誰も知らない(2004)

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第57回カンヌ国際映画祭で主人公を演じた柳楽優弥くんが
14歳で史上最年少最優秀主演男優賞を受賞したことが話題になりました

モデルとなったのは1988年に起きた「巣鴨子供置き去り事件」
母親(40歳)には売春や窃盗の逮捕歴があり
愛人(56歳)のマンションに同居し、愛人からの援助で
時折現金数万円を兄妹に仕送りしていたそうです

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事件が起きた時、長男は14歳
出生届を出されなかったため、就学通知が来ることはなく
長女7歳、次女3歳、三女2歳の下の姉妹の面倒を見ていたものの
年が離れているため、話し相手にもならず孤立
やがて不登校の不良少年たちとつるむようになり
アパートがたまり場になってしまったのも自然のなりゆきかも知れません

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1988年4月、三女が泣き止まず、怒った長男と長男の友人らが
押し入れの上から何度も飛び降りるなどして、なぶり殺しにします
遺体はスーツケースに隠し、秩父市内の雑木林に埋めました

7月、アパートの一室が不良の溜まり場になっていると
大家が警察に相談したところ、白骨化した乳児の遺体が発見され
(生後間もなく死亡した次男のもの)
長男は事情徴収を受けることになります

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長女と次女は福祉事務所に預けられ
ニュースで事件を知った母親が出頭したことにより
三女が行方不明であることが判明します

8月、母親が保護責任者遺棄致死の罪で逮捕、起訴され
懲役3年執行猶予4年の判決を受け、長女と次女を引き取ることになります
長男は三女の死にかかわったとされ、傷害致死死体遺棄で送検されますが
生い立ちを考慮され(少年院ではなく)養護施設に送られます
事件の残虐性を考えると、恩赦に近い判決だったと思います

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でも映画のほうは、どちらかというとファンタジックでしたね
幼い妹や弟は無垢で天真爛漫
行きたくても学校に通えない長男、明と
イジメのせいで不登校になってしまった女の子、紗希との淡い恋愛感情

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紗希は生活に困っている明を助けるため、中年の男とカラオケに行き
貰った1万円を明に渡そうとする
でも明はそのことが許せず、その日から明は紗希に会おうとしませんでした

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しかし妹のゆきが椅子から落ちて事故死してしまい
明は紗希に「あの1万円を貸してほしい」と頼みに行きます
ふたりは遺体をトランクに詰め、モノレールに乗り
羽田空港のそばの飛行機が見える草原まで行きます
崇高な儀式のように遺体を土に埋め、明け方アパートに帰る

そしてその日から、公園で水を汲みコンビニの廃棄弁当を貰う
兄妹の中に、紗希の姿もあったのでした

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私は現実主義で心の汚れた変態なので(笑)
もしこれが現実なら、明と紗希にはすぐ子どもができて
すぐお金がなくて喧嘩だの、DVだので別れ
親と同じようなネグレクトになるだろうと想像するわけですが

是枝裕和監督は優しい人間だと思う
どんな問題のある、間違いを犯してしまう人間にも
愛や家族の絆があると信じている人のような気がする
(大抵の男はマザコンでロマンチストだがな)

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近年はこんなニュースばかり
こんな「誰も知らない」家族は、すぐそばにいる

柳楽優弥くんもですが、弟の茂を演じた男の子がいいですね
それよりも何よりも、YOUさんがバラエティで活躍しているタレントだとは
海外メディアは夢にも思わなかったでしょう

(それがまとめ? 笑)

 

 

【解説】allcinemaより
「ワンダフルライフ」「ディスタンス」の是枝裕和監督が、1988年に実際に起きた事件をモチーフに映画化した人間ドラマ。母親に置き去りにされた4人の子供たちが、大人たちに知られることなく、兄妹たちだけで生きていく姿を丁寧な筆致で描く。2004年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、長男役の柳楽優弥が日本人初となる男優賞をカンヌ史上最年少で受賞し大きな話題となる。
 とある2DKのアパートに引っ越してきた母けい子と4人の子供たち。しかし追い出されるのを恐れるけい子は、自分と12歳の長男・明だけの2人暮らしと大家に嘘をついていた。けい子は子供たちにも近所にバレないようにと言い聞かせる。兄妹たちは父親がみな別々で、学校に通ったこともない。けい子がデパートで働き、明が母親代わりとなって家事をし、兄妹の面倒を見ていた。それでも家族5人、それなりに幸せな日々を送っていた。そんなある日、新しい男ができたけい子は、わずかな現金を残して突然家を出ていってしまうのだった…。