレッタは、彼女から多くのことを学ぶが、派手になってゆく彼女に、ドゥーは批判的だった。烈しい喧嘩の後、しかし、ドゥーはロレッタに結婚以来彼女の夢だった指輪を贈った。パッツィが飛行機事故で29歳の若さで死んだ。悲しみにくれるロレッタは、その時生まれた双児の女の子にパッツィとペギィと命名した。今やC&Wの女王となった彼女は、家族と離れて忙しい日日を送っていたが、町から町への巡業生活は彼女を錯乱状態においやり、結局彼女は、ドゥーと家族が待つ新しい家に帰ってゆく。牧場の静かな生活で、ロレッタはやっと心の平和を取り戻すのだった。