わが谷は緑なりき (1941)

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原題は「HOW GREEN WAS MY VALLEY」(私の谷は緑だった)

世界中のホラー映画マニアから敬愛されている
ロディ・マクドウォールのデビュー作が、まさかこれだったとは(笑)

オープニングから名作の香りがプンプン(笑)
滅びゆく炭鉱の村から去ろうとしている初老の男が
炭鉱で働くきっかけとなった幼い頃を思い出していきます
らんぷちゃんは「砂漠の映画にハズレなし」というけど
「炭鉱の映画」もハズレなしかも(笑)

 

【ここからネタバレあらすじ】

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丘の上に父親と立つ一家の末っ子ヒュ−(ロディ・マクドウォール)を
姉のアンハード(モーリン・オハラ)が「 ヒューーイ」と呼ぶと
「アンハラ−ド」と爽やかな声で返します
このワン・シーンで、神話化決定(まだ物語始まってないよ 笑)
カメラは師匠殿のアーサー・C・ミラー

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モーガン家では父親(ドナルド・クリスプ)と6人の息子のうち
ヒュー以外の長男から5男までが炭鉱夫として働いていました
仕事が終われば姉の湧かしたお湯で身体を洗い、食卓を囲む
給料日には玄関で全員が賃金を母親に渡します
汗と埃にまみれる労働がなにより神聖なもので
父親の家庭内での権力は絶対的なものでした

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長男が嫁をもらうことになり、結婚式の日
アンハードは新任の牧師に心を奪われてしまいます
ヒューは長男の嫁に一目惚れ(笑)

牧師はヒューが利発な子であることに気づき
学校に行かせることを両親に薦めますが
田舎者のヒューはクラスメイトから虐められ
教師までがクソで労働者階級蔑視の差別主義者

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そこで父親の炭鉱仲間の元ボクサーがヒューに殴り合いを教え
炭鉱のみんなも応援して、ヒューは強くなりいじめっ子を撃退
そしたら今度はクソ教師が棒を持ってヒューに体罰を与えます
頭にきた元ボクサーは学校に行ってクソ教師を殴ります

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褒められた行動とは言えないけど、これにはスッキリ(笑)
しかし炭鉱が潤い、働いた分の給料がもらえていたのはこの頃まで
やがて資本の論理によって賃下げされ
炭鉱夫たちは労働組合を作って対抗します

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しかし昔気質の父親は、ストに反対し4人の息子と対立し仕事に出ます
息子たちは家を出て行き、仲間からは裏切り者扱い
頭にきた母親は組合の集会に行き「亭主に文句があるなら私にかかって来い」と
演説するくだりは気分がいい

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だけどその帰り道、凍える川に落ちてしまい
助けようとしたヒューは重度の凍傷で寝たきりになってしまいます
ヒューを支えたのは牧師の献身的な介護でした
奇跡的にヒューは歩けるようになり
牧師とアンハードは愛し合うようになりますが

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牧師は戒律のせいか、アンハードの幸せを願ってか
アンハードに結婚を申し込んできた炭鉱主の息子と一緒になることを勧めます
深く傷ついたアンハードはその男に嫁いでいきました

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やがてストライキは終わりましたが、炭鉱の仕事は激減
炭鉱夫たちは次々村を去っていきました
4人の息子たちも新天地を求め外国に旅立ちました
残った長男は事故死してしまい、ヒューは学校を首席で卒業したものの
進学を諦め炭鉱で働くことにします

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アンハードは結婚生活に破れ(離婚はしていない)
夫の屋敷で暮らしていましたが、意地の悪い使用人によって
アンハードが牧師と不倫しているという噂が村中に流れてしまいます

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教会で集会が行われることになるわけですが、副司祭がまたクソで(笑)
僻みや妬みゆえの行動だろうけれど、牧師の後釜を狙い村人たちを唆すわけです
副司祭じゃなかったらアンタもボコボコだから
牧師は村人たちに卑劣さを非難し、村を去る決意をします

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ヒューにとって牧師は命の恩人、最後の別れをしようとした時
炭鉱から落盤事故を知らせるサイレンが鳴り響き
父親が生き埋めになったといいます

救出を志願する元ボクサーが、またまた好い所をもっていくぜ
炭鉱内が実にリアルで、まるで本物の落盤事故のよう
これもアーサー・C・ミラーマジック(笑)

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父親を見つけたものの、「お前は立派だ」と ヒューに 言い残して息絶えてしまう
そこで回想は終わります

【ネタバレあらすじ終了】

 

そこからヒューが故郷に留まったのはなぜなのか
牧師とアンハードがその後どうなったのか
ジョン・フォードは一切触れていません

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だけど父親の独裁主義であっても、家族が離別しても
不況によって人々の心が荒んだとしても
過去は美しい思い出ばかりと語るヒュー

それはきっと愛する女性がそばにいたからだと思います

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大人の見るべき労働者賛歌映画でジョン・フォード中期の傑作
ヴィットリオ・デ・シーカの「自転車泥棒」(1948)にも似ているけど
こちらはやはりアメリカ映画らしく希望の残るラストでした

 

 

【解説】allcinemaより 
幼いR・マクドウォールが父を呼ぶ、冒頭の爽やかなヨーデルのような掛け声が耳について離れない。J・フォードの美しい人間讃歌である。19世紀のウェールズの炭鉱町。ヒューはモーガン家の末っ子で、家の男達はみな炭鉱で働く。学校ではいじめられっ子でも、皆の励ましで悪童に立ち向かい認められる芯のしっかりした少年だ。石炭産業は不況で、賃金カットに抵抗し、組合結成の動きが高まり、長兄イヴォーを始め、一家の若者たちはその先鋒に立つが、父(D・クリスプ)はこれに反対。息子たちは家を出、姉のアンハード(M・オハラ)とヒューだけが残される。新任の牧師グリフィド(W・ピジョン)と姉は秘かに魅かれあっているが、禁欲的な彼を前に、姉は不本意な結婚を承諾、南米へ渡る。川に落ちた母を助けて凍傷になったヒューを親身に励まして以来、グリフィドとは固い絆で結ばれ、彼の奨めでヒューは文学の世界に目覚める。が、長兄が事故死し、ヒューは止むなく学校を中途で辞め、兄に代わって働く。姉が実家に戻った時、グリフィドとの心ない噂が立つが、牧師は卑俗な村人の心を責め、教会を去っていく。ちょうどその日、落盤で父までが犠牲になるのだった……。不幸なことばかりの少年時代だが、成長した彼にはあくまでその月日は麗しく尊いもの--と語るフォード節に泣かされること必定の名作。オスカーには、作品、監督、美術、撮影(A・ミラー)、助演(クリスプ)、装置の6部門で輝いた。当初は西ウェールズでのオールロケが予定されていたが、大戦勃発のため、サン・フェルナンド・ヴァレーに広大なオープン・セットが建てられた。